音楽に特化した放課後等デイサービス「さんかく」1年の歩み できることが増えていく喜び 7月には発表会を開催
神戸市北区にある児童発達支援および放課後等デイサービス「さんかく」。放課後等デイサービスは他にもあるが、ここは兵庫県で初めての“音楽に特化した施設”だ。子どもたちは地元の北区や隣の三田市、遠くは加古川市からもやってくる。開所1周年を記念して、7月23日(日)に発表会を開催予定。代表の平瀬友喜さんに1年の歩みとコンサートへの思いを聞いた。
■個別療育が魅力の「さんかく」
神戸市北区有野台にある「さんかく」には、広めの部屋と、ピアノをはじめ楽器類の並んだ2部屋がある。受け入れ時間は約1時間で、2人の子どもたちを預かる。
ウォーミングアップは、みんなで音楽にのって体操。その後は1人約30分ずつ個別の療育に入る。行うのは、発語と楽器のレッスン。楽器の部屋にはピアノやドラム、木琴などがあり、その子の興味に合わせて音を鳴らしたり歌ったりする。
筆者が訪問したときにいた2人の女の子は、お腹の底からしっかり声を出し、楽しんで取り組んでいた。集中力が途切れてきても、先生たちが上手にフォローしてくれる。
約1時間の滞在だが、1人の先生が1人の児童にたっぷり寄り添う個別療育に魅力を感じる親御さんが多く、現在20人ほどの児童が通っている。
「週に2回、3回と積極的に来られる子どもさんもいます。できなかったことができるようになり、できることが増えていく。それが楽しいのだと思います」
代表の平瀬友喜さんは、1875(明治8)年創業の平瀬楽器の6代目。楽器店で6代目というのも珍しい。スタート時は眼鏡店だった。当時メガネといえばドイツが本場で、取引するうちに楽器も取り扱うようになり、そのうち楽器のみを扱うようになったそう。約60年前に音楽教室も開設。生徒数は、最盛期にはなんと千人以上いたという。最近まで850人ほどいたが、コロナ禍を経た今も700人近くが通う、地元の老若男女に人気の音楽教室だ。
■すべての子どもが安心して音楽を楽しめるように
「さんかく」を開くきっかけは15年ほど前、当時3歳だったH君だった。
姉のピアノのレッスンに付いて来ていたH君は、ダウン症で言葉が出ず、感情表現も苦手。そんな彼も何かやれることがあるはずと、姉に教えていた先生が立ち上がった。音楽ではベテランでも障害児の指導経験はなかったが、熱意と工夫でH君の好きな歌やドラム、少し苦手なピアノまでいろいろな楽器に挑戦させた。するとだんだん言葉が出るようになり、さらに挨拶や感情表現などもできるようになったそう。
「H君以外にも、音楽教室には発達障害を抱えるお子さんも20人ほどいました。彼らもだんだん会話力がアップしたり不登校が改善されたりして、音楽がもたらす変化ってあるんだと思いました」と平瀬さんは振り返る。
「さんかく」の先生たちは、音楽や保育を専門に学んだ人ばかり。障害児を専門にする先生はいないが、かつてH君を15年間指導した先生が「さんかく」に体験に来た子どもの様子を見て、その子に合った指導メニューを作成する。
■頑張る子どもの姿を、ご両親に見てほしい
音楽教室では、これまでにも障害のある生徒のための音楽発表会を開催している。そうしたノウハウを生かし、7月23日には西宮市の山口ホールで、「さんかく」に通う子どもたちによる成果発表会を開催する。子どもたちに良い経験を積ませたいという他に、保護者にも人前で堂々と振る舞う「頑張る姿」を目に焼き付けてほしいという。
「ご自分たちの子どもを、心から誇りに思ってほしいのです」
長年音楽をやってきたからこそ、音楽が人生を豊かにしてくれることをよく知っている平瀬さん。将来の夢を伺うと、現在神戸市北区に1カ所だけの「さんかく」を三田市や篠山市、さらに他の地域にも増やし、音楽の力を伝えていきたいと話してくれた。
◇クラウドファンディング「Good Morning」プロジェクト開催中
「放課後等デイサービスの生徒たちによる成果発表会をコンサート形式で開催したい!」
(まいどなニュース特約・國松 珠実)