東京メトロ千代田線…北綾瀬駅が最後に誕生した理由と、駅にまつわる“2つの数字の謎”
東京とその近郊を行き交う鉄道は、他社路線との直通運転を行うことで、さらにその利便性を増し、発展を続けてきました。そのひとつが、1971(昭和46)年に始まった、千代田線と国鉄(現・JR)常磐線との相互直通運転です。千代田線は1969(昭和44)年に北千住-大手町間で開業。綾瀬へと延伸を進めるとともに、常磐線・我孫子間で相互直通運転を開始しています。
「メトロネットワーク」と名付けられた路線図を見ながら、利用者に寄り添った進化を重ねる東京メトロに思いをはせていたある日、ふと気がついたことがありました。
■東京メトロ千代田線 あの駅が最後に生まれた理由とは?
前述のように、東京メトロ千代田線とJR常磐線は綾瀬駅で接続し、松戸駅まではJR常磐線各駅停車となっています。北千住駅から綾瀬駅までの間は千代田線・常磐線の2路線が走る区間というわけです。
ところが、東京メトロ千代田線には「北綾瀬駅」という駅が存在しています。路線図を見ても、綾瀬駅から分岐した駅のように表現されていますが、駅ナンバリングはC01の代々木上原に始まり、北綾瀬をC20とするなど、「分岐線」とも異なるように思えます。
実は、綾瀬-北綾瀬間の開業は1979(昭和54)年。北綾瀬駅の隣駅・綾瀬駅は1971(昭和46)年に開業しています。
なぜ、約8年の時を経て、北綾瀬駅は生まれたのでしょうか。北綾瀬駅誕生の経緯や、北綾瀬駅にまつわるある数字の謎について、東京メトロ広報部にうかがってみました。
■いったんは設置を見送られた新駅だったが……
現在も、北綾瀬駅からさらに北の地点に「綾瀬車両基地」が所在しています。『千代田線建設史』によれば、これは有楽町線の車両も使用できるようにと建設された、営団最大の車両基地だったそう。検車庫、検車工場、事務所などを兼ね備え、1968(昭和43)から検車庫の新築工事に着手し、1979(昭和54)年までに完成しています。
このように、綾瀬駅から先の線路そのものは「車庫線」として敷設されており、千代田線の建設当初から環状7号線との交差地点に新駅の設置も考慮されていたそうです。ただ、当時の北綾瀬地区は人口密度も低く、需要は見込めないと考えられていたため、実際に設置するには至りませんでした。
JR常磐線との接続が綾瀬駅で行われているのも、こうした理由からということです。
ところが、千代田線が開業すると、北綾瀬地区は急速に市街地化。地元から新駅を要望する声が高まり、また一定の輸送需要も見込まれるため、北綾瀬駅が設置されることになったということです。
■北綾瀬駅にまつわる数字の謎 0番線ホームが生まれた謎
このように、JR常磐線と相互直通運転を綾瀬駅で行っていることから、北綾瀬駅に行くためには乗り換えが必要になる場合があります。
綾瀬駅は1・2番線が代々木上原方面行き、3・4番線が北綾瀬・JR常磐線我孫子方面行きのホームとなっているため、北綾瀬方面行きホームでの乗り換えを行う場合には、ホーム上を少し歩きます。
実は北綾瀬方面行きの発着するこのホーム、「0番線」なのです。もともと1~4番線があるのなら、延伸となった北綾瀬方面行きのホームは「5番線」になるのでは……? 何か秘密がありそうです。
こちらについてもうかがってみると、これには、ホームに数字を振る際の「あるルール」が関わっていることが分かりました。
綾瀬-北綾瀬間の開業当時は、現在の2・3番線が折り返しホームとして使われていました。しかし、代々木上原方面行きホームの混雑緩和のため、運用方法を変更。新しいホームが作られることになりました。
その位置が1番線ホームより手前の位置にあるため、「0番線」となったのだそうです。ホームが完成した順番ではなく、ホームの「位置」によってナンバリングが行われているということなのですね。
■綾瀬-北綾瀬は分岐線のはずなのに……? 駅ナンバリングがつながっている謎
もう1つの謎は、駅ナンバリングです。
丸ノ内線では中野坂上駅から方南町駅までが「丸ノ内線分岐線」となっており、駅ナンバリングも本線の「M」とは異なる「Mb」(b=branch line=分岐線という意味)が割り振られた駅が3駅存在しています。
『千代田線建設史』では綾瀬-北綾瀬間を「分岐線」としており、中野坂上-方南町間と同じように思えます。ではなぜ、北綾瀬駅は「Cb」のようなナンバリングにはなっていないのでしょうか。
実はここにも、駅ナンバリングの「あるルール」が関係していました。まずは、駅番号は路線の西または南から順に振られていること。もうひとつは、分岐の始まる位置によってナンバリングが変わるということです。
丸ノ内線本線は荻窪-池袋間をつなぐ路線ですが、その途中駅である中野坂上駅から方南町方面へ分岐しています。一方、北綾瀬駅は分岐線ではあるものの、千代田線本線の端部・綾瀬駅から分岐しているため、連番としているのだそうです。
ホームの番号も駅ナンバリングも、利用者の「使いやすさ」に寄り添ったルールが定められているのですね。
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2023年6月14日、三井不動産株式会社よりあるリリースがありました。2025年夏、北綾瀬駅前に商業施設「(仮称)三井ショッピングパーク ららテラス北綾瀬」が開業するというものです。
これまでも、北綾瀬駅周辺はまちづくりの計画が進められ、公園の改修工事や高架下を活用した店舗の開業などが行われてきました。新しく開業する商業施設は駅と直結し、スーパーマーケットや飲食店など約50店舗が入居する予定だそう。
今後も、ますます北綾瀬駅とその周辺地域は発展していきそうです。
(まいどなニュース特約・糸川 憬)