多頭飼育崩壊から救出された犬は重度の貧血 大学病院の診断は「不治の病」 全国からの篤志に支えられマーチはきょうを生きる
北海道西部にある空知総合振興局管内にて、多頭飼育崩壊で緊急保護された25頭のワンコがいました。このうちの1頭で、推定8~10歳のミックス犬のメスのワンコ、マーチは、保護当初から著しい食欲不振で、明らかになんらかの病気を抱えている様子でした。
■食欲不振で重度の貧血。大学病院で下された診断結果は…
マーチを保護したのは北海道を拠点に動物の保護活動を行う、認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会(以下、しっぽの会)。行き場を失ったワンコや、殺処分対象となったワンコを引き取り、新しい飼い主へと譲渡する活動を行う団体です。
マーチの前述の様子から保護後、すぐに動物病院に連れていき検査してもらったところ、重度の貧血がみられました。すぐに輸血や投薬治療を行いましたが、ヘモグロビンの数値が下がってしまいます。骨髄の病気などが疑われたため後日、大学病院で骨髄検査も受けましたが、そこで下された診断結果は、「非再生性免疫介在性貧血」というものでした。
■投薬治療、輸血などを含めたお世話をすることに
「非再生性免疫介在性貧血」は自己免疫疾患の1つで「不治の病」とも言われるものです。骨髄中の赤血球の基になる細胞が何らかの障害を受けることにより、重度の貧血を生じる病気です。主な症状として食欲の低下、体重の減少、疲れやすい、口腔内の粘膜などが白っぽくみられることがあります。主な治療法はステロイドなどの免疫抑制剤の使用や輸血などですが、原因不明のため予防することが出来ず、まだまだ研究が必要な病気のため完治も現段階では難しいとされています。
重篤な持病があることがわかったマーチですが、獣医さんおよびしっぽの会のスタッフはその命を守ろうと、投薬治療を続け、ヘモグロビン数値が低すぎる際は輸血をするなどのお世話をすることにしました。また、なかなかご飯を食べてくれないマーチに対し、様々な医療食を試し続けました。
一時、体重が4kgまで落ちてしまい、かなり痩せ細ってしまったマーチですが、シニア犬向けの総合栄養食を気に入り食べてくれるようになってからは、体重が少しずつ戻り、7kgを超えて体力も少しずつ健康状態に近づいていきました。
■治療を経て、散歩への意欲も増すようになったマーチ
マーチは現在もなお、輸血などの医療ケアを続ける必要がありますが、それでも一時の危険な状態を乗り越えました。スタッフによると、前述のような総合栄養食などは、全国の支援者からの寄贈などに支えられており、多くの人々からの温かい気持ちに本当に感謝していると言います。そして、今後もマーチの命を支え続けるため、ぜひとも支援の力を差し伸べてほしいとも言います。
現在、マーチは現在は経過観察のため、日中は保護施設で過ごし、夜にはしっぽの会のスタッフの自宅で過ごしています。以前は外に出ても用を足すのみで、あとは玄関前から動こうとしませんでした。しかし、最近は散歩への意欲が増し、徐々に外出時間が伸びて、マーチ自身も日々の生活を楽しんでいるようです。
健康体ではないことからか、どこか臆病なところがあるマーチですが、馴れている人間には尻尾を振って積極的にコミュニケーションをとろうとするかわいいワンコです。今後マーチの体調がさらに良くなり、本来の明るい性格がもっと出せるようになることを願うばかりです。
認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会
https://shippo.or.jp/
(まいどなニュース特約・松田 義人)