「助かる見込みはない」と獣医師に告げられたが…保護した子猫「拡張型心筋症」から生還!「猫の生命力は本当に侮れない」

猫の心臓病は重篤にならないと症状が出にくく、早期発見が難しい。だが、kuruma3013さん宅のかつらくんは子猫の頃に拡張型心筋症を発見でき、命を紡ぐことができた。

「子猫ではあまり例がない病気だったようで、動物病院の先生方も困惑していました」

■中学校で保護した子猫が「拡張型心筋症」を患っていた

かつらくんとの出会いは、2021年9月のこと。近所の方から「娘が同級生たちと、校庭にいる猫を保護しようとしているが、猫のことが分からないので来てほしい」と言われ、中学校へ。

「娘さんは猫アレルギーで、同級生たちも飼えないようでした。保護した子猫は衰弱していましたが、元気になれば里親さんを見つけられるだろうと思い、引き取りました」

しかし、保護後2日ほど経った頃、飼い主さんはかつらくんの呼吸に違和感を覚えた。そこで、動物病院で超音波検査をしてもらうことに。すると、心臓が膨張し、胸水が溜まっていることが判明する。

「その病院の設備では病名の断定ができなかったので、画像診断に長けている先生を紹介してもらい、隣県の病院へ行きました」

そこで告げられたのは、拡張型心筋症だという事実。拡張型心筋症とは、心臓の筋肉が何らかの原因で薄くなり、心臓の収縮力が低下する病気のこと。獣医師からは、子猫の拡張型心筋症は珍しく、すでに症状が出ているため、助かる見込みはないと告げられた。

「亡くなったら、後学のために心臓を提供してほしいと言われるほどでしたが、奇跡を信じてやれるだけのことをやるしかないと。猫も人も命の重さは同じ。もし、これが自分の子どもだったら難しいと言われても諦める人はいないと思います」

当時、かつらくんは呼吸が荒く、ぐったりとした様子。心臓から血液がうまく循環せず、うっ血肝も起こしていた。症状は日が経つにつれ、悪化。飼い主さんは、すぐに酸素ボックスをレンタル。病院では何度か、胸水の吸引を行った。

「体重が1kgほどなのに、胸水が120cc抜けた日もありました。吸引はかつらくんにとってかなり苦しいものでしたし、見ている私もつらかったです」

一説によれば、拡張型心筋症はタウリンの欠乏が原因であると考えられているため、タウリンや強心剤、利尿剤も投与されたそう。

かつらくんは貧血も見られたが、それはヘモプラズマ感染症(※猫赤血球への病原体の寄生によって赤血球が破壊され、溶血性貧血が発生する疾患)が原因であると判明したため、その投薬治療もスタート。

血液検査によって、主に肝臓で作られるアルブミン値が低かったことを知ると、飼い主さんは胸水が少しでも溜まらないように、アルブミンが多く含まれる生肉(主に馬肉)を与えたそう。

こうして病院と連携し、工夫を凝らしながら、かつらくんの闘病をサポートし続けた結果、心臓の膨張はほぼ正常に戻り、拡張型心筋症は寛解。やがて、かつらくんは酸素ボックスから出て、他の猫と遊べるまでに。

だが、飼い主さんの頭には再発の心配が。そこで、里親を探すことはやめ、かつらくんを正式な家族として迎えることに決めた。

■寛解後は意外とわんぱくな性格だったことが判明!

現在、かつらくんの体調は服薬や定期健診も必要ないほど、落ち着いている。1年前に去勢手術をする時は心配だったが、心臓に影響が出ないよう、獣医師と麻酔の種類を相談し、無事に乗り切ることができた。

「今でも呼吸は毎日、気にしていますが、酸素ボックスに入っていたことが信じられないぐらい回復しました。心臓病から生還した猫とは、誰も思わないほどです」

病気の寛解後は、おとなしいと思っていたかつらくんの本性を知った。実は、飼い主さんが思っていた以上に、わんぱくな性格だったのだ。

「かっちゃんって呼ぶと、犬のように走ってきて膝に乗ってくれます。同居猫には遊びを仕掛けるものの、加減を知らないので、メス猫からは特に嫌がられています(笑)」

愛嬌がある前髪のような模様、色々な表情をしてくれるところ、すぐ爆睡する無邪気さなど、かわいいところは挙げればきりがないほどある。

飼い主さんは、そんな微笑ましい姿にクスッとさせられる幸せな時間があることに、大きな喜びを感じているのだ。

「かつらくんの治療には高額な医療費がかかりましたが、保護するきっかけをくれた中学生の親御さんが『保護はできないけれど、できることをする』と、資金の支援をしてくださり、本当に助かりました。かつらくんを通して素晴らしい方と巡り会えたことに、今も感謝しています」

そんな心が温かくなる縁も得た飼い主さんは同じく、拡張型心筋症の愛猫を支えている飼い主さんにエールを送る。

「猫の生命力を信じて諦めないで欲しい。自分で情報を得ながら、先生と2人3脚で治していく気持ちは大切だと思います。私は、そういう先生に出会えたことが大きかったです」

また、心臓病に限らず、様々な病気を早期発見するためには些細な違和感を見過ごさないことが大切だと語る。

「私はいつも、どの子に対しても、普段との違いがないか気をつけ見ています。飼い主さんや保護主さんにしか分からない違和感は、どんな些細なことでも気のせいと片付けず、すぐにかかりつけの病院に行ってほしいです」

元気に鼓動を刻みながら日常を謳歌する、かつらくん。そのニャン生を知ると、我が家の愛猫の守り方も考えたくなる。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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