アメリカでも先生不足→週4日登校・教科の削減で対策 給与が高い学区なら平均1278万円だが…

近年、各地で教員不足の問題が深刻化しいている。教員不足に悩んでいるのは日本だけではなく、ヨーロッパではフランス、ドイツ、ポルトガル、スウェーデン、イタリアでも教員不足が起こっているという。

米国でも、全米教育統計センターの発表によると、2022年10月時点で45%の公立校で1人以上教員が足りない状態にある。特別支援教育、英語学習、コンピューターサイエンスを担当する教員の不足が目立つ。また、貧困層世帯の子どもが多い学校の57%が1人以上の教員不足と答えたのに対し、貧困世帯の子どもが少ない学校では1人以上の欠員があったのは41%だった。また、貧困層世帯の子どもが多く通う学校ほど、複数以上の欠員があると答えた割合も高かった。

米国では各州は州を学区に分け、学区教育委員会が大きな運営権を持っている。そのため、学区によって教員の雇用条件が異なる。例えば、ニューヨーク州は教員給与の平均値が全米で最も高い州であり、2020-21年度は9万1034ドル(約1278万円)だった。これを学区別にみるとどうなるのだろうか。調査年度等が異なるが、ロックフェラー政府研究所が2017-18年度のニューヨーク州内の学区別の給与を調査したところ、給与の中央値トップの学区で14万5957ドル(2043万円)だが、最も低い学区の給与中央値は4万4586ドル(約624万円)だった。

また、全米で最も教員給与の低い州はミシシッピー州で平均値は4万6682ドル(約653万円)だった。さらにミシシッピー州内でもこの金額よりも給与の多い学区も少ない学区もある。

教員という同じ仕事なのに、これほど給与の幅があるのならば、多くの人はよりよい条件の学区で働きたいと思う。よい条件を提示できない学区では、教員不足の問題が深刻化しやすい。そこで、教員を採用しやすい条件、離職する教員数を抑えるために、週に4日だけ授業している学校もある。他の学区よりも高い給与を払うことはできないが、週4日という労働条件にすることで、教員を集めているのだ。

教員も自らの生活を守るために働く場所を変えることは厭わない。リーマン・ショック時の話だが、筆者も次男の担任が1年間で3回変わることを経験した。

また、財政難に苦しむ学区では、体育や音楽といった実技系の科目を削減している学校もある。学力テストの対象となる算数・数学、英語などの科目を外すことはできないが、評価の対象外となる科目を削り、実技系科目に必要なコストを抑えている。

もちろん、前向きな対応策もある。地域内にいる人やすでに学校で働いているが教員資格を持たない人たちが教員として働けるよう支援している州も多い。教員のアシスタントとして働いていた人が、奨学金を得て大学で学び、十分な資格を取得した例もある。

そうはいっても、財政の厳しい学区の子どもほど教員不足の影響を受けやすいようだ。

(まいどなニュース特約・谷口 輝世子)

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