飼い主が行方知れず 「死んでいる」と勘違いされた毛むくじゃらの犬 やせ細った体には重い心疾患があった
2023年春、九州のある高齢者宅に1頭のワンコが置き去りにされました。名前はダイちゃん。推定13歳ほどのオスです。
ダイちゃんの飼い主は家賃を滞納したまま連絡が取れなくなりました。部屋を確認した家主が「犬が死んでいる」と移動火葬車に連絡しました。しかし、移動火葬車が到着し、確認したところ、なんとワンコは生きていたのです。
置き去りにされたダイちゃんは全くケアをされていなかった様子で、毛が全身をおおい、どこかが顔なのかわからないほどでした。しかし、「死んでいる」と判断するのは明らかに早合点で、もしそのまま火葬されていたらと想像すると本当に恐ろしいことです。
■伸び切った毛
ダイちゃんの話を聞きつけ、一時的に引き取ることにしたのが北九州小倉のドッグサロン、フォレスト。同サロンのスタッフは事前に「死体と間違われた犬」と聞いていたので、さぞ元気がないワンコを想像して引き取りに向かったと言いますが、実際に対面したダイちゃんは、「ちぎれるんじゃないか」と思うほどに尻尾を振りまくり、スタッフに駆け寄ってきました。
その様子に胸が苦しくなる思いがしたスタッフでしたが、悲しんでばかりもいられません。連れて帰り、その毛だらけの体をきれいにしてあげることにしました。毛は複雑に絡まり固まっており、バリカンの刃がなかなか入らないほど。苦心して全身を覆っていたガチガチの毛玉の鎧を剥ぐと、クリクリしたお目めのかわいい表情のワンコが出てきました。
全身を覆っていた毛は、「もう1頭ワンコがいるのか」と思わるような量。本来のダイちゃんは、ガリガリに瘦せ細っていました。
■心ある人たちの連携で保護団体が引き取ることに
フォレストのスタッフは、同サロンでの預かりも検討しましたが、キャパシティや先住犬とのことを考え、懇意の動物保護チーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)に連絡をし、同団体にダイちゃんを預けることにしました。
はぴねすのスタッフは小さな命を助けてくれたフォレストスタッフに感謝し、快くダイちゃんを迎え入れ、お世話することにしました。引き取った後すぐに動物病院にダイちゃんを連れていきましたが、健康診断の結果、心臓に重篤な疾患があると聞かされました。
■安心しきった表情で体を預けるダイちゃん
病名は「僧帽弁閉鎖不全症」。こんな大変な病気を抱え、ひとりぼっちでご飯も満足に食べずに過ごしていたダイちゃんを思うと、胸が張り裂けそうになるスタッフでしたが、同時にすべき処置とケアを徹底しました。その思いが通じたのか、ダイちゃんを抱っこすると、安心しきった表情で体を預けてくれるようになりました。
そんな日々をおくっていましたが、ダイちゃんの持病などを全て理解した上で「迎え入れたい」という優しい里親希望者さんが現れました。ダイちゃんはこの方の家庭に譲渡されることとなり、見事第2の犬生を迎えることになりました。フォレスト、はぴねすのスタッフは皆で、ダイちゃんの幸せな生活をおおいに喜び、そしてダイちゃんのようなワンコを、これからもサポートしていきたいと気持ちを新たにしました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)