熱中症で生死の境さまよったゴールデン・レトリバー 歩行障害が残った愛犬を飼い主は見捨てた
2022年の秋の終わり、元飼い主に見放され、動物愛護センターに殺処分前提で連れ込まれた1頭のゴールデン・レトリバーがいました。ルノアールちゃんという推定7歳のワンコです。穏やかな性格で人慣れもしており、職員にも警戒心を抱かずにこやかに接するワンコですが、しかし重い後遺症のあるワンコでもありました。
■「殺処分」前提でセンターに連れてきた元飼い主
ルノアールちゃんは外で飼われていたとのこと。しかし、日差しなどの対策がなかったのか、数年前に熱中症となり、生死の境をさまよったといいます。その際、脳に障害が残り、現在もスムーズに歩くことができないという後遺症を抱えていました。
ルノアールちゃんがうまく歩けなくなったからなのか、それとも他の理由があるのかはわかりませんが、飼い主は「殺処分」を前提に動物愛護センターにルノアールちゃんを連れてきたそうです。
ルノアールちゃんの存在を知った保護犬団体、一般社団法人SORA小さな命を救う会(以下、SORA)のスタッフは、幸せな第2の犬生へとつなげるべく、すぐにルノアールちゃんを保護することを決意。動物愛護センターへと向かいました。
■体が不自由でも笑顔を見せてくれるルノアールちゃん
動物愛護センターでスタッフが初めてルノアールちゃんと面会した日、まず散歩をする様子を確認しました。事前に聞いていた通り、まっすぐ歩くことはできませんでした。しかし、尻尾を振りながら一歩一歩地面を踏みしめるように進むその様子は実にたくましく、スタッフは勇気をもらったのでした。
歩行に不自由はありますが、エサも自力で食べ、排泄も自力で可能です。そして何よりも、人懐っこいルノアールちゃんの表情がかわいらしく、絶対に幸せな第2の犬生へとつなげたいとも思いました。
■「自分でできることは自分でやってみよう」
スタッフはルノアールちゃんを保護してすぐに獣医師に診てもらうことにしました。歩行困難な症状は、神経系の麻痺と想定されます。しかし、精密検査、レントゲン、エコー検査はもちろん追加検査を幾つか重ねましたが、ルノアールちゃんの病気の直接的な原因を見つけることはできませんでした。また、薬も処方してもらいましたが、歩行が改善される様子はありませんでした。
そんな中でもルノアールちゃんは立派なワンコでした。確かに体は不自由ですが、「自分でできることは自分でやってみよう」と行動します。
例えば、食事は「伏せ」のような体勢を作り、上半身を動かしながら自力で食べます。また、前足のハーネスを使用した少しずつの歩行や、介助をしながらの排泄も自分で行うことができます。
そして、その性格も極めて良好で、いっさい攻撃的な態度をとることはありません。サークル内でお留守番をすることもできます。
辛い思いをしてきたであろうルノアールちゃんですが、人間に警戒心を抱くこともなく、いつもニコニコしています。
「そんなルノアールちゃんの様子を見ると、かえって胸が苦しくなる」とスタッフは言いました。
■ルノアールちゃんの全てを迎え入れてくれる里親さん募集中
ルノアールちゃんの不自由な体は治ることがないかもしれません。しかし、これからはSORAで優しいスタッフと一緒に色んな所へ出かけ、心も体もリラックスして毎日を過ごすことができるでしょう。
また、SORAではルノアールちゃんの全てを受け入れ、大切にしてくれる里親さんを募集しています。これからのルノアールちゃんの第2の犬生が幸せいっぱいなものとなることを強く願うばかりです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)