愛護センターの片隅で動けずにいた野犬 ドライヤーの音にも怖がっていたね 預かりスタッフの愛情を浴びて心身ともに健やかに
2023年、岡山県動物愛護センターに恐怖のあまりジッと固まる1頭の野犬がいました。そのワンコは、推定5歳くらいのオス。
人慣れしていない野犬は引き出し先がなければ「殺処分対象」となります。引き出しを決意した地元・岡山の保護団体、NPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)のスタッフはそのワンコを見た際「人間にたとえれば、韓流系男子のようだ」と思ったそうです。そして、透き通るような真っ白の毛並にちなんで「真白」と名付けました。
■洗面台と洗濯機の狭い隙間に逃げ込んだ!
ルックスこそイケメンでスラっとした真白ですが、かなりのビビリの様子。しあわせの種たちが引き出した後、団体の預かりスタッフさんの家に真白を連れていったときも「僕をどうするの?」「僕はどこに連れてこられたの?」と、不安そうな表情を浮かべていました。
さらにシャンプーをした際には、真白はドライヤーが怖くて、洗面台と洗濯機の狭い隙間に逃げ込んでしまいました。野犬出身の保護犬は、他のワンコとは仲良くできても、不馴れな人間の前ではあまりの恐怖から動けずにいたり、警戒のあまり吠えて威嚇することがあります。また、このドライヤーのように、「見たことがないもの」が当然怖くて、余計に萎縮してしまうこともあります。
こういった特性をよく知っている預かりスタッフさんは、ビビりまくる真白に対して、「大丈夫だよ。怖がらなくて良いよ」と優しく声をかけながら、まずは自分を「敵ではない」「悪いことをする人ではない」ことを理解してもらうことを最優先に接するようにしました。
■ビビリはあるが、穏やかな性格
真白は怖がりながらも警戒心から吠えたり威嚇するような性格ではないようです。むしろおとなしく穏やかな性格で、体を触ったり撫でたりしてもジッとしています。預かりスタッフさんは、そんな真白の様子を見て、健康を保ち人馴れトレーニングさえすれば、きっと新しい里親さんと繋ぐことができると期待に胸が膨らみました。
ただし、ここでちょっと心配なことも。野犬として過ごし、しばらくセンターにいたからなのでしょうか。真白の体は、身長にしては、とてもか細いです。「ご飯をたくさん食べて、ふっくらしてくれたらいいな」とも預かりスタッフさんは思いました。
■一週間ですっかり馴染んだ真白
真白が預かりスタッフさんのお家で暮らすように一週間が経過しました。
預かりスタッフさんがご飯の準備を始めると、真白は自らケージの中へ入って、ご飯を待つようになりました。新しい環境にもすぐに対応し、そして日々の習慣をすぐにくみとり理解しているところを見ると、性格の良さだけでなく、賢いワンコであることも伝わってきます。
また、預かりスタッフさんとの生活に馴れるにつれ、真白はお庭で日向ぼっこをしたり、部屋の中でも毛布の上で足を伸ばしてリラックスした様子も見せてくれるようになりました。もちろん、散歩も大好き。預かりスタッフさんを信用したのか、リードをつけて一緒に散歩するときも尻尾が上がって楽しそうです。
預かりスタッフさんの家にいる先住犬とも仲良しで、この上なく、良い子です。新しい里親さんと出会い、第2の犬生をスタートする日はそう遠くないようにも見えました。
■賢いだけでなく、運動神経も高かった
真白特有のクセと言えば「身体能力の高く、ジャンプしてクレートを飛び越えてしまうことがある」くらい。これは難点というよりも、元気な証拠です。ドッグランに馴れることができれば、全速力で駆け回る真白の姿が見られそうです。
センターの檻の中で、小さくなってじっとしていた真白。預かりスタッフさんの家で暮らし始めてから、たった2カ月でこんなに大きな成長を遂げています。これから時間をかけてたっぷりの愛情を注げば、さらに家庭犬としての真白らしいかわいくカッコ良い姿を見られることでしょう。真白が第2の犬生をスタートする日はもうすぐです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)