包丁で刻むキャベツが、フライパンの炒めものが…宙に! 鮮やかな手付きで料理する「くま」インスタが大人気 投稿者の主婦に聞いた制作の舞台裏
今、Instagramのフォロワー数9.5万人という「くま」がいる。静止画と動画の中で、熊のぬいぐるみが「オレメチャカワイイネン!!!!!!」「オレヤッパリカワイイネン!!!!」「ムカシノオレモカワイイネン!!!!」と、大阪弁を操りながら料理をつくる愛らしい姿が人気だ。
投稿者の「くまのママさん」に、制作秘話を聞いた。
■食材もフライパンもすべて本物を使って撮影
Instagramで「くま(@ku.ma2088)」にアクセスすると、熊のぬいぐるみが料理をつくっている静止画や動画がたくさん投稿されている。投稿主は「くまのママさん」(以下、ママさん)。大阪府東大阪市在住の主婦だ。
「この子の名は、そのまま『くま』です」
「くま」が自ら包丁を使い、まな板の上で食材を切ったりフライパンを振ったりしているパペットアニメーションが、楽しくて可愛らしいと人気になっている。カクカクした動きが、可愛らしさを倍増させているのかもしれない。そして大阪弁のキャプションは、あたかも「くま」自身が書いているような雰囲気を醸している。
「食材も道具類も、この子(くま)用に小さくしているのではなく本物です。コンロにも、本当に火が入っているんですよ」
「撮影は意外に簡単で、少しずつ動きをつけながら、1回分で150~200枚くらいの写真を撮ってからつなぎます」
難しいのは、食材が宙を舞う瞬間を狙うことだという。
ママさんが撮影に使う機材は、静止画がパナソニックLUMIX、動画はスマートフォンだ。キャベツの千切りが宙を舞うカットは、LUMIXの4Kフォト(秒速30コマ連写)を使う。
「くまに包丁を持たせて、あらかじめ切っておいたキャベツを包丁にセッティングします。シャッターを切り、急いでカメラの死角に入って、包丁を振り上げた拍子にキャベツが舞うように動かします」
その連写の中からキャベツが美しく舞っている写真を選ぶのだが、「くま」の目線がキャベツを見ていなかったり、ママの手や頭が写っていたりするため、納得できるカットが撮れるまで微調整を繰り返すそうだ。
■「くま」との出会いはスーパーのポイントシールが溜まったから
ママさんと「くま」が出会ったきっかけは、スーパーのポイントシールだった。
「8年くらい前だったかな、スーパーでポイントシールを集めたら、ぬいぐるみが買える企画をやっていたんです。ぬいぐるみが欲しくてシールを集めたわけじゃないんですけど、自然に溜まってきたから買ってみたんです」
しばらくは自宅のソファに放置されていたそうだが、ママさんがパン屋を開店することになって、お店のマスコットにした。その後お店を閉めたとき、何もしていない時期があったという。そんなママさんを見て、娘さんがInstagramのアカウントをつくって「くまの写真をあげていったら?」と勧めてくれた。
「はじめは投稿の仕方もよく分かっていなかったんですけど、1日1枚ずつInstagramにあげていたんです。やっているうちに楽しくなってきて、もっとたくさんの人に見てほしいという欲が出てきて(笑)」
たくさんのフォロワーがいる人は何を投稿しているのかなと考えて、自分なりに分析したというママさん。出した結論が、食べ物だった。
「食べ物はウケがいいなと思って、私がつくった料理を、この子が食べる設定はどうかなと。『ママの料理をボクが食べるんだ』というホワッとした感じにしていったら、見てくださる人が増えてきたんです」
やがてコロナ禍で外出が憚られるようになり、自宅にこもる時間が増えた。そこで「くま」に、1人で料理をさせてみようと考えた。
「ただ包丁を持ったり、フライパン持ったりしているだけでは面白くないと思ってね」
しかし、撮り方がよく分からないため、なかなか実行に移せないでいた。
「ある日、親子丼をつくって、最後の仕上げに三つ葉をのせようとしたときに、くまの手にのせていた三つ葉がポロっと落ちたんです。それはハプニングだったんですけど、あたかもこの子の手から三つ葉をのせているような、躍動感のある写真が撮れたんですよ。私には、ひとつの発見でしたね」
「くま」を動かさなくても、周りを動かしたら躍動感がある写真が撮れることが分かった。それからは工夫を重ねて、前述のようなキャベツの千切りを宙に舞いあげるワザを使えるようになったそうだ。
■撮影はほぼ毎日の午前中
ママさんは、写真もアニメも、とくに勉強したことがないという。
「やってみたらできたという感じで、すべて自己流です」
最近の動画では「くま」がサンドイッチをつくっていて、パンを切る工程がある。
「少し切っては1枚撮って、もう少し切ってはまた1枚撮ってという感じですね」
通常、アニメのコマ数は1秒間に24コマといわれているが、ママさんの動画はコマ数が一定ではない。
「頭の中で動きをイメージしながら撮っているだけで、コマ数はとくに意識したことがないです」
撮影に慣れてくるにしたがって、さらに細かい工夫もできるようになった。
「耳がパタパタ動くのが可愛いっていわれるんですけど、たまたま私の手が当たって、耳が倒れたことがあったんです。見返してみたら意外に可愛かったから、今ではわざと動かしています」
撮影はほぼ毎日、ダイニングのテーブルをスタジオ代わりにして行われる。
「だいたい朝8時過ぎくらいから始めて、上手く撮れたら12時頃に終わっています」
以前は毎日投稿していたが、最近は少し間を空けることもあるとか。
「動画の中でつくる料理は身近な食材を使って、誰もが真似できそうなものを、頭を振り絞って考えています」
フォロワー数は、いつの間にか9.5万人にもなっていた。近く出版の予定もあって、企画が進んでいるという。
どうか息切れしないように、マイペースで続けてほしい。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)