「病院に行く日はなぜか雲隠れ」「キャリーやリードを出すわけでもないのに…お出かけ察して大喜び」 動物はきっと「あなたの心の中」が読める
貴方が飼っておられる犬や猫さんたちは、貴方が話している言葉がわかるだけではなく、貴方の心の中が読めるのではないか?そう感じたことはありませんか?私がこれまで診察させていただいた多くの動物たちに、私もそう思ったことがあります。以下は飼い主様からおうかがいしたお話です。
■カレンダーに印もつけていないし、話さないようにしているのに…
11歳の日本猫、かいちゃんはリンパ腫に罹っていました。治療として毎週木曜日に、血管内に抗がん剤を投与することになりました。しかし、かいちゃんは田舎の一軒家に住んでいる猫で、自由に屋外に行くことが出来ます。いつもは朝6時ごろに散歩に出かけ、その後9時には家の縁側で日向ぼっこをするのですが、何故か木曜日に限って朝の散歩から帰ってきません。
「ホント不思議なんだけどね…病院に行く日はカレンダーに印もつけてないし、家の者との会話でもその話はしないようにしてるのだけど、病院に行く日は分かるんだよね…」と飼い主さん。結果的に木曜日以外の日に、かいちゃんがうっかり家にいる不意を狙ってキャリーに入れ、病院に連れてきてもらうことになりました。
そんなこんなで、抗がん剤のスケジュールは遅れ遅れになりましたが、ひと通りの治療を終え、結果的にはリンパ腫は完治しました!猫のリンパ腫は抗がん剤が効かないことも多いのですが、かいちゃんは抗がん剤で完治した数少ない「ひとにゃん」になりました。
■膀胱結石を吠え続けて訴えた!?
元気な雄のヨーキー、ラム君はいつもお母さん(飼主さん)と一緒です。ある朝、ラム君はお母さんの顔を見て、わんわんわんわん…吠え続けたそうです。いつもはそんなに執拗に吠えないので、不審に思ったお母さんは、ラム君を動物病院に連れてこられました。診察予定のカルテが入ったクリアファイルには、受付でおうかがいした「主訴=飼い主さんが獣医師に申し立てる症状のうち一番訴えたいこと」がメモに書かれてはさんであるのですが、そこには「鳴き止まない」とありました。それを見た私は「???」となりました。
お母さん曰く、「きっとどこか具合が悪いのとちがうかな」。いたって健康そうに見えたラム君でしたが、血液検査と腹部エコー検査をしたところ、なんとラム君の膀胱には石が数個!膀胱結石でした。ラム君は、膀胱にある石でなんだか下腹部に違和感があったのかも知れません。それにしてもお母さんに吠えて訴えるとは!
■「僕を独りにさせるなんて!!」家の中ぐちゃぐちゃに しかも反省したふり
9歳のウィペット、アッシュ君は3人の男の子とお父さんお母さんという大家族に飼われています。ですが、昼間は独りでお留守番する毎日です。以前は兄弟のウィペットが一緒だったのですが不慮の事故で亡くなってしまい、いまは「ひとわん」です。夜になり、家族が次々に帰宅してくると、それはもう嬉しい!!楽しい!とにかく、みんなが集まるリビングにいて、みんながいると安心するアッシュ君なのでした。
しかし、アッシュ君にとって一番嫌なパターンがあります。それは、お母さんがちょっと残業して帰ってきて、他の家族も2人だけだったりすると…お母さんは一瞬、家の中に入るのですが、すぐに今度は全員が居なくなってしまう…泣。どっか近くのお店で食べようか?というお母さんの提案で夕ごはんが外食になってしまうパターンです。アッシュ君はお母さんが一番好きなのに…アッシュ君は怒ります。「僕を独りにさせるなんて!!」そして、見回すとお父さんがいつも持ち歩いているメガネがテーブルに置いてあるじゃないですか!アッシュ君はメガネを咥えてブンブン振り回します。そして、ぐちゃぐちゃにします。ついでにゴミ箱も倒して、中身をぶちまけます。咬めそうなそうなものは咬みちぎります。家族への復讐です!怖っ!
そんなこととはつゆ知らず、飼主さんご家族は「アッシュをひとりにさせたし可哀そうやから、早よ帰ろう」といって早々に食事を済ませて帰ってくると、いつもであれば家族が帰ってくると「お帰り!」というために玄関にお迎えに行くアッシュ君が出てきません。アッシュ君は、その後怒られるのはわかっているので、ベットの上に引きこもり反省しているフリをします。
お父さんは朝が早いお仕事なので、夕食後に皆がまだリビングでくつろいでいる間にひとりで階段を上って寝室に向かいます。階段に手をかけると、アッシュ君はテーブルの上に顔を出して「オッ!(もう)寝に行くんけ?」とでも言いたげな顔をしてお父さんを見つめるそうです。
■点滴バックを電子レンジに入れたとたんイカ耳に
10歳の日本猫、全身グレー色のグレちゃんは吐くことが多くなり、痩せてきたので動物病院で検査をしてもらいました。その結果、慢性腎不全と診断され、結果、飼主さんは自宅で週に2回、皮下点滴をすることになりました。
人間では点滴というと、血管に針を刺して点滴バッグという袋を高いところに吊るしてゆっくりポタポタ液体を入れるのが一般的です。しかし犬猫では皮膚とその下にある筋肉がぴったりくっついていないので、そこに点滴の液体を入れる皮下点滴が簡単で便利です。皮膚の下にいれた点滴は、周囲の細い血管から吸収されて全身を巡ります。寒い冬は点滴バックの中の液体を体温くらいに温めてから入れてあげると体に優しいので、電子レンジや湯煎で温めることがあります。
グレちゃんの家には2歳の子供や他の猫もいて、仕事から帰ったお母さんはキッチンで忙しくしています。電子レンジもフル活用です。他のものを電子レンジに入れてもグレちゃんはそんな行動はとりませんが、点滴バックを電子レンジに入れたとたん、グレちゃんはすぐにイカ耳になってソファの隅にいって縮こまります。それまでソファの上で伸び切って寝ていたのに!それほどまでに皮下点滴の時間が嫌いなのでした。
■キャリーやリードを出すわけではないのに…
とてもちっちゃなリラちゃんはトイプードルで8歳の女の子です。以前はブリーダーで繁殖に使われている犬でした。体重が2.2キロしかなく、こんなちっちゃい体で何度も妊娠出産していたのかと思うと、辛くなります。でも、今ではお父さんお母さんと小学校に通う女の子が飼主さん家族です。以前の生活とは大違いで、毎日が楽しい!毎朝、女の子が小学校に出かけるとき、玄関までのお見送りは欠かせません。リラちゃんは食事中でも昼寝中でも、女の子が玄関に向かうや否や、ごはんをほっぽり出して玄関までダッシュします。
また、リラちゃんの家族3人がお出かけするときには、リラちゃんも連れて行ってもらえる時とお留守番になるときがありますが、リラちゃんは自分が連れて行ってもらえるかもらえないかをお母さんの行動で読み取るのが得意です。連れて行ってもらえるとき、キャリーやリードを出すわけではないのですが…なんとなくわかるのですね。連れて行ってもらえる時は大喜びです。心の中が読めるのかな?
◇ ◇
いかがでしたか?人間より小さな犬猫たちですが、話す言葉に頼っていない分、人間以上に心が読めるのかもしれません。貴方の飼っておられる動物にも、伝えたいことはしっかり目を見てお話しすることをお勧めします。きっと伝わるはずです、と信じています。
(獣医師・小宮 みぎわ)