インバウンド回復で大混雑!JR嵯峨野線に打つ手はあるか 「4扉ロングシート車の投入」「快速の普通化」の可能性は

今年に入り、JR嵯峨野線(京都~園部)の電車が大混雑に見舞われています。大混雑の要因は京都の観光需要の回復です。沿線には京都屈指の観光地である嵯峨野・嵐山があり、訪日観光客にも人気なエリアです。

この大混雑に対し、JR西日本は臨時列車の運行、増結を実行しています。何か他に対策はあるのでしょうか。

■4扉ロングシート車両はある設備のせいで難しい?

現在、嵯峨野線の普通・快速で使用されている車両は転換クロスシート車2列+2列の221系、2列+2列・1列+2列の223系です。今年、阪和線で活躍していた転換クロスシート車1列+2列の223系を嵯峨野線に投入。結果的に立席スペースが拡大しました。

であるならば奈良線で活躍する4扉ロングシート車両205系を嵯峨野線に転属すればいいのではないでしょうか。クロスシート車と比較すると格段に立席スペースはとれますし、根本的な解決策になりそうです。

しかし、4扉ロングシート車の転属は物理的に難しいように思えます。なぜなら、京都鉄道博物館の最寄駅である梅小路京都西駅に設置された可動式ホーム柵は3扉対応だからです。

JR西日本には3扉ロングシート車323系はありますが、全車両とも大阪環状線・ゆめ咲線で活躍しています。同車は2016年デビューで、主役級の活躍をしていることから、嵯峨野線への転属はまず「ない」と考えてよいでしょう。

■快速を普通にするアイディアはどうか

嵯峨野線には一般車両を使う種別として快速と普通が存在します。快速の途中停車駅は二条、円町、嵯峨嵐山、亀岡からの各駅です。日中時間帯における京都駅発の1時間あたりの列車本数は特急1本、快速1本、普通3本です。京都~亀岡間約20キロの所要時間は快速が19分、普通が27分です。

快速が通過する梅小路京都西駅、太秦駅周辺にも観光施設はありますが、日中時間帯の停車本数は1時間あたり上下各3本にとどまります。それでは快速を普通に変えることで、快速通過駅の停車本数を増やすというアイディアはどうでしょうか。

実は亀岡駅周辺にも京都府を代表する集客施設があります。それがプロサッカーチーム、京都サンガF.C.のホームグラウンド「サンガスタジアム by KYOCERA」です。「サンガスタジアム by KYOCERA」の収容人員は2万人を超え、施設側は公共交通機関の利用をすすめています。

嵯峨野線以外ですと、阪急桂駅から京阪京都交通バスがありますが、約40分以上もかかります。京都市内からですと嵯峨野線の利用が現実的で、試合日には臨時快速も運行されます。快速を運行することで、事実上、普通と役割分担しています。

また、京阪神エリアではターミナル駅から郊外へ日中時間帯に快速を運行することが定石となっています。観光客の増加を理由に快速を廃止すると、亀岡市や南丹市などの沿線自治体の理解が得られないのではないでしょうか。

このような点から、日中時間帯に嵯峨野線から快速が消滅することはないと予想します。

それよりも筆者が注目するのは2017年3月~2021年3月の間に存在した昼間時間帯における京都~嵯峨嵐山間の15分間隔ダイヤの復活です。このダイヤでは1時間あたり1本、京都~嵯峨嵐山間の折り返し列車が設定されていました。

いずれにせよ、訪日観光客数は為替や国際情勢の変化、制度により、大きく上下するものです。その時々において、現実的で臨機応変な対応が求められる今日この頃な嵯峨野線です。 

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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