「混ざり物が少ないアルコールは、火がついてもほとんど見えない」 福岡のBBQ事故を受けた注意喚起が話題

2023年5月24日、福岡県柳川市で美容専門学校のバーベキュー大会が開催され、男性教員が炭火に消毒用アルコールをかけたことで引火。あっという間に火が周りにいた男子生徒に燃え移り、3人が火傷を負い、1人が死亡するという痛ましい事故が起こりました。

事故の後、鬼虫兵庫 Hyogo Onimushi(@ONIMUSHI_HYOGO)さんは、ツイッターに

「混ざり物が少ないアルコールって火がついてもほんと見えないから注意が必要ですよ。これは以前、僕が実験した時の画像ですけど、日光下だとマジでこれくらい見えない。これのアルコール度数は50度くらい」

と投稿。話題になりました。

リプ欄には、

「アルコールランプやって学ばなかったのか」

「純度が高くて、炎が青白いから見えにくいんですよね」

「見えない火ってあるんだ。なんかの漫画の敵キャラの能力とかにありそう」

など様々な反響があり、「いいね」は1.6万件にもなりました。

鬼虫兵庫 Hyogo Onimushiさんにお話を聞きました。

ーーなぜご存知だったのですか。

「前々からアルコールの燃焼が視認しづらいということは、化学知識や、また燃料にメタノールを使ったインディカーレースでの事故事例などを見て知っていました。1981インディアナポリス500では、大きな事故が起こりました。以前、その現象をミステリーのトリックで使えるのではないかと思い、説得力を持たせるためにも実地での実験が必要だと考え、安全を確保の上、実験しました。この画像は数年前に実験した時のものです」

ーー混ざり物が多いアルコールと少ないアルコールがあるのですか。

「僕が以前実験で利用したのはスピリタスですが、こちらはアルコール度数96度なのでほぼ純粋で、混ざり物が少ないエタノールと言えます。逆に、混ざり物が多いアルコールとなると、たとえば消毒液などでも、消毒の効果を高めるためや、手荒れ防止などで添加物が加えられた物があります。

アルコール飲料でも、糖分があるリキュールなどはエタノール以外の成分が多いので、混ざり物が多いと言えます」

ーー一般的な消毒用アルコールには何が混ざっているのですか。

「基本的には水(精製水)です。消毒に適当な度数は70度~80度なので、加水して調整してあるのだと思います」

ーー消すにはどうしたらいいのでしょうか。

「アルコールによる火災の場合、有効なのは水による消火です。例えば、アルコール燃料を使うインディカーの消火シーンを見ていただいてもわかるのですが、大量の水をかけて消火しています。これは、アルコールは水との親和性が高く、水によって容易に濃度が薄まるためです。ただ、実際の問題として、近くに消火用の水が用意してある状況は少ないかもしれません。その場合の消火方法として効果的なのは、アメリカの消防士の間でも実践されている『ストップ、ドロップ&ロール』です」

ーーストップ、ドロップ&ロールとは?

「まず、その場で立ち止まり(ストップ)、顔を手で覆って地面へ倒れこみ(ドロップ)、転がる(ロール)という対処法で、火を窒息消火させる方法です。この消火方法はアルコール以外の着火でも利用出来るのでとても効果的です。また着火した際、注意していただきたいのは、各種消防サイトでも指摘されているように、走って逃げてしまうことです。本能的に危険から逃れるという意識が働くため、『走ることによってどうにか火を消そう』と思いがちですが、これは逆効果です。火種に風を送って火を強くするのと同じように、より着火した火を大きくしてしまう恐れがあります。衣服に着火した火は走っても消えることはまずないため、その場で『ストップ、ドロップ&ロール』を実践するのが効果的かと思います。周りにいる人はその間に消火用の水を用意するとなお良いと思います」

大阪市消防局に聞いたところ、アルコールの炎は無色透明もしくは青く、屋外では見えにくいということでした。また、その時火種がなくても、密閉した室内で大量にアルコールを噴霧しないことも大事。気化したものが下の方に滞留して、ガスコンロやライターの火に着火することがあるそうです。

消火方法は、鬼虫兵庫 Hyogo Onimushiさんが教えてくださった通り、「ストップ、ドロップ&ロール」、もしくは水をかけます。間違っても、走り回ってはいけません。炎に勢いがついてしまいます。何よりもまず、火のそばにアルコールを近づけないようにしましょう。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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