甲状腺機能低下症でお散歩が超短距離のシニア犬 「ここで休憩するね!」と遊歩道にごろん 預かりボランティアと穏やかな日々
2021年に飼い主が病気となり飼育困難になったことで、東京の保護犬団体、NPO法人わんずぺ~す(以下、わんずぺ~す)に保護されたグーくん。今は12歳のシニア犬ですが、表情は若々しく、くったくのない笑顔も見せてくれます。しかし10歳で保護された当初は、歩くのも辛そうな様子で表情は疲れ切っていて、明らかに具合が悪い状態でした。いくつも病気を抱えていたのです。
■続々と判明した持病
グーくんの持病は甲状腺機能低下症。体力持続が難しく散歩も超短距離しか歩けませんでした。わんずぺ~すの預かりボランティアさん(doggieworldさん)が病院に連れていった際には、標準体重が20~21㎏のグーくんの体重は37㎏もありました。そのため、体重を十分に支えきれなくなり、今度は両手足の関節炎を患っていました。さらに、お腹に大きな脂肪腫や胆のうの問題なども見つかり、手術が必要という診断を受けました。
大好きだった飼い主を失い、年老いた体でこれだけの持病を抱えていたら、元気がないのも無理はないと預かりボランティアさんは理解し、グーくんの体が少しでも良くなるようにと、治療に尽力しました。
■体調が良くなるとマイペースぶりを発揮
グーくんの通院ではほぼ毎回採血を行い、甲状腺の値など、全身状態を確認した後、適切な薬の調整をしてもらいました。多いときは一度に13錠以上の薬を飲む必要がありました。そうでなくても体力が弱りがちなシニア犬です。預かりボランティアさんは治療にあたってグーくんの負担がかからないよう様々なことを考え、実践していきました。預かりボランティアさんの気持ちがグーくんに伝わったのか、少しずつ体調は改善されていきました。そしてグーくんの表情も次第に明るくなっていきました。
体調が改善されるにつれ、グーくんの本来のマイペースぶりも発揮されるようになりました。甲状腺の数値が安定し、脂肪腫の切除手術が終わった後は体重がどんどん減って標準体重となり、関節の炎症も改善していきました。本来大好きなお散歩の距離が少しずつ伸びて、今では毎日1回2㎞ほど歩いて楽しんでいます。
あるときの散歩でグーくんは「僕、ここで休憩するね!」と小さな遊歩道で、その道を塞ぐようにドーンと座り込んで動かなくなりました。しかも、笑顔で預かりボランティアさんを見ています。
大きな体のグーくんなので、預かりボランティアさんの力ではその体を動かすことができません。幸い、人が通る前にグーくんは自ら立ち上がってくれましたが、こんなマイペースぶりをときおり見せるのです。
そのたびに預かりボランティアさんは「グーくん、いくらなんでもそれはちょっと……」と思う一方、同時にそんなマイペースなグーくんを愛おしくも思うのでした。
■目で訴え、目で否定し、目で諦める
現在も投薬は続いていますが、多かった時期の13錠というほどではなくなりました。そして、この辛い時期を一緒に乗り越えたことでグーくんの預かりボランティアさんに対する信頼感はより厚いものにもなりました。
同時に預かりボランティアさんへの甘えっぷりもどんどん増長。散歩の最中などは「今日はあっちに行きたい」と目で訴えてくるようになりました。しかし、ここで簡単には甘えさせないのも預かりボランティアさんのすごいところ。
目で訴えるグーくんに「違うよ。今日はこっち」と同じように目で訴えます。すると、グーくんも「はいはい、わかりました。おっしゃる通りっす」と言わんばかりに目で納得し、預かりボランティアさんの思いを素直に聞くようになりました。
グーくんと預かりボランティアさんは、もう言葉を発せなくても、アイコンタクトだけで意思の疎通ができるほど関係が深まったということでもあります。
グーくんの病気は治療を継続していますが、今は安定しています。これからも預かりボランティアさんとの二人三脚は続いていきます。
(まいどなニュース特約・松田 義人)