人懐っこい13歳の柴犬は目が見えずフィラリア陽性 「マッチングは難しいかも」 困難に負けない姿に心を動かされた人がいた
今から数年前、13歳という高齢で動物愛護センターに収容されたオスの柴犬がいました。名前はリッパーくん。体が丸っこく、そして人懐っこい性格で若く見えましたが、実は重い病を抱えていました。
■健康診断の結果は「目が見えていない」「フィラリア陽性」
リッパーくんを引き出すことにしたのは、動物愛護団体、ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。同団体は、リッパーくんを動物愛護センターから連れ帰ってすぐに、獣医さんに健康診断をしてもらいましたが、そこで発覚したのは、「目が見えていないこと」そして「フィラリア陽性」でした。
フィラリアは、寄生虫に感染した蚊に刺されることより罹患する病気です。この寄生虫は犬の肺動脈や心臓に寄生することがあり、全身の血液循環や内臓にも深刻な障害を与え、最悪の場合、陽性のワンコは死に至ることもあります。
こういった病気を抱え、さらにはシニア犬でもあります。健康で若いワンコに比べれば、どうしても新しい里親さんへのマッチングが難しいのが現実です。そのため、スタッフはリッパーくんを献身的にお世話をする決意を持ちながらも、現実的には新しい里親さんへの譲渡は難しく、結果的に、その命を同団体で引き受け最期まで面倒を見続けることになるかもしれないと考えていました。
■心を打たれた人が現れる
年齢と持病以外は全く問題なく、人間とも触れ合うことができるリッパーくんは、ピースワンコ内でも人気のワンコでした。カメラを向けられることを察すると、近寄ってきてスリスリしてサービスしてくれたり、スタッフが体をなでると、ウットリとした表情を浮かべ、皆を癒してくれるようなワンコでした。
そんなリッパーくんの様子を、同団体の施設で見た人がいました。この方はリッパーくんの年齢や持病にめげないその愛くるしい姿に心を打たれ、やがて「里親として迎え入れたい」と名乗りをあげてくれました。その人は「最初にピースワンコに来たとき、リッパーくんがかわいいなと思いました。病気のことは色々聞いていましたが、しっかり見てあげたいと思いました」とその思いを語ってくれました。
当のリッパーくんもこの里親希望者さんと接した当初から積極的にコミュニケーションを取ろうとしていました。里親希望者さんの匂いをクンクン嗅ぎ、仲良くなろうとしているように映りました。
■笑顔で団体を卒業
スタッフは改めてリッパーくんの年齢や持病について、里親希望者さんに説明し、やはりその意思がゆるがないものだと判断し、この家にリッパーくんを譲渡することを決めました。
ピースワンコを卒業する日、リッパーくんは里親希望者さんの車に自らの足でヒョイっと乗り込み、リラックスした表情で巣立っていきました。そして、新しい家に向かう道中では、これからの幸せな第2の犬生を期待してかベロを出し、笑顔を浮かべていました。
高齢で重篤な持病があっても、リッパーくんのように幸せを掴むことができます。リッパーくんの好例を胸に、今後の活動への思いを新たにするスタッフでした。
ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/
(まいどなニュース特約・松田 義人)