認知症の高齢夫婦の多頭飼育崩壊から救われた黒猫 トライアル失敗も運命の家族に出会う「バランス良いご飯をいっぱい食べてね」

■劣悪な多頭飼育崩壊の現場からレスキュー

ほたるくん(1歳半~2歳くらい・オス)は、多頭飼育崩壊の現場から保護された。2022年6月、多頭飼育崩壊が起きた千葉県の高齢夫婦の家に近所の個人ボランティアがレスキューに入り、認知症の奥さんと夫を何度も何度も説得して、保護したという。

高齢夫婦の家はゴミ屋敷で、フン尿が堆積する劣悪な環境だった。その家にはエアコンもなく、窓は閉めっきり、キャットフードではなく卵豆腐やはんぺんなどを食べさせていたという。

「病気をしてもや動物病院に連れて行ってもらってなかったと思います。ほたるは子猫時代にひいた風邪の菌が、治療されなかったため残ってしまい、目がよく涙目になります」

■ホームページから消えた黒猫

東京都在住のKさんは、YouTubeで人気の「もちまる日記」がきっかけで「スコティッシュフォールドって可愛いな」と思い、猫を飼いたくなった。その後、さまざまなYoutubeを見て保護猫のことを知った。

「ペットショップに行っている場合ではない、命を買ってはいけない、保護猫を迎えたいと思い、近くで開催されている譲渡会を探しました」

Kさん夫妻は犬は飼ったことはあったが、猫は初めて。譲渡会の前に保護猫について知るために、保護猫カフェ「ネコリパブリックお茶の水店」へ行った。

「まず驚いたのが脱走防止ドア。3回開けないと猫の部屋に行けないことでした。部屋に入って座ったらすぐに膝に乗ってきた黒猫がいました。とても人懐こい猫で、その後、何度かその黒猫目当てにお店に行きました。でも、譲渡型店舗のため、他のお客さんのトライアルの申し込みが入りいなくなってしまいました」

夫妻は「黒猫ってなんだかいいよね」と思い、行ける範囲内の譲渡会を探し、「ゆめネコ譲渡会」のホームページでほたるくんを見つけた。「そこには保護主さんの膝に乗っている写真と抱っこされている写真が掲載されていて、顔は似ていませんが、『ネコリパブリックで出会った黒猫だ』と思いました。すぐに譲渡会に行こう!となったのですが、なぜかすぐにホームページからほたるの写真が消えていました」

きっと話が決まってしまったのだなと思ってがっかりした夫妻。その後1ヶ月くらい、いろいろな譲渡会を見たが、ほたるくんのことしか考えられずにいた。

「でも、8月に、ゆめネコ譲渡会のホームページにほたるの写真が再度アップされていたのです。すぐに保護主さんに、ほたるに会いたいとメールを送りました」

再度ホームページに写真がアップされたのは、トライアルが決まったものの、行った先の先住猫と相性が合わなくて戻ってきたということだった。

譲渡会に行くと、そこには写真で見たままの 目がキュルンキュルンの人懐こい猫がいた。夫妻は、保護主に玄関の脱走防止柵の写真を見てもらい、ほたるくんへの思いを伝えて帰った。

何人かほたるくんへの申し込みがあったようだったが、玄関の脱走防止柵とほたるくんへの思いが決め手となったようで、ぜひトライアルにと連絡があった。

「ネコリパブリックで脱走防止のドアを見て、時間をかけて柵を作ってよかったなと思いました」

■お膝大好きで甘えん坊

初日は、保護主が家に連れてきてくれた。ほたるくんは、キャリーから出るとすぐにくつろぎ、遊んでいた。しかし、保護主が帰った途端、ほたるくんのパニックが始まった。家じゅう走って飛び回った。

「落ち着いてきたらケージの裏に籠城していました。もちろんフードも食べずにいましたが、翌日には現実を受け入れたのか、少しずつ私達に慣れていってくれました。環境の変化への対応がめちゃくちゃ早いなと思いました」

名前は、預かりさんが付けた名前だ。夏に助けられたから夏っぽい名前で「ほたる」にしたそうだ。ひらがなの「ほたる」がすごくピッタリな感じだったので変えなかった。

ほたるくんは、お膝大好きで甘えん坊。一緒に寝るのも好きだが、抱っこは苦手だった。

「イタズラしたり噛んできても、膝に乗られたら全てを許してしまいます」

夫妻の暮らしは、猫ファースト、ほたるファーストに変わった。長時間家を空けなくなった。

「外食していても気になって、早く食べて家に帰ろうよとなります。いつも猫が快適に過ごせるように温度湿度計をしょっちゅう見るようになりました」

夫妻は、多頭飼育の家で苦労したほたるくんに、バランスの取れた良質なフードをずっと食べてもらいたいと思っている。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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