重病の主の帰り待って数カ月 心ある人がつないだミニチュア・ダックスフンドの命 退院がかなわない飼い主は「飼育放棄書」に署名し涙した

犬の保護活動を行う一般社団法人SORA小さな命を救う会(以下、SORA)。同団体ではこれまで様々な事情を抱えた多くの保護犬の命を救ってきた実績がありますが、最近特に増えているのが、飼い主の高齢化によって、ワンコがひとりぼっちで残されるケースだと言います。今回紹介するミニチュア・ダックスフンドのコロ君というワンコも、こういったケースのうちの1頭でした。

■数カ月間も飼い主を待ち続けていたコロ君

SORAは、地域包括センターと連携しながら保護活動を行っていますが、ある日のこと、センターより一件の相談が寄せられました。

身寄りのない飼い主が重い病気で入院することとなり、退院のメドが立たない中、1頭のワンコが飼い主の帰りを数カ月間も待ち続けていると言います。幸い、この状況を知った地域包括センターの職員が、数日おきにコロ君のもとへ通い、ご飯やお水をあげたり、散歩へ連れ出したりしてくれており、なんとかコロ君の命を繋ぐことはできていました。

しかし、今後のことを考えると、適切な団体に保護してもらうほうが良いだろうと、SORAに相談を持ちかけたのでした。

■飼い主の入院先に出向きコロ君の保護を説得

SORAのスタッフはすぐにコロ君を保護する意思を固めましたが、ただし、勝手に連れ出すわけにはいきません。コロ君を保護するためには、飼い主に了承を得る必要がありました。そのため、スタッフは地域包括センターの職員や看護師と一緒に入院中の飼い主に直接会いに行くことにしました。

きっと飼い主にとって、コロ君は大切なパートナーだったのでしょう、コロ君を手放すことに惑っている様子で、結果的に話し合いは約1時間に及びました。

スタッフ、職員、看護師は、そんな飼い主の気持ちに寄り添いながら、根気強く説得を試みました。最終的に、飼い主は苦しい気持ちの中、涙を流して「飼育放棄書」に署名をしてくれました。飼い主は、コロ君を心からかわいがっていたのだとスタッフは感じました。このことから、コロ君を保護した後も、定期的にその様子を写真に撮り、飼い主に送る約束もしました。

■現状では「飼育できなくなった際の後見人」制度がない

コロ君はSORAに無事保護されました。保護当初は、後ろ足をひきずるしぐさが見られました。そのため、SORAでは、獣医師に診てもらうなどし、健康面でのケアも徹底し、今後、新しい里親さんへとコロ君をつなげ、新しい幸せな生活になるための第一歩を踏み出しました。

現在日本ではペットショップなどでのワンコの購入時に「飼育できなくなった場合の後見人」を立てる条件や、年齢制限などがありません。そのため、迎え入れたはずのワンコを人間が簡単に飼育放棄してしまったり、今回のような飼い主の事情から、身寄りを失うワンコが発生する原因にもなっています。

他方、保護団体の多くは、飼育環境の確認や年齢制限の必要を徹底しています。これは、なんらかの事情で保護されたワンコを再びかわいそうな目に負わせないための理由もありますが、さらに広い視野で見れば、こういった制限をかけることで、結果的に野犬や保護犬の減少にも繋がると考えられているからです。

SORAのブログではこういったワンコに伴う問題にも触れ、多くの人たちに現状を知ってもらおうと発信しています。ぜひブログもチェックしていただき、身近な問題として捉えていただき、考えていただければと思います。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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