極度に怖がりのミックス犬 4年半を過ぎて取り戻した人間への信頼 「散歩に行きたいよ!」とスタッフにおねだり
「森林と清流のまち」として知られる北海道・遠軽町。自然豊かなエリアですが、この地の美山という場所で、他の2頭と一緒に保護されたミックスの元野犬のメスのワンコがいます。その名はユッカ。推定5~7歳ほどのワンコでした。
保護したのは北海道を拠点に動物の保護活動を行う、認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会(以下、しっぽの会)。行き場を失ったワンコや、殺処分対象となったワンコを引き取り、新しい飼い主へと譲渡する活動を行う団体です。
■同時に保護した2頭に比べ極度のビビリ症
しっぽの会のスタッフはこれまでに数多くのワンコを保護してきました。これらの経験からユッカを見ると、どうも完全なる野犬ではなく、もともとは飼い犬で、元飼い主の都合で捨てられたワンコであることが推測されました。
同時に保護した他の2頭は順応性があり、人間ともすぐ馴染むことができたため、比較的早めに新しい飼い主の元へ巣立つことができましたが、ユッカだけはどうもダメ。
ユッカの近くを人が通るだけで怯え、いつも部屋の隅っこにいる状態です。結果しっぽの会に来てから丸2年間も保護施設の外に出ることができませんでした。
■4年を経て、ユッカが再び人間に心を開いてくれた
そんなユッカの性格やペースを前に、しっぽの会のスタッフは慌てずに慎重にユッカに接するよう心がけました。日々の人馴れトレーニングや散歩も少しずつ行うように接しました。
ただし、それは決して容易いことではありませんでした。散歩に行く際も敷地外に出れば、見慣れないこと、聞き馴れない音を感じるたびにユッカはその都度パニックを起こします。ひどいときは、散歩中、スタッフが立ち止まっただけで「何ごとかー!!」と、大暴れすることまでありました。
しかし、ここでスタッフはめげません。慎重に慎重に、根気強くユッカが環境に馴れてくれることを信じ、ユッカと一緒に日々を過ごしていきました。
ようやく4年の月日が経過した頃、ユッカに変化が感じられるようになりました。散歩中にも自然に用を足せるようになり、草木の匂いを嗅ぐ仕草も見せてくれるようになりました。もちろん、見慣れぬスタッフにも以前ほどの警戒心を抱かずに接することができるようになりました。
4年半を経過した頃には、ユッカ自身が自分の要求をスタッフに伝えるようになり、「散歩に行きたいよ!」といったアピールも出来るようになりました。スタッフは、ユッカが失った「人間への信頼」を再び取り戻してくれたように感じ、これまでの努力が報われたような気持ちになりました。
■ユッカを第一に生活してくれる里親さん募集中
同時に保護された他の2頭に比べれば、随分と遅れを取ってしまったユッカですが、保護されてから6年の月日が経過した2022年、やっと新しい里親さん募集をかけることになりました。
保護当時は、推定5~7歳でしたが、2022年で11~13歳になり、犬としては高齢にあたる年齢です。また、だいぶ心を開いてくれるようになりましたが、臆病な性格が変わらずで、初めての物事や場所では緊張して逃げ出そうとする行動をとることもあります。
これらユッカの年齢、性格などから、新しい里親さんへのマッチングのハードルは確かに高くも感じます。しかし、本来のユッカは散歩や遊ぶことが大好きで、そして人間自体も嫌いではないワンコです。こういった事情を全て受け入れてくれ、ユッカを第一に生活をしてくれる里親希望者さんがいれば、前向きに譲渡を考えたいとスタッフは言います。
ユッカとスタッフが努力を重ね、少しずつ心を開いてくれるようになりました。いつか信じることができる優しい里親さんと巡り合い、幸せな第2の犬生へとつながることを祈るばかりです。
認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会
https://shippo.or.jp/
(まいどなニュース特約・松田 義人)