意外に支出が多い「一人暮らし」…気になるみんなの貯金額・平均は871万円 貯め体質になるコツは【FPが解説】
一人暮らしを始めたみなさん、新生活には慣れましたか。いざ暮らし始めてみると、思った以上に支出が多く、「なかなか貯金ができない」と悩んでいる方も少なくないかもしれません。実は貯金は「貯まる仕組み」さえ作ってしまえば無理なく継続できるものです。一人暮らしでも確実に貯金していくためのコツを紹介します。
■一人暮らしの平均貯金額
お金に関することは友人や家族でさえも聞きづらいものですが、そもそも一人暮らしの方は、どれくらい貯金しているものなのでしょうか。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](2022(令和4)年)」のデータを見てみると、平均値が871万円、中央値が100万円となっています。
データや各種統計を確認する際には、平均値と中央値の違いを知っておくことが大切です。
まず平均値とは、データの合計をデータ数で割ることで求められます。例えば、クラスの生徒たちの身長を調べた場合、全員の身長を足して生徒の人数で割ると、クラス全体の平均身長がわかります。
一方、中央値は、データの集まりを小さい順から並べたときに、ちょうど真ん中に位置する値のことをいいます。例えば、10人いる生徒のテストの点数がある場合、点数を小さい順に並べて、真ん中に位置する点数が中央値です。
平均値と中央値は、データのばらつき具合によって大きく変わることがあります。外れ値(極端に大きな値や小さな値)があると、平均値は大きな影響を受ける一方、中央値は、外れ値の影響を受けにくいです。
■【年収別】一人暮らしの平均貯蓄額
年収別による貯蓄額の平均値と中央値をまとめると、以下のようになります。
・収入なし 平均値:334万円 中央値:0万円
・300万円未満 平均値:682万円 中央値:50万円
・300~500万円未満 平均値:796万円 中央値:200万円
・500~750万円未満 平均値:1,988万円 中央値:600万円
・750~1,000万円未満 平均値:3,054万円 中央値:1,283万円
・1,000~1,200万円未満 平均値:4,428万円 中央値:2,154万円
・1,200万円以上 平均値:3,984万円 中央値:3,300万円
上記からもわかる通り、年収が高くなるほど、貯蓄額の平均値と中央値も増える傾向にあります。ただし、年収750万円以上は回答者が少なく、偏りがある点を留意しておきましょう。
■【年代別】一人暮らしの平均貯蓄額
また、年代別で貯蓄額の平均値と中央値をまとめると、以下のようになります
・20歳代 平均値:176万円 中央値:20万円
・30歳代 平均値:494万円 中央値:75万円
・40歳代 平均値:657万円 中央値:53万円
・50歳代 平均値:1,048万円 中央値:53万円
・60歳代 平均値:1,388万円 中央値:300万円
・70歳代 平均値:1,433万円 中央値:485万円
ご自身でも実感されるかもしれませんが、年齢が上がるにつれて貯蓄額も増える傾向にあります。なお、先ほど説明したように、平均値は極端に大きな数値があれば影響を受けるため、中央値が実態に合っていると考えましょう。
■一人暮らしで貯金ができない原因は?
