「普通のみ停車」から→快速急行、特急含めて「全列車停車」へ 西の“出世駅”…「阪神魚崎駅」躍進のヒミツ

「格差固定」と呼ばれて久しい昨今ですが、鉄道の世界では普通のみが停車する駅から特急も含めた全列車が停車する駅になった「出世駅」があります。関西では西の出世駅として阪神本線魚崎駅(神戸市東灘区)が挙げられます。早速、出世の秘訣を解き明かしていきましょう。

■六甲ライナーの開業で出世した魚崎駅

魚崎駅は2面2線の構造を持ち、阪神で唯一の橋上駅舎を持つ駅です。現在は直通特急や快速急行を含め全列車が停車します。

そんな魚崎駅ですが、昭和時代は普通しか停車しない小駅でした。隣駅の青木駅はラッシュ時間帯に急行が停車し、魚崎駅よりも存在感がありました。

魚崎駅にとって大きな転機となったのが、1990年の六甲ライナーの開業です。六甲ライナーはJR住吉駅と人工島・六甲アイランドを結び、住吉駅でJR神戸線(東海道本線)、魚崎駅で阪神本線に接続します。

魚崎駅は六甲ライナー魚崎駅に合わせて橋上駅舎になり、ペデストリアンデッキを通じて両駅は結ばれています。

六甲ライナー開業後、1991年に夕方ラッシュ時のみ快速急行が魚崎駅に停車することになりました。一方、JR住吉駅は終日にわたり快速停車駅となり、利便性では住吉駅に軍配が上がることに。大型商業施設もオープンし、駅周辺の賑わいでは魚崎駅に圧倒的な差をつけています。

2001年に直通特急・特急停車駅になりましたが、快速急行は通過することに。2009年に再び快速急行の停車駅となり、晴れて魚崎駅は全列車が停車する駅になりました。

神戸三宮(三ノ宮)方面の時刻表を比較すると、昼間時間帯における1時間あたりの停車本数はJR住吉駅よりも魚崎駅の方が多いのが実情です。

参考までに、2つ隣の主要駅御影駅には快速急行は停車しません。魚崎駅は御影駅を追い抜き、阪神を代表する主要駅にのし上がったのです。

■JR住吉駅にも勝利した魚崎駅と阪神の実力

とはいえ、「さぞ魚崎駅前は賑わっているのだろうなあ」と思っていると裏切られるかもしれません。というのは魚崎駅前にはショッピングセンターはなく、路線バスが乗り入れる駅前広場もありません。

むしろ、御影駅前にはショッピングセンターがあり、立派な路線バスのターミナルがあります。

しかし、1日あたりの乗降人員(2019年)は魚崎駅3万120人、御影駅2万7313人と魚崎駅に軍配が上がります。3年間の乗降人員の伸び率も魚崎駅が勝ります。

魚崎駅の利用者数増の要因として六甲ライナーの存在が挙げられます。六甲ライナーも2016年から3年間の1日あたりの利用者数は増加傾向にありました。六甲ライナーを運営する神戸新交通は増加の要因として「沿線学校の学生数の増」などを挙げています。

今度は六甲ライナー住吉駅・魚崎駅の2016年度・2019年度の年間乗車人員の推移を比較します。すると住吉駅は横ばいなのに対し、魚崎駅は2016年度比10%増となっています。付け加えると、JR住吉駅の1日あたりの乗車人員も横ばいが続いていました。

コロナ禍を別にすると、魚崎駅は成長株な駅となっています。六甲ライナー以外の要因としては阪神なんば線の開業により、魚崎駅から難波へ乗り換えなしでいける利便性の良さが挙げられます。

また、魚崎~難波間の通勤定期券の値段を比較すると、阪神線経由の方がJR・大阪メトロ経由よりも、約1万5000円(3カ月定期)も安いのです。魚崎駅駅舎を見ると、難波への利便性が大きく宣伝されています。大阪梅田への普通運賃も阪神魚崎駅の方がJR住吉駅利用よりも110円安い結果に。2018年に実施したJR「昼間特割きっぷ」の廃止の影響も大きいように思われます。

このように魚崎駅の成長は阪神の利便性向上と六甲ライナーに支えられていることがわかります。コロナ禍により一時的に落ち込みましたが、これから、どのような出世話が出てくるのでしょうか。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)

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