素直な2頭の保護犬 糖尿病で自由に走り回れないけど…ひなたぼっこや室内遊びに工夫を凝らすスタッフ 与えられた命を全うするために
犬の「殺処分ゼロ」を目指し、犬の保護および譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。これまでに数多くの身寄りのないワンコを保護してきましたが、中には高齢犬だったり、重篤な持病を持つワンコもいます。そういったワンコは、新しい里親さんを見つけ譲渡をするハードルは高いものですが、ピースワンコでは「譲渡難」のワンコでも、1頭でも多く保護し、その命を全うするまでお世話をし続けます。こういった取り組みをこともまた、犬の「殺処分ゼロ」を目指す上では避けて通ることができない大切なことだと考えているからです。
■スラッとした美形の一方、糖尿病の持病があった
こういった高齢犬や持病を持つワンコをケアするための施設があります。「オレンジ犬舎」という呼び名で、一頭ごとに異なる健康状態や病状に合わせて、スタッフが介護や治療といったお世話を行っています。
スピガという3歳のメスのワンコもオレンジ犬舎で暮らすうちの1頭です。真っ白な毛並みと、スラッとしたルックス、そして明るい性格がチャームポイントのワンコですが、生まれつき糖尿病を抱えていました。スタッフはスピガの気持ちを尊重し、できる限りストレスにならないことを意識しながら、適切なケアをし続けています。
■施設のまわりで日向ぼっこが日課
まだ若いスピガですが、糖尿病の持病があることから、毎日定期的な血糖値のチェックが求められ、専門的な医療処置も必要です。
スタッフは、スピガが処置を嫌にならないよう、そして負担にならないよう、スピガが好きな遊びをするなどのコミュニケーションの中でも、その些細な体調の変化を見逃さないようにしています。
こういった献身的なお世話から、スタッフに対し全幅の信頼を寄せているように見えるスピガ。ストレスだけは抱えていないことが幸いで、いつもマイペースに明るい表情を浮かべてくれます。
また、散歩が大好きなスピガですが、糖尿病の影響であまり長時間・長距離の散歩をすることはできません。
他の元気なワンコたちと同じような散歩に連れていってあげられないことに、心を痛めるスタッフでしたが、その代わりオレンジ犬舎のまわりにある日当たりの良い草原で、日向ぼっこをさせるなどしています。スタッフは、できる限りスピガらしく過ごせるように、今日もお世話と配慮をし続けています。
■スピガと一緒に暮らす、糖尿病と目の持病があるアワビ
このオレンジ犬舎で、スピガと一緒に過ごす「アワビ」という名のメスのワンコがいます。推定8歳になるフサフサな毛並みと垂れ耳がかわいいアワビは、スピガと同じく糖尿病の持病があります。加えて、他に水晶体白濁という目の病気もあり、視力が極度に弱いのです。
ただし、気性は極めて明るく、自分に近づいてくるスタッフが誰なのかを自慢の臭覚で察知します。そして、いよいよアワビにスタッフが近寄ると、「甘えさせてー!」とばかりにすり寄ってきます。
■その命を全うするその日まで大切にケア
スピガ同様アワビもまた日々の定期的な血糖値の確認が求められ、専門的な医療処置も必要です。加えて目の治療もあります。肉体的には苦しいはずのアワビですが、持ち前の穏やかな性格とスタッフへの信頼感から、いつも素直にケアを受け入れてくれます。
他のワンコのように自由に遊ぶことができないのに、アワビの健気な姿がかえって切なくも感じるスタッフですが、室内で遊べる嗅覚を利用したゲームや、部屋のなかでも楽しめるおもちゃなどを使い、一緒に過ごすようにしています。
また、オレンジ犬舎にいる他のワンコたちとコミュニケーションを取ってもらうことで、苦しい治療を少しでも忘れられる時間を作るよう努力しています。
新しい里親さんが見つかり、第2の犬生を迎えられた保護犬がいる一方、高齢犬だったり、スピガやアワビのように持病を持つワンコは、残念なことに譲渡のハードルがかなり高いのが現実です。
それでも、そういったワンコであっても、与えられた命を全うするその日が来るまでスタッフは施設で世話を続けるのです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)