雪のように真っ白な元野犬は人間嫌い 来る日も来る日もスタッフは話しかけた「ここは悪いところじゃないよ」「怖くないよ」
北海道紋別郡にある滝上町エリア。これまでに数々の映画のロケ地にもなった風光明媚なエリアです。この美しい自然に囲まれた滝上町では近年、犬猫にまつわるある問題を抱えていました。それは、野犬や野良猫への無責任な餌やりなどによって繁殖がすすむというもの。餌を与えられる犬猫にはいっさいの罪はないのに、結果的に殺処分などが行われることだけは避けなければいけません。
この事態に向き合ったのが認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会(以下、しっぽの会)。北海道内の保健所や市役所の自治体から行政処分される予定であった犬猫を引き取り、新しい飼い主を募集し譲渡活動を行っている団体です。
2022年秋口のある日のこと、しっぽの会では滝上町エリアで問題となっていた野犬の母犬から生まれた8頭を保護。各ワンコにきちんとお世話をし、それぞれに新しい里親さんへと繋ぐことにしました。
■性格に差はあれど、兄妹ワンコの共通点は極度のビビリ
スタッフによれば、滝上町エリアにいる野犬は人間に不慣れでビビリが多いといいます。しっぽの会が保護した8頭もやはり人見知りが激しく、知らない音を聞いたり、知らない物を見ると、パニックを起こす犬ばかりでした。
比較的早い段階で里親さんが見つかり巣立っていった1頭を除き、しばらくしっぽの会でお世話することになったのはメルティ、マキア、シェカ、チロル、ジャン、ロイズ、ガナッシュという7頭。のんびりしていたり、動きが活発だったりといった性格の違いはあれど、共通するのはビビリが激しいということ。
不安感から吠え続けるワンコ、人間よりも他のワンコと遊ぶことが大好きなワンコ、臆病でなかなか心を開いてくれないワンコ、緊張のあまり脱糞してしまうワンコなど。メルティもそのうちの1頭でした。
■少しずつ心を開いてくれるようになった
メルティは、雪のように真っ白な長い毛と大きな身体が特徴の推定7カ月のオス。穏やかそうな表情から人間とのコミュニケーションに長けていそうにも感じますが、実際は人間が苦手で、特に知らない人に心を開くことはなく、ちょっとした音や人間の動きに過敏に反応し、その都度パニックになっていました。
そんなメルティを前にして、しっぽの会のスタッフは慎重に接し、「ここは悪いところじゃない」ということを知ってもらい、安心して心を開いてくれるよう心がけました。来る日も来る日も、「大丈夫だよ。怖くないよ」と声をかけながら、メルティに寄り添い、それまでの生活とは違う安らぎを与えようと努力しました。
すると、保護から数カ月ほどが経過した頃から、少しずつ心を開くようになり、スタッフにも尻尾を振って接するようになりました。しっぽの会の施設にあるドッグランでは、元気に駆け回るようになりました。
また、自然への適応力にも長けており、例えば冬場に雪が積もっていたり、強風が吹いているときでも、メルティは遊ぶ姿を見せてくれるようにもなりました。
この点は、元野犬というバックボーンがなせる技なのか、それともメルティに備わった能力なのかはわかりませんが、その姿は実に逞しくそしてかわいらしいもの。
人間と一緒に生活することができ、なおかつ自然環境にも平気ということになれば、早い時期に新しい里親さんへのマッチングが実現できるだろう、と期待に胸を膨らませるスタッフでした。
■メルティと常に行動を共にしてくれる里親さん募集中
メルティは現在新しい里親さんを募集しています。ひとたび心を開いてくれればパートナーとして申し分のない性格のメルティですが、一方で、パニック癖が完全になくなったわけではなく、何か予想だにしない場面に遭遇した際は、脱走や逸走の危険もあります。
このため、メルティと常に行動を一緒にしてくれ、なおかつメルティにストレスがかからないよう、慌ただしくなく落ち着いた家庭の里親さんが望ましい、とスタッフは言います。
まだ生後1年にも満たないメルティですので、この先10年以上生活を一緒にしてくれる里親希望者さんがいたら、ぜひ以下のしっぽの会にアポイントをとってみてください。メルティがあなたとの出会いを待ち望んでいるかもしれませんよ。
認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会
https://shippo.or.jp/
(まいどなニュース特約・松田 義人)