営業距離38kmなのに…「5路線」「4車庫」もある!? 実はスゴい「神戸市営地下鉄」の不思議
営業距離38キロというと、JR大阪~須磨間(40.4キロ)、JR新宿~八王子間(37.1キロ)に近い数値です。にもかかわらず5路線・4車庫を有しているのが神戸市営地下鉄です。なぜ、これだけ多くの路線数と車庫を持ち合わせているのでしょうか。
■5路線ある神戸市営地下鉄には新線計画があった?
さっそく神戸市営地下鉄の路線数を列挙してみましょう。北から北神線(谷上~新神戸)、山手線(新神戸~新長田)、西神線(新長田~名谷)、西神延伸線(名谷~西神中央)、そして海岸線(三宮・花時計前~新長田)の計5路線です。
海岸線を除く各路線の区間を見ればわかるとおり、北神線、山手線、西神線、西神延伸線は1つの路線のように見えます。現在、神戸市営地下鉄では山手線、西神線、西神延伸線は「西神・山手線」でまとめられ、事実上3路線(北神線、西神・山手線、海岸線)となっています。
神戸市営地下鉄最初の路線は1977年に開通した西神線(新長田~名谷)です。1983年に開通したのは山手線ですが、最初の開通区間は新長田~大倉山間でした。2年後の1985年には山手線が全通し、西神延伸線名谷~学園都市間も開通しています。1987年に西神延伸線が全通し、西神中央~新神戸間が結ばれました。
西神中央~新神戸間はニュータウンの開発状況、ならびに1985年開催のユニバーシアード神戸大会に合わせて路線が伸びました。このように西神・山手線は一気に完成させた路線でないことが、路線名の多さからも推察できます。
一方、海岸線は2001年に全線開通しました。北神線はもともと北神急行電鉄により運営され、2020年に神戸市営地下鉄の路線になりました。
余談ですが、西神中央駅からは西明石・押部谷方面への新線計画も存在しました。1989年、運輸政策審議会の答申では西神中央~西明石間が2005年までに工事に着手することが適当な区間、西神中央駅から押部谷・東播磨方面は今後検討すべき区間に指定されました。
しかし、景気悪化により、これらの新線計画は立ち消えに。2013年9月23日発表の久元喜造神戸市長のブログでも「延伸は不可能です」と述べています。もし、新線が開通していたら、さらに路線数は増えていたことでしょう。
■4車庫・車両基地から減る予定
神戸市営地下鉄は4車庫・車両基地を有していますが、このうち谷上~西神中央間(30.2km)だけで3車庫・車両基地(谷上車庫、名谷車両基地、西神車庫)も有しています。参考までに阪急神戸本線大阪梅田~神戸三宮間(32.3km)は西宮車庫しかないため、単純に数だけ見ると何とも贅沢な話です。
車庫と車両基地の違いは車庫は電車を留置するところ、車両基地は車両の留置と合わせて通常の車両検査も行うところです。
開業当初は名谷車両基地のみでしたが、車両収容能力が限界に達したため、1993年から西神車庫の使用を開始しました。
一方、谷上車庫は1988年に開業した北神急行電鉄の車庫でした。2020年の市営化により、神戸市営地下鉄の車庫となりました。
このまま4車庫・車両基地体制と進むのかと思いきや、神戸市は2025年度初めに西神車庫を廃止する方針を示しました。車庫跡地に関して、市は地域の活性化に寄与する土地利用の検討を進めるとしています。また、谷上車庫を改修し、西神車庫廃止後は3車庫・車両基地体制に移行する予定です。
このように神戸市営地下鉄には数多くの「トリビア」が隠されているのです。同時に車両面も含めて大きく生まれ変わろうともしています。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)