多頭飼育崩壊から救われたプロットハウンドの母子 子犬たちは巣立ったけれど…新しい飼い主さんとの出会いを信じて待つ母犬
今年、多頭飼育崩壊の現場から岡山県動物愛護センターに、複数の子犬と一緒に収容された人懐っこいワンコがいました。犬種は日本では珍しいプロットハウンドで、名前はジーナ。推定6歳のメスです。一緒に収容された犬たちも同じプロットハウンドで、年齢や状況、身体の様子から見て、ジーナはこの子たちのお母さんではないかと思われました。
■ひとりぼっちで残された
多頭飼育崩壊とは、犬や猫などの動物を多数飼育していた飼い主が、避妊・去勢などをすることなく無秩序に飼育を行ったことによって、ワンコが繁殖を繰り返し、増えすぎて手が負えなくなり、飼育破綻することを指します。ワンコが増えすぎることで飼い主の経済的な負担が増え、現場の環境がそれまで以上に劣悪になることも多いとされています。
ジーナたちが、多頭飼育崩壊からセンターに収容された具体的な経緯はわかりませんが、おそらくはこういったひどい環境から救われたものだったと思われます。
しかし、猟犬種のワンコたちは、身体が大きいことや運動量、吠えがあることから引き出し先が見つかりにくいのです。そんなジーナたちの里親探しをセンターに促したのが、地元・岡山県で犬の保護活動を行うNPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)でした。
■猟犬には珍しい、優しく人懐っこい性格
プロットハウンドは、アメリカなどで猟犬として活躍する犬種で、家庭犬としては難易度が高いとされています。しかし、ジーナはその先入観を覆すように極めて人懐っこく、元気いっぱいのワンコでした。
こんなジーナの性格に注目したしあわせの種たちのスタッフは、センターに「猟犬たちのお披露目会」を開催し、先ずはより沢山の方にこの現状を知ってもらい、「特別譲渡」に繋げるようお願いしました。
「特別譲渡」とは、保護団体を介しての譲渡などに至らなかったワンコやニャンコを、センターから直接新しい里親さんの元へと引き渡すもの。全国的には珍しいケースですが、こういった試みが実現したのは、日頃からのしあわせの種たちのスタッフが懸命に活動し、センターとの信頼関係が築かれているからこそ。そしてセンターの職員も一頭でも多くのワンコの命を救いたいという強い思いがあるからこそでしょう。
ちなみに、センターの初めての試みとなった収容犬の「お披露目会」は、その後の「子犬たちのお披露目会」にも繋がり、センターと県民たちの距離もより近くなりました。
■センターから譲渡する「特別譲渡」とは?
しあわせの種たちのスタッフは、センターからジーナを連れ出し散歩させてもらうことにしました。前述の通り、人馴れにはいっさいの問題はなく、散歩中は常にご機嫌で、すれ違う人々に元気よく駆け寄って行ってはクン活(匂いを嗅ぐなどをすること)をしながら、きちんと挨拶をします。元気で明る過ぎて、少々落ち着きなく映るところがやや気になりますが、愛嬌たっぷりのワンコに違いない、とスタッフは思いました。
ただし、前述の通りジーナはセンターからの「特別譲渡」です。ジーナの健康管理などは新しい里親さんにきっちりやっていただく必要があります。もちろん、必要があればしあわせの種たちのスタッフたちもサポートをしてくれるとも言います。
■ジーナを中心に考えてくれる家族に出会えますように
詳しい経緯はわかりませんが、劣悪な環境で子犬を産み、懸命に育ててきたジーナ。「これまでの生活では、劣悪な環境にもめげず、元気な仔犬たちを産み、がんばって育ててきたジーナです。今度こそジーナを中心に考えてくれる新しい家族との出会いに恵まれ、幸せな第2の犬生を過ごして欲しいと思っています」と、スタッフは語ってくれました。
2023年4月末時点で、ジーナの新しい里親さんはまだ決まっていません。ジーナの全てを受け入れ、愛情いっぱいに接したいと思う里親希望者さんはぜひ、しあわせの種たちに問い合わせをしてみてください。ジーナがあなたとの縁を待っているかもしれません。
(まいどなニュース特約・松田 義人)