事故で半身不随の野犬 手術後も残った重い障害「保護団体の施設で生涯を終えるのかな」 4年後届いた思いがけない連絡「家族に迎え入れたい」

2016年、瀕死の状態で愛護センターに収容されたクラリスという元野犬がいました。事故で背骨が折れ半身不随の状態でした。不自由な体でありながらも、必死に自分の身を守ろうと、人間に気を許すそぶりは見せません。そんな姿を見て、すぐに引き出すことにしたのが、保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)でした。

■「譲渡はきっと難しいだろう」

保護した後、スタッフはクラリスに手術を受けてもらうことにしましたが、折れてしまった背骨の完治には至らず、障害を抱えて暮らすことになりました。その後、クラリスに少しでも楽に過ごしてもらえるよう専用の車椅子を装着することにし、そしてできる限りのサポートとたっぷりの愛情を注ぐことにしました。

その思いがクラリスに通じたのか、次第に人間に信頼を寄せ、笑顔を見せてくれるようになりましたが、しかし、これだけの障害です。スタッフは「譲渡はきっと難しいだろう」「ピースワンコの施設で生涯を遂げるのだろう」とも考えていたと言います。

■「保護犬だから」ではなく「クラリスだから」

保護してから4年ほどが経過した2020年、ピースワンコに1本の連絡が入りました。クラリスを迎え入れたいという里親希望者さんからの連絡でした。

里親希望者さんに「なぜクラリスを迎え入れようと思ったのですか」とスタッフが尋ねると、答えはこうでした。

「『保護犬だから』ではなく『クラリスだから』です。『かわいいから』としか答えられないです。たまたま、クラリスに障害があった、ただ、それだけです。障害=大変とは思ってないです。障害とは出来ないことがあって、それを手伝うことだと考えていて、手伝う大変さというものはあると思いますが、それが大変かは人によって感じ方が違うということじゃないかなと思っています」

■多くの人たちの思いとケアがクラリスの幸せに繋がった

ワンコは瞬時にその人の気持ちや愛情を感じ取るのでしょう、クラリスは、この里親希望者さんの前ではすぐにお腹を見せ、「もともと家族だった」とさえ思わせるそぶりを見せました。

この優しい里親希望者さんの元へと巣立っていったクラリス。スタッフはおおいに喜びましたが、しかし、「自分たちだけが幸せへと繋げたわけではなく、多くの人たちの連携によって幸せへと繋がった」ことも改めて振り返りました。

事故に遭い半身不随だった状態で保護してくれたスタッフ、手術をしてくれた獣医師、部屋の隅でただ怯えているだけのクラリスを外へ連れだした当時の担当スタッフ、クラリス専用車椅子を作ってくれたお掃除スタッフ、そしてこれまで応援してくれたピースワンコを支援してくれる人たち……。

こういった多くの人たちのサポートの元で、クラリスは幸せをつかむことができました。スタッフは、クラリスの好例を胸に、今後も1頭でも多くの命を救いサポートをし続けたいと思いました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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