保護猫が主役のテーマパーク誕生! キャンプやBBQを楽しみながら保護猫と触れ合える場所 企画した2人の思いとは
保護猫を主役にしたテーマパークが、2023年秋に大分・湯布院でオープンします。
テーマパークの名称は「YUFUIN HOGONEKO FOREST」。
大分県と熊本県にまたがる「阿蘇くじゅう国立公園」のクヌギの森の中にあり、パーク内では地元食材を使った料理やBBQ、キャンプ、宿泊などと共に、保護猫たちとのふれあいが楽しめます。
オープン時に開業予定なのは、宿泊できる2棟の猫耳型コテージとレストラン、保護猫カフェ、猫雑貨ショップなど。カフェでは、人慣れした保護猫たちが暮らす「ジョートフルステーション」という名の猫部屋があり、運命的な出会いがあれば里親として譲渡を受けることも可能。また、コテージの中にも保護猫専用部屋があり、宿泊客は猫の食事やトイレの世話、遊び相手をするなど、保護猫との暮らしを体験することができます。
■地下から救出できなかった猫、地震後のカフェにあふれた猫
「YUFUIN HOGONEKO FOREST」を手掛けるのは、韓国出身の崔昌奎さんと、熊本県出身の梅崎尚子さんご夫婦。もともと猫好きだったというお2人ですが、保護猫活動を始めた背景には、それぞれに忘れることができない猫たちの姿があります。
崔さんの脳裏に焼きついているのは、幼い頃に別れた猫たち。
「子どもの頃、映画『パラサイト 半地下の家族』に出てくるような部屋で暮らしていたことがあります。そのときに、大雨による浸水で、地下に水が一気に流れ込んできたことがあって。両親は、私と兄弟たちを必死で助け出してくれたのですが、一緒に暮らしていた猫たちの救出は間に合いませんでした」
崔さんは「あの子たちのことが、ずっとしこりのように残っています」と目を伏せます。
一方で、梅崎さんの目には、熊本地震後の保護猫カフェの惨状が焼き付いているといいます。
「当時は猫を連れていける避難所がなかったので、飼い猫たちのほとんどが、置き去りにされるか、保護猫カフェなどの団体さんに預かってもらうしかありませんでした。カフェにあふれかえった行き場のない猫たちと、無償でそのお世話をするスタッフさんたちを見て、『何か私たちにできることはないか』という気持ちがこみ上げてきたんです」
崔さんと梅崎さんは、そこから本格的に保護猫活動を開始します。崔さんはジュエリーデザイナー、梅崎さんは宝石鑑定士だったことから、2016年に、「楽しい猫助け」をコンセプトにした「Catton(キャットン)」というジュエリーブランドを設立。売上の一部は、不幸な猫をなくすための保護猫活動に使う仕組みを作り、2018年には、保護猫シェルターを併設したアクセサリーショップもオープンします。
「でも、保護猫活動を通じて、『どうせ懐かない』『世話が大変』など、保護猫のことを誤解している人たちが多いことに気づかされたんです。不幸な猫を1匹でも減らすためには、まずは保護猫について知ってもらわなければならない。とはいえ、『楽しい』が入り口でないと、なかなか興味を持ってもらえません。そこで、楽しく保護猫たちとふれあえるテーマパークを作ろうと決意しました」(梅崎さん)
そんな2人の想いは多くの人の心に響き、保護猫を主役にしたテーマパークは、クラウドファンディングで総額615万円の支援を集めます。そして、ついにこの秋、パークのオープンが決定。人が自然のアクティビティを存分に楽しめる場所であること、猫がのびのびと暮らせる環境であることにこだわったパークでは、人も猫も幸せな時間が過ごせます。
「楽しい、をきっかけに、人と猫が自然とコミュニケーションを取れる場所をつくりたい。それが、保護猫を知ること、ひいては、猫が“ずっとのおうち”に出会えるきっかけになれたら嬉しいです」(梅崎さん)
レストランやカフェが入るエントランス棟では、保護猫についての正しい知識を学べるワークショップなども開催予定。さらに今後は宿泊棟の増設や、サウナ・温泉、人慣れしていない猫が過ごす専用の部屋など、人と猫の幸せにつながる施設を増やしながら、パークを育てていく予定です。
世界でも珍しい保護猫のテーマパークは、湯布院の市街地から車で15分ほどの場所にあります。湯布院の豊かな自然と、のびのび暮らす猫たちに癒されたい人は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
(まいどなニュース特約・鶴野 浩己)