所有権放棄された赤い首輪の保護犬 目を見開き激しく吠えた 「根はいい子のはず」スタッフは予感した

今年1月末のある凍てつく寒さの日のこと。犬の保護および譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)は、動物愛護センターから行き場のない15頭のワンコを引き出しました。その中に、人が近づくたびに目を見開き吠える、赤い首輪をつけたワンコがいました。そのワンコの名はカルパス。元飼い主から所有権放棄されたワンコでした。

■「根はいい子だね。怖くて唸っていただけだね」

普通に見れば、「凶暴で怖そうなワンコだ」と思ってしまうのが正直なところ。しかし、多くのワンコを保護し、その心を開いてくれるよう接してきたスタッフは冷静です。

「近づいただけで、これだけの吠え方をするのは、相当辛い思いをしてきたワンコかもしれない。けれど、この子は、威嚇して吠えるようにも見えない。人間が嫌いなワンコではないと思う」

愛護センターでのカルパスの様子を見て、瞬時にそう感じたスタッフは、試しにリードをつけケージから出し、触れ合ってみることにしました。案の定、カルパスは吠えるのをヤメました。まだ警戒し、人間の様子を伺うような表情を浮かべながらも、少なくとも威嚇するような態度ではありません。

また、ケージを出てからしばらくすると、尻尾を少しずつ振り始めました。

「やっぱり根はいい子だね。怖くて怖くて警戒するがあまり、唸っていただけだね」

このカルパスもまた適切にそして誠実に接すれば必ず心を開いてくれるワンコであることを、スタッフは確信しました。

■優しい表情を浮かべ、お座りもするようになった

愛護センターからピースワンコへ連れ帰る際、スタッフは再びケージの中にカルパスを入れましたが、もう威嚇することはありませんでした。きっとスタッフのことを「悪い人間ではない」と理解してくれたのでしょう。

ピースワンコについてからは、2週間ほど犬舎で健康状態をチェックする必要がありますが、ここでのカルパスは「また知らないところに連れて来られた」ということから、しばらく唸っていましたが、すぐに馴れ、再び尻尾を振るようになりました。

さらに、2週間の検疫の隔離期間を終えた頃には、愛護センターのケージの中で威嚇していたカルパスの姿はもうなくなり、自分からスタッフへ近づき、人の手からおやつをもらうようにもなりました。優しい表情を浮かべ、お座りなどもしてくれるようになりました。

■新しい里親さんとの出会いを胸に譲渡会参加を目指す

2週間の検疫の隔離期間だけでも劇的に態度が変わったカルパス。日々の人馴れトレーニングを行い、本来の優しい性格が少しずつ見られるようになりました。

これからのカルパスは、新しい里親さんとの出会いを胸に、譲渡会への参加を目指していきます。

元飼い主から所有権放棄されたというトラウマを持つカルパス。寝食をともにし、幸せで楽しい生活を作ってくれる新しい里親さんとの出会いを待ちながら、ピースワンコで日々を過ごしています。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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