京大芸人、宇治原とギャラ折半 相方を守るためだった ロザン菅が新刊「京大中年」で明かした戦略
漫才コンビ「ロザン」の菅広文(すが・ひろふみ)さん(46)の新著「京大中年」が6月8日、幻冬舎から発売されます。京大法学部出身の相方、宇治原史規(うじはら・ふみのり)さん(47)とコンビを組んで27年。これまで宇治原さんの半生をつづった「京大芸人」や「京大少年」を出版し、京大シリーズは累計35万部の人気を博しています。宇治原さんの出身校を冠した京大シリーズを書くのも、漫才のネタを書くのも、コンビのYouTubeチャンネルを企画したのも菅さんです。
高学歴芸人、クイズ王として宇治原さんがクイズ番組の賞金や賞品を荒稼ぎしている時、宇治原さんにネガティブなイメージが付かないよう、ギャラを折半することを決めたのも、菅さんでした。そのギャラ折半制度ゆえ、「金食い虫」と誤解されたこともありました。しかし、菅さんが弁解することはなかったといいます。どうしてでしょう?ロザンの「頭脳」と言える菅さんに聞きました。
■ギャラ折半、相方のイメージアップ術だった
そもそも、大阪府立大学(現大阪公立大学)経済学部進学の菅さんが著書「京大シリーズ」を書き始めたのには理由がありました。
ロザンに「京都をテーマにした本を書いてほしい」という依頼が出版社から舞い込んだ時、既に菅さんは京大出身の宇治原さんを主人公にした小説を書いていたのです。
菅さんは新著「京大中年」で、「京都やったら京大でもいいですか?宇治原さんが主人公の小説なら書いていますが」と出版社に逆提案し、書いた「京大芸人」が2カ月で10万部売れるヒットとなったことを明かしています。「京大芸人」はロザンというコンビの取り扱い説明書となり、東京の番組に呼ばれるきっかけを作りました。
そして、宇治原さんがクイズ番組で活躍するようになり、菅さんは「クイズの賞金を半分は相方に渡していることにして、宇治原さんが背負うかもしれないマイナス要素をこちら(菅)に押し付けよう」と相方の宇治原さんにギャラ折半制度を提案します。菅さんもCMが決まり、1人ロケもこなし、互いのギャラを折半しても、ほぼ同額になる可能性が高く、宇治原さんを「賞金を相方と分ける良い人」とイメージアップする戦略でもありました。
宇治原さんが「優勝賞金は半分相方に渡してます」と言えば、菅さんは「そうなんです。僕ら馬主と馬の関係なんです」と重ねる。このギャラ折半ネタをテレビで繰り出す中、長寿番組「徹子の部屋」に呼ばれた菅さんは思わぬ言葉をかけられます。
「あなたは金食い虫ね」
「違うんです違うんです!折半制度にしたのは戦略なんです!こちらが悪いように見せた方がいいから折半制度にしたんです」という言い訳を菅さんはのみ込みました。自身が悪者になるという戦略通り受け止めてもらえた、ともいえるからです。
当時の心境について、「いい表現しはるな、と思いました」と菅さんは苦笑して当時を振り返ります。
■稼ぐのは得意だけど好きじゃない
相方の宇治原さんを「京大芸人」としてキャラ付けし、クイズ番組で活躍したら、ギャラ折半制度でネガティブイメージを引き取る。現在ではコンビのYouTubeや有料のNoteを運用し、時代の変化を先読みして菅さんは打ち手を変えていっています。
「今、楽しいと思うことをやってるだけ」という菅さんですが、マネタイズする手段が多様で、かつ無駄がありません。そんな印象を記者が伝えると、「言い方が難しいんですけど…お金を稼ぐのは得意。得意だけど、好きじゃないんです」という答えが返ってきました。
例えばYouTubeでは言えば、コンビでしゃべっている所にフリップを立てて、広告を掲げることもできる。着る服をスポンサードすることも可能だ。「でも、そういうことをやっていたら、品に関わるし、面倒くさいでしょう」と菅さん。マネタイズにつながるアイデアはいくらでも湧いてくるが、「(稼ぎ方を)考えるのが好きなだけ。本も読みたい、ゲームもしたい。限られた24時間の中でできることを最大化しているだけ」と柔らかい笑みを浮かべます。
高学歴若手コンビとして登場したロザンも中年芸人となりました。新著「京大中年」は、46歳になった菅さんが過去の宇治原さんや自身に手紙を出す形で、考え方や仕事術のヒントがちりばめられています。1760円。
(まいどなニュース・伊藤 大介)