「上戸彩」の名字は何と読む?→実は「うえと」は少数派…圧倒的に多いのは「かみと」でした
6月に3人目の子どもを出産した女優の上戸彩。数多くのCMに出演している他、『M-1グランプリ』決勝の司会でもおなじみ。名前の読み方は「うえと・あや」である。
上戸彩があまりにも有名なため、「上戸」という名字は「うえと」と読むのが常識のようになっているが、実際にはそうではない。
そもそも、「上~」という名字の読み方は難しい。「上野」「上田」「上原」など、ほぼ「うえ~」と読むものもあるが、それでも「かみの」「かみだ」「かみはら」という読み方も一定数ある。「上田」は他にも鹿児島県の「かんだ」、兵庫県の「こうだ」、大阪府の「じょうだ」など地域的な読み方も存在する。
そして、「上村」「上島」「上山」「上岡」など「上」で始まる多くの名字は、「うえ~」と「かみ~」の両方の読み方が多く、漢字を見ただけでは、どう読んでいいのかはわからない。ざっくりいうと、関東では「かみ~」が多く、関西では「うえ~」が多いものの、その他の地域では名字によってさまざま。
さらに、「上西」のように関西では「うえにし」が多いものの滋賀県では「じょうにし」が最多とか、最多の読みが「うえ」でも「かみ」でもなく「かん」である「上林(かんばやし)」など、意表を突くものもある。
「上戸」という名字は長崎県に多く、全国の半数弱が長崎県にある。そして、長崎県の「上戸」はほぼ「かみと」である。隣の佐賀県や福岡県でも読み方は「かみと」が多い。
次いで、北海道と香川県に多く、北海道では「うえと」が多く、香川県では「じょうと」が多数を占める。また、鹿児島県薩摩川内市に集中している「上戸」は「うえんど」と読む。
その他の地域に点在する「上戸」は、西日本では「うえと」、東日本では「かみと」が主流で、東京でもほぼ「かみと」。
全国を合計すると「かみと」が圧倒的に多く、全体の約8割近くを占めている。次に多いのが「うえと」だが、比率では1割程度にすぎない。
従って、「上戸」という名字の読み方は「かみと」で代表されるわけだが、上戸彩の影響力はすさまじく、原稿で「上戸」に「かみと」というルビを振ると、ミスとして赤字を入れられてしまうこともある。
「指原」という本来難読の名字が、指原莉乃一人の力によって誰でも読める名字になったのと同じく、タレントの力はすさまじいといえる。
◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。