タイガース、ヴィッセル、「アレ」に近いのは?~鉄爺スタジアムへ

 Jリーグ、ヴィッセル神戸の試合の観戦でノエビアスタジアム神戸(神戸市兵庫区)に足を運んだ。5月7日の対横浜FC戦。ヴィッセルが3-0で快勝し、首位を守った試合だった。

 このところ、人生の中で一番頻繁にサッカーの試合をナマで観戦している。昨年6月から役職をお預かりしている神戸市スポーツ協会の仕事の一環で、ホームで行われるヴィッセル、女子のWEリーグ、INAC神戸にはできるだけ足を運ぶようにしている。

 ここからは恥ずかしながらの告白。44年前に志してスポーツメディアの世界に飛び込んだ。デイリースポーツの記者として現場で記事を書いたのは20年足らず。3分の2がプロ野球担当、3分の1を諸々の一般スポーツ担当として過ごした。

 いま思い返してみると、およそサッカーには縁のない記者人生だった。書いた記事はたった3本しかない。1本はJリーグ発足前後、ガンバ大阪を率いることになった釜本監督のいざ出陣もの、鳴り物入りでブラジルから帰って来たカズの紹介。サッカーの試合となるとただ一度、当時全盛を誇った世界最強のACミランが国立競技場に登場した親善試合をスタンドの記者席から観戦して心許なさの中で書いた一本きりということになる。

 そんな門外漢の目にも、今年のヴィッセル神戸の戦いぶりは心強く映る。イニエスタは別格の存在として、大迫勇也、武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳…このあたりまでならスラスラと名前が書ける。スタンドには20005人の観客が詰めかけていた。

 横浜FC戦では開始早々思いがけないシーンに遭遇した。横浜FCでMFとして先発していた小川慶治朗が右サイドをドリブルで上がり、あわやシュートに持ち込もうかというプレーがあった。小川はつい数年前までヴィッセルの中心だった選手。試合前の選手紹介でもヴィッセルのサポーターからひと際大きな拍手が湧いていた。それがこのプレーの後は、ヴィッセルのゴール裏を埋め尽くしたサポーターから見事に息の合った「オガワ、オガワ…」の大コール。あらためて野球とも少し違ったサッカーの文化に触れた気になって感慨深かった。

 たとえば野球でも、最近では新井貴浩(現広島監督)が広島から阪神へ、さらに古巣の広島へとチームを移る度、一転敵地となったスタンドから大きな拍手で迎えられるというシーンは記憶にあるが、さすがに敵側のスタンドが一斉に声を合わせてのコールは聞いたことがない。

 この日、小川は前半途中で負傷退場したが、代わって後半途中には大きな歓声の中イニエスタが姿を現した。6月6日のFCバルセロナとの親善試合を最後に退団するのでは、という記事が前日大きく報道されたタイミングだったこともあって、歓声にはどよめきのニュアンスも混じっていた。

 ヴィッセル神戸にとってこの日の横浜FC戦は今季12戦目。12月3日の最終戦へ向け、シーズンは3分の1を過ぎたところだ。Jリーグの上位争いはヴィッセルを筆頭に4チームほどが1試合の勝ち負けで順位が入れ替わる混戦を展開している。

 一方のタイガースはまだシーズンの5分の1を過ぎたあたりにもかかわらず、「アレ」への手ごたえありとデイリースポーツも盛り上がる。

 タイガースが最後にセ・リーグを制覇したのは2005年のことだから18年ぶり。ヴィッセルにいたってはJリーグ発足から30年、まだ一度も頂点には立てていない。

 まさか両チームそろっての「アレ」なんて…。自分の中の長いサッカーブランクを埋めるべく、夢を見ながら残るシーズン、スタジアムに足を運ぶことにする。

(まいどなニュース特約・沼田 伸彦)

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