「スーパープリン、二つお願いします」(私)「えっ…いいんですか?」(お店の人) 「プリンで満腹になりたい」長年の夢を静岡と兵庫で叶えた50代男
■プリンでおなかをいっぱいにしたい、という夢
「おなかいっぱいプリンを食べてみたい」。そんな思いを持ってる人って結構多いんじゃないでしょうか。少なくとも「レディーボーデンを一人で一気に食べてみたい」と思ってる人程度にはそういう人が存在すると、筆者は確信しています。
筆者はもう38年来のバイク乗りですが、昔からライダーにはたくさん食べる人が多かったように思います。ツーリング系のバイク雑誌で紹介されるお店はたいてい「でか盛り」系でしたし、バイク仲間で話題になるのも「あそこのとんかつ屋は量がすごい」とか、そういうお店でしたし。
そんな仲間内で30年ほど前に聞いたお話がありました。
「静岡に、バケツプリンと呼ばれる巨大なプリンを出すお店がある」
なんとも魅力的なお話なのですが、なぜか実際に行った彼らの反応は一様に微妙でした。おいしそうと言うよりも、辛そうだったのです。
プリンなんていうものは固まってはいるけれど口の中でトゥるんと溶けるもの、つまり「準飲み物」なんだからそうおなかに溜まるものでもあるまい。ビールとか何リッターも飲む人がいるんだから、プリンもきっと無限に食べ続けられるに違いない。筆者はそう考えていました。
■静岡のスーパープリンは植木鉢だった
春先のある日、友達に誘われて静岡に行く機会があり、ついに30年来の懸案事項バケツプリンを解決しておくことにしました。
バケツプリンというからには、おそらく「デザート」として別腹に収まるようなものではないのでしょう。きちんとこれを「昼ご飯」として食べる、そんな「食事」のカテゴリーに違いありません。ということで、せっかく関西から静岡に来ているのに「さわやかのハンバーグ」をスルーして、「カントリーロード」のスーパープリンにチャレンジすることにしました。
その日、お店は空いていました。友達と2人、席にスタンバイします。程なくお店の人が注文を取りに来られました。
「スーパープリン、二つお願いします」
「えっ、……いいんですか?」
少し戸惑った様子でした。こういうパターン(おっさん二人がそれぞれにスーパープリンを注文する)は珍しいのかも知れません。
しばらくして、両手にプリンを持ってお店の人が現れました。いやこれ、でかいです。まあ「バケツ」というほどではありませんが、ちょっとした植木鉢くらいあります。
シン・ゴジラで蒲田君が上陸する際に、科学者が「陸に上がると体重で潰れてしまうでしょう」なんておっしゃるシーンがありましたが、プリンもこのサイズになると通常の固さでは重力に負けて崩壊しそうです。それが潰れずに自重を支えている訳ですから、つまりこれは固くてぎっしり濃厚である、ということですね。
またプリンはプリンでも冷蔵庫で固めて作るタイプのやつでしたら、とにかくたくさん仕込めば固まるわけですが、これはいわゆる「焼きプリン」です。玉子と牛乳を蒸して(あるいは加熱して)固めるのですから、よっぽど上手くやらないとスが入って中までボコボコになるでしょう。しかしこれ、表面こそ多少の凹凸はあるものの、中はしっかりと詰まっています。おそらく試行錯誤の末に編み出されたレシピに違いありません。
そしてさらに上にはかなりたっぷりと生クリーム。全体的に甘さ控えめのプリンによくマッチしていますが、ボリューミーです。
最初の半分くらいはおいしかったですが、うすうす「これはヤバいかも」と感じました。結構おなかがいっぱいになるのです。ほぼ液体、なんて侮っていたのは間違いでした。ラスト1/4くらいはかなり頑張る展開になってしまいました。
■実は地元にも、もっとすごいやつが控えていた
後で調べると、静岡のスーパープリンは1kgあったそうです。さらに後日、近くの兵庫県西宮市にも「リットルプリン」というのがあるのを知りました。行きがかり上、これも食べてみないわけにはいきません。
そのお店はインザシー。西宮マリーナにあるライダースカフェです。実はここには何度かお邪魔してたのですが、これまでリットルプリンのことは知らなかったのです。
インザシーの昼間の営業を担当されている、あにーさんが作るリットルプリン。前日までに要予約の特別メニューです。
「実は昨日予約を知った時間の関係で、少しだけ牛乳が足りなかったんです。それで、配分が通常よりもやや『濃厚』になってます」 という嬉しいような大変なような事前情報をいただき待っていますと、出てきました、リットルプリン。なんというかその、四角いです。大きさはペヤングソース焼きそばの容器くらいでしょうか。静岡のスーパープリンよりも大きい気がします。
「リットルと言いながら、実は1100ccあるんですよ」
さらに不安になる情報ありがとう。カレー用みたいな大きめのスプーンで掘り始めます。うーん、これはみっしりと詰まっています。濃厚さが手触りで伝わってきます。レアチーズケーキに近い手応えです。しかし、味はとてもおいしいです。
「スが入らないようにゆっくり加熱するので、これ作るのに1時間半ほどかかります」
やはり、前日までの予約が必要なんですね。そんな話を聞きながらひたすら食べました。写真のタイムスタンプを見ると14時42分に食べ始めて、完食が14時59分。17分かかりました。もっと時間を掛けていたら満腹中枢にストップを掛けられていたかも知れません。
「実はこのプリンの上に通常のプリンを載せた『キャッスルプリン』、さらにこのプリンを二つ重ねてその上に通常プリンを載せた『キングキャッスルプリン』もあります。さすがにこれはいままで完食した人はいません」
甘いもの好きな大食いの皆さん、一度チャレンジしてみませんか?
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)