耐えられない異臭…軽自動車に詰め込まれた70匹の猫 保護された子猫を迎え「昔は終電帰りもザラ、今は早く帰宅するように」

■軽自動車の中に70匹の猫が!

るぅくん(1歳1カ月・オス)は、群馬県高崎市で保護された。ホームレス生活を送っていた50代の夫婦の軽自動車の中で、多頭飼育されていたという。とうの昔に車検が切れた軽自動車の運転席から後部座席までの間には、約70匹の猫がいた。トランクには猫の遺体も多く積まれていて、共食いも発生していた。夫婦は駐車場のコンクリートの上で寝ていたという。

2022年5月4日、話を聞いたボランティアが駆けつけると、車からは鼻につく異臭が漂っていた。

夫婦の所持金110円。猫達も数日食べていないようだった。猫と夫婦の食べ物を支援しつつ話を聞くと、住まいは福島県郡山市。昨年11月に家賃滞納などで強制退去になり、猫70匹をトラックに乗せて郡山市から喜多方市へ移動した。その時、猫は衣装ケースに入れて運んだため、大半が酸欠死したそうだ。ボランティアは怒りを露わにしないようにして話を聞いた。

12月初旬、夫婦は生き残った猫を軽自動車に乗せて福島に移動し、栃木県、群馬県へと彷徨ったという。その間、車内では何十匹もの子猫が生まれ、ある者は死に、ある者は共食いした。ボランティアは役所や社会福祉協議会、動物愛護センターの立ち合いの元、車内の猫を全部出させて確認した。

結局、全部で成猫が23匹、子猫が29匹いて、猫の形が残っている遺体が18体あった。子猫のうちの1匹だったるぅちゃんは、保護された後、譲渡会に出た。

■この子がうちの子になるんだな

東京都在住の山口さんは、実家にいる時はずっと犬を飼っていて、一人暮らしをしてからも動物と暮らすのが夢だった。物件探しの時も常にペット可物件を探してきた。しかし、その少なさと賃料の高さに一旦断念。アラサーを迎え、金銭的にも余裕ができたのでペット可物件へ引っ越し、猫を迎える準備を整えた。

2022年7月、譲渡会に行くと、同じ多頭飼育崩壊現場出身の猫が3匹並んでいて、その時点でこの子たちのうち1匹をと決めていた。

「私自身が群馬県高崎市の出身で、るぅたちは同じ故郷を持つ猫たちということで、何か運命的なものを感じていました。マンションの都合で、お迎えできるのは1匹のみ。仲の良い彼らを引き離していいのか、3匹の前で十数分悩みました。そんなとき、るぅが『ぴゃっ』と鳴いて私を見つめ、『僕なら一人でも大丈夫だよ』と言っているように見えたのです」

初めて会った時から、目がとても大きくて印象的で、「この子がうちの子になるんだな」という妙な確信があったという。山口さんの希望通り、8月にるぅくんを迎えた。生後4カ月になっていた。

預かりボランティアさんに愛情たっぷりに育ててもらったおかげで、るぅくんは最初から物おじせず、部屋中を冒険した。ごはんも水もトイレも完璧だった。

「我が家にきた1時間後からは私の腕枕で寝ている始末。今でも毎日腕枕で一緒に寝ています。名前は、過酷なところを生き延びたサバイバーということで、ドイツ語名で『光の戦士』という意味のある『ルートヴィヒ』から取りました。ほかにも候補はたくさんあったのですが、最初に返事をしてくれた『るぅ』に決めました」

■ずっと暖かいお家で一緒に暮らそうね

るぅくんは、とても人が好き。山口さんが友人を家に招いても、すぐに懐いて「一緒に遊ぼう」と誘う。友人たちから、「前世は犬なのか?」と言われるほどの懐きっぷりだという。

「実家への帰省時もいつも連れていくのですが、両親にも懐いていて、初日から母とお昼寝をしていました」

また、るぅくんは人の気持ちを読めるようで、自営業の山口さんが家で仕事をして行き詰まっていると、すぐに察してデスクまで来てくれる。

「お腹を見せたり、顔をこすりつけてきたり、『ほら、触っていいよ~』と言っているような気がします」

るぅくんを迎えて、山口さんは、生活のリズムが整ったという。

「るぅをお迎えする前はひとり暮らしかつ自営業ということもあり、お付き合いでお酒を飲みに行くことがよくありました。週のほとんどが終電帰りということもザラだったのですが、現在は早くるぅに会いたくて、すぐに帰ってきます。帰宅時には必ず玄関先までお迎えに来てくれますし、23時になるとベッドに私を誘導して寝かしつけてくれます」

「これからのニャン生はずっと暖かいお家で一緒に暮らそうね。一分一秒でも長く、あなたと一緒に過ごせるよう願っています」山口さんは、そうるぅちゃんに伝えていきたいそうです。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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