一見すると、自由に使える金額が多そうな一人暮らしですが、思うように貯金ができない方もいます。主な原因として、次の2つが挙げられます。
▽①固定費がかかりすぎる
一人暮らしの人が貯蓄できない理由として、「固定費」がかかりすぎる点があげられます。
固定費とは、毎月一定の支払いが必要な支出を指し、具体的には家賃や光熱費、通信費などがあります。
特に家賃は、都市部か郊外かによって家賃の相場は異なりますが一人暮らしにおいて最も大きな固定費と言えるでしょう。
また、賃貸の場合は2年に一度、更新料を支払わなければならないケースもあります。住まいにかかるお金が大きすぎることが原因で思うように貯蓄できないこともあるでしょう。
また、家賃と並んで電気や水道、ガスなどの光熱費も生活に欠かせない支出です。
実家暮らしなら自分自身ですべての光熱費を負担するケースは稀でしょうが、一人暮らしは全て自分で支払わなければいけません。
家賃や光熱費といった固定費は、一度削減すると大きな節約効果があります。収入に合った固定費になっているかどうか、確認してみましょう。
▽②支出をセーブしてくれる人がいない
支出を制限してくれる人がいないという点も、一人暮らしの人が貯蓄できない理由です。
一人暮らしでは、自分自身で収入と支出を管理する必要があるものの、金銭管理が苦手な場合、衝動買いや無駄遣いをしてしまうことがあります。
例えば、家族がいれば「使いすぎじゃない?」「買い物多くない?」など止めてくれるでしょう。ところが、一人暮らしの場合、自分で支出をコントロールする必要があるのです。
また、家族と一緒に住んでいる場合、「電気はこまめに消す」「水は流しっぱなしにしない」などのルールを決め、家計の節約について話し合うこともあるでしょう。しかし、一人で暮らしていると、こういったことを意識して実行しない限り、なかなか気づかないものです。
そのため、自己管理が苦手な人は、毎月の予算を立てましょう。予算を立てる際には収入と支出を正確に把握し、必要な出費と優先するべき項目を明確化します。また、貯金の目標を設定するとモチベーションも上がりますので、併せて実践してみてください。
■一人暮らしの貯金の目安はどれくらい?
一人暮らしの貯金額は、手取り額の10%を目標にしましょう。
実際に、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2022(令和4)年)」によると、手取り収入からの貯蓄割合は平均で13%となっています。給与が残ったら貯金するのではなく、給与が入ったら先に貯蓄に回すようにしましょう。
特に一人暮らしの場合、病気やケガで休職したときのリスクが大きいです。予期せぬ出費に備えるためにも、少額でも継続的に貯金をすることが大切といえます。
なお、「手取りの10%でも難しい」という場合は、5%を目標に始めるのがいいでしょう。いきなり無理して給与の半分を貯蓄に回してしまうと、貯金できなかった場合にモチベーションが下がり、続けられません。手取りの10%を目安に確実に続けられる金額で始めましょう。
■一人暮らしでも貯金するためのコツ
一人暮らしの方が継続して貯金するための具体的な方法として、以下の2つがあります。
▽適正な家賃の家に住む
まずは、収入に合った適正な家賃の家に住むことがコツです。
家賃は固定費の中でも大きな割合を占めるため、削減できれば家計にも余裕が生まれます。
昔は「家賃は収入の30%以下が目安」とされていましたが、物価が上がっている現在では、30%にすると家計が苦しくなります。
また、住まいに関するお金として管理費や共益費がかかる場合もあります。
管理費や共益費などの費用を含めて、手取りの25%以内におさめると、貯金もできるようになるでしょう。
▽家計を見直す
家計の見直しは、貯金の基本です。
収入と支出を把握することで、無駄な支出や改善の余地を見つけることができます。また、支出を見直す際には「必要な支出」と「無駄な支出」を見極めることが重要です。家賃や光熱費など、生活に欠かせない支出はありますが、その他の費目で節約することができます。
ただし、「何がなんでも貯金をする!」と削り過ぎてしまうと、生活の質が下がり、潤いがなくなってしまいます。収入と支出のバランスを見極めながら、少しずつ貯金をしていきましょう。
特に固定費の見直しは、貯金をする上で大きな助けとなります。固定費は一度見直すだけで節約効果が持続するため、最初に見直すようにしましょう。
例えば、スマートフォンのプランを大手通信会社から格安SIMに見直した場合、月数千円を節約できる可能性があります。
固定費は削ってもストレスが溜まらず、節約効果も目に見えやすいためおすすめです。「どこを削ったらいいかわからない」という場合には、FPなどの専門家に相談してみましょう。
(まいどなニュース/FPオフィス「あしたば」)