譲渡期限切れ、このままでは殺処分 保護された野犬が預かりスタッフに心を開くまで 「待て」や散歩、できることが増えてきた
動物愛護センターには常時多くのワンコが収容されています。個々の出自、性格、年齢、健康状態などはまちまちで、若く、穏やかで、健康なワンコから先に引き出されていく一方、なんらかの問題を抱えるワンコはなかなか引き出されないこともあります。センターのキャパシティの問題などから、そういった引き出されないワンコには「譲渡期限」というものがあり、これを過ぎると「殺処分」されてしまうこともあります。
こういったワンコたちを、一頭でも多く保護する団体があります。岡山県のNPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)という団体です。
2022年11月、同団体が引き出したマミィという推定4歳のメスも「譲渡期限」が切れてしまった1頭でした。
■元野犬なのに他のワンコも苦手な物静かな性格
マミィは当初、センターから一定の条件のもと直接里親希望者さんへと譲渡する「特別譲渡」対象のワンコでした。しかし、相応しい里親希望者さんが現れず、「譲渡期限」が切れてしまい、そこでしあわせの種たちのスタッフが引き出し、お世話をしながら新しい里親さんを探すことにしました。
マミィは元野犬で人間に不馴れです。人間の前では怖がるばかりで、センターでは「私はいませんよ」と自分の存在を隠そうとする姿も見受けられました。また、元野犬の多くは、人間が苦手でも他のワンコとの触れ合いは大好きなものですが、マミィの場合は他のワンコも苦手で、かなり物静かな性格のようです。
そんな繊細なマミィを引き出したしあわせの種たちは、まず預かりスタッフさんの家で一緒に過ごし、マミィが心を開いてくれることを待つことにしました。
■スタッフの家で少しずつ心を開いていったマミィ
預かりスタッフさんの家に来た当初、マミィはほどんどの時間をクレートのなかで過ごしていました。そして、やはり怯えるような目で預かりスタッフさんを見ています。
預かりスタッフさんは、そんなマミィに対し、ペースを乱さないよう慎重にそして優しく接するよう心がけました。
約1カ月ほどが経過したころ、少しずつ心を開くようになり、クレートの外に出てきてくれるようになりました。預かりスタッフさんの家には、マミィが苦手な他のワンコも暮らしていますが、こういった先住犬たちとも次第にコミュニケーションを取るようになりました。
■布団が好き過ぎて、布団の上でオシッコしてしまう
マミィが心を開いてくれるようになり、わかったことがあります。マミィは布団など、フカフカのものが大好きで、気付くと布団やソファの上で過ごしていることがあります。預かりスタッフさんは、そんなマミィを見て微笑ましく思いましたが、しかし、布団が好きすぎるがあまりの問題も起こりました。
布団が大好きすぎて、マミィはトイレも布団の上でしてしまうようになったのです。これはいけません。
預かり当初はちゃんとトイレシートの上でできていたし、散歩のトレーニングを始めた頃は外でもちゃんとできていました。なのに、布団の上でするなんて。もしかしたら、布団が好き過ぎて、「ここは私の場所よ!」と、ある種のマーキング的な行動で、布団にトイレをしてしまうのかもしれません。
いずれにしても、まだまだトイレトレーニングは必要で、預かりスタッフさんは特に意識してマミィに教えてあげないといけないと思いました。
■別の預かりスタッフさんの家へお引っ越し
前述の通り、マミィは穏やかで物静かなワンコです。しかし、元野犬であることから警戒心が強く、人間はもちろん他のワンコも苦手です。預かりスタッフさんには慣れてくれましたが、違う環境での経験もさせてあげたほうが良いと、しあわせの種たちの別の預かりスタッフさんの家に、移動してもらうことにしました。
マミィは新しい預かりスタッフさんのお家でも、当初は警戒気味でした。しかし、やっぱりフカフカしたものが大好きで、新しいお家でも毛布や布団の上でリラックスしてくつろぎながら過ごしています。
また、散歩も日に日にうまくなり、ご飯のときもじっと座って待つことができるようになりました。まだまだ人馴れトレーニングは必要ですが、この穏やかな性格と、成長ぶりから、幸せな第2の犬生を迎える日は、そう遠くなさそうです。
近い将来、マミィにピッタリの新しい里親さんと出会えることに、期待に胸を膨らませるスタッフでした。
(まいどなニュース特約・松田 義人)