生後すぐ捨てられ、継母から虐待を受けて育った女性 「子供は助けを求めることができない」最近の児童虐待事件に見解
「私は生後すぐ捨てられ、虐待マニアの継母の養子になった。とにかく毎日家事しないと折檻。首絞められたり、煙草の火つけられたり、熱湯かけられたり、包丁持って追いかけられたり、縛って逆さづりにされたり、裸で外に出されたり、スネを棒で叩かれたり。もう死ぬなと思った時必ず近所のオバサンが助けに来た」とツイートしたのは、ranranさん(@ranran556677)。壮絶な幼少期、青年期を乗り越え、恋人だった高校教師の夫と結婚したという。
■増え続ける児童虐待
厚生労働省によると、2021年、全国225カ所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は20万7660件。過去最高である。2012年度からは身体的虐待より心理的虐待の方が多くなり、今は圧倒的に心理的虐待数が多いという。(出典:厚生労働省「令和3年度児童虐待相談対応件数」)
明るみに出ているだけでこの件数。児相が介入していたにも関わらず、命を落としてしまうケースも後を絶たない。
2017年、筒井歩夢(あゆむ)ちゃん(当時4歳)は、シングルマザーの母親と弟、母親の元交際相手とその知人の男と一緒に大阪府箕面市で5人で暮らしていた。男たちは事件の3カ月前から同居するようになったという。2016年6月にはネグレクトのため児相が介入して保護したが、翌年5月、ネグレクトが改善したとして箕面市がリスクを2段階引き下げた。その後、男ら2人が同居するようになり、母親から依頼された男ら2人による「しつけ」と称した虐待が始まった。クリスマスに歩夢ちゃんは何度も腹を殴られ、何度も吐いた後に死亡。最後の言葉は「ママ、気持ち悪い。お茶が飲みたい」だったという。
■子どもはどうしたら自分の命を守れる?
母親主導で男らに暴力を振るわれ続けた歩夢ちゃん。死ぬ間際に助けを求めたのは、その母親だった。子どもはどう自分の身を守ればいいのだろうか。幼少期から青年期に至るまで継母に身体的、心理的虐待を受け、「死ぬかもしれない」と思ったranranさんに話を聞いた。
■虐待の連鎖はあるのか
ーー児童虐待のニュースを見て、どう思われますか。
「虐待で子どもが犠牲になったニュースを見たり、買い物に訪れたスーパーでギャンギャン泣いて謝っている子どもを許すどころか『あんたなんか嫌い』『この店に置いていくからね』などと親らしき大人が怒鳴りつけたりしているのを見ると、この大人たちは果たして子ども時代に聞き分けのいい子どもだったのかと、タイムマシンにでも乗ってのぞきに行きたい衝動に駆られます」
ーーひどい言葉で子どもをなじっている人もいますね。
「子どもをしつけと称して暴力暴言、ネグレクトをはたらいてる大人たちにこそ、しつけが必要だと感じます。まず大人たちですが、一緒に生活している子どもを邪魔で嫌いだと思った時点で、何らかのカウンセリングを受けるべきだと思います。ストーカーをはたらく人間も病気ですが、虐待をする人間も病気だと私は思っています。カウンセリングをした医師や臨床心理士などが必要だと認めた場合に児童相談所で子どもを保護する法律も必要だと思います。子どもは親の虐待に遭っていても外に助けを求めることがいろんな意味でできないからです」
ーー児相が見逃してしまうケースも多いようです。
「虐待死した子どもが住んでいる管轄の児童相談所が『大丈夫だと思った』とか『親が改心したと言っていたから』などと言いますが、児相の職員には子ども時代に虐待された経験がない人もいるでしょうから、虐待している大人の嘘を見抜けないのは当然だと思います。幸せに育った大人は虐待を見破ることは不可能だと私は考えています。そういう大人が虐待に関係する職業についていること自体が怖いのですが、児相に就職できる人間にも縛りがあるので致し方ないのだと諦めています」
ーー虐待を受けた人は、虐待の事実を見抜けますか。
「私たちのような虐待を受けた人間は虐待の臭いがすぐにわかります。買い物途中で見かける親子の表情や行動で、この大人は子どもを傷つけているとすぐにわかります。『虐待されて育った人間は、将来自分の子どもにも同じように虐待する虐待連鎖がある』などと知識人はさも知ったように言いますが、自分が受けた辛い思いを可愛いわが子にさせようとは思いません」
ーーどんな人が虐待する可能性があると思われますか。
「何不自由なく幸せに育った人間が、子どもを持ってから子育ての苦労に遭遇し、自分の時間も取れず夜も満足に眠れず、全てが自分の思うようにいかない生活に直面した時に子どもへの虐待が始まるのではないかと思います。私の継母も幸せに育った人間だったようです」
■子どもはどうすればいい?
ーー子どもが助けを求めるのも難しいでしょうね。
「虐待を受けている子どもは外界に助けを求めることができません。『親の報復が怖い』『優しい時もあるから我慢する』『ずっと虐待されているため、自分から能動的に行動することができない心身状態になっている』『助けの求め方が分からないし、大人は皆怖い人と思っている』などの理由で何もできないのです」
ーーそれでも声を上げるとしたら誰に?
「子どもからは何もできないのですが、もしもできることがあるとしたら仲のいい友達の信用できる親に相談することかなと思います。私は継母にバレるんじゃないかと思って何もできませんでしたが、なぜか近所のおばさんが助けにきてくれたので死なずにすみました。あとは、これもできたらのことですが、近所の交番に助けを求めに行くことかなと思います。世の中に酷い大人がいる限り、かわいそうな子どもがその大人の数だけいるわけですが、なんとかいろんな意味で子どもたちが幸せだと思える世の中になればなと思っています」
2022年6月に改正児童福祉法が成立した。子どもを虐待から守り、子育てに困難を抱える家庭の支援をして養育環境を強化することを目的としている。身近にいる信用できる大人、もしくはお巡りさんに助けを求めるしかない虐待を受ける子どもたち。彼らがSOSを発信したら、あるいは叫び声など虐待の疑いを持ったら、私たち大人は迷うことなく温かい手を差し伸べなければならない。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)