しつこい油汚れが、水を流すだけできれいに!?東大阪の会社が開発した「不思議なお皿」 洗う側から「洗われる側」の改良へ…節水の発想転換
しつこい油汚れが、水を流すだけできれいに落ちる。テレビショッピングで、よくあるセールストークではない。実際に水道の水を流すだけで汚れを落とし、除菌もできる技術が、大阪府東大阪市のデザイン会社で開発された。
■来るべき水不足に備えて発想を転換
東大阪市といえば、NHK朝ドラの舞台にもなった「ものづくり」の町で、独自の技術を開発する企業も少なくない。その東大阪市で、またひとつ画期的な技術が開発された。
それが、洗剤やスポンジを使わず、水道の蛇口から流れる水だけで汚れが落ちるお皿だ。開発したのは、町工場からスタートしたというデザイン会社のDG TAKANOで、CEOの高野雅彰氏は「そもそもの発想は、近い将来に訪れる水不足の解消に役立ちたいことでした」と語る。
DG TAKANOは、過去には蛇口に取り付けるだけで最大95%の節水効果があるというノズル「Bubble90」を開発した。
洗う側・洗われる側でいうなら、こんどは洗われる側のお皿に着目したという。
「弊社は金属の切削加工技術に優れた会社なので、通常であれば蛇口とセットになるシンクで節水効果を出せないかを考えるんですけれども、今一度視野を広げて、蛇口で水を流すだけで汚れが落ちるお皿があれば、もっとしっかり節水できると考えました」
膨大な試行錯誤を繰り返し、開発に5年をかけて完成したのが洗剤不要のお皿4点セットだ。
ベースになるお皿は磁器製品で、表面に特殊な加工を施して、汚れが落ちやすくなっている。詳細は当然ながら企業秘密とのことだが、イメージとしては、図の下段のように汚れとお皿表面の間に水が入り込んで、汚れを浮かせる。つまり界面活性剤が要らないので、洗剤を使う必要がないのだ。
「これまでの食器洗いの常識だった、スポンジに洗剤をつけて、お皿を洗って、水ですすいで、スポンジの泡を洗う工程が、蛇口をひねるだけの単純作業になったのです」
たんに「汚れが落ちやすい」を謳う他社商品はあったが、洗剤とスポンジで擦り落とすことが前提だった。しかしDG TAKANOが開発したお皿は、水を流しながら指先で軽く撫でるだけで汚れが落ち、除菌効果もあるという。
筆者が実際に体験した感触では、食器洗浄機に入れる前の「予洗い」ていどの水量で汚れが落ちた。少量の水で「洗い」と「すすぎ」が同時に行える印象だ。
■環境負担をかけずに水不足の解消に寄与したい
「近い将来、人類が直面する問題に、水不足があります」という高野氏。
高野氏の調べによると、インドのニューデリーでは朝夕の1日2回しか水が出ないという。
「2040年には、本当に深刻な状況になるといわれています。これに対する解決策のひとつは、供給量を増やすこと。海水から真水をつくる技術はすでにあるのですが、それは環境負荷を上げてしまいます。だから節水ですね。使う量を減らそうと開発したのが『Bubble90』でした。これは節水しながら、水圧のエネルギーだけで、半導体の洗浄にも使われている技術を初めて無電力で実現しました。そして今度は『洗われる側』のお皿にも節水効果をもたせようと考えました」
世界的な水不足問題の解決に役立てば、SDGsにも貢献できると高野氏はいう。
ものづくりの町・東大阪から生まれた技術が、水不足を解消する一助になる可能性を秘めている。
ただ、このお皿にも弱点はある。表面に施された加工は、やや熱に弱いという。
記者発表の席で同社のスタッフに伺ったところ「数年経つと、効果が弱まるかも。でも、もっと持続させるように、技術はこれからも進むはずです」とのこと。
今後はカトラリーやフライパンなどにも、バリエーションを広げていきたいそうだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)