「生きていてくれて、本当によかった」ビニール袋に入れられ、捨てられていた姉弟猫…“幸せな大人にゃんこ”になるまで

生きていてくれて、本当によかった--。心の底から、そんな言葉を贈りたくなるのが、斑猫さん宅で暮らす2匹の姉弟猫。2匹はビニール袋に入れられて遺棄されていたところを救われ、「ずっとのおうち」を得ることができた。

■犬の散歩中に見つけたビニール袋の中に3匹の子猫が!

住む人の暮らしに合ったフルオーダーメイドの家づくりを手がける「株式会社ユーリン・ホーム」にて相談役を務めている中井さんは、ある秋の早朝、いつものように犬の散歩へ。

すると、祠でビニール袋を発見。中にはなんと、か細く弱々しい声で鳴く、3匹の子猫がいた。子猫たちは産まれたてで、まだへその緒がついている状態だったという。

自宅にはすでに3匹の犬と1匹の猫がいたため、中井さんは初め保護を迷った。だが、カラスに襲われてはいけないと思い、家に連れ帰った。

3匹の体は氷のように冷たかったため、お湯で体を温めた。自身の年齢を考慮しても、自宅で飼うことはやはり難しいと感じたため、中井さんは3匹を育てながら里親を探すことに。白黒の女の子には「アン」、同じく白黒の男の子には「ポン」、茶白の男の子には「タン」という名前をつけ、成長を見守った。

保護後、3匹の体重はどんどん増えていき、10日目には拾った時の2倍に。だが、そんな矢先、タンくんが逝去。中井さんはやりきれなさを覚えたが、残る2匹を育てながら、里親探しを継続した。

■姉弟猫が愛猫を失った心の穴を埋めてくれた

そんな2匹と運命的な出会いを果たしたのが、現在の飼い主である斑猫さんだ。実は斑猫さん、1年半前に16年を共にしてきた愛猫を亡くしたばかりだった。

「目の前で苦しんでいるのに何もできず、探しまくった夜間動物病院に運んだ時には、『もう瞳孔が開いています』と獣医さんに言われました。その無力感がすごく悲しく、愛猫に申し訳なくて、以来、猫は迎えられませんでした」

だが、ある日、友人から、「乳飲み子を拾った人が里親を探しているから、一度見てみない?」と言われ、中井さん宅へ。対面時、仲のいい2匹を見て、斑猫さんは、「この2匹が一緒なら乗り越えていけそう」と思い、里親になることを決意した。

お迎え後、アンちゃんは「ココア」ちゃんという名前に。ポンくんは、「アールグレイ」くんになった。2匹を迎えた時、斑猫さんはあまりにも活発な姿に仰天したそう。

「子猫ってこんなに活発だっただろうか…と思うくらい、走りまくるわ、昇りまくるわ、2匹で遊びまくるわ…。もうびっくり。人見知りだった先代猫とは、真逆でした」

2匹は鳴き方が分からないのか、全く声をあげない分、態度で気持ちを示しているように見えたという。

活発な姉と温厚な弟。そんな性格は今でも変わらないものの、体格が大きくなったアールグレイくんはココアちゃんとじゃれ合う時、力と体格で圧倒するようになった。だが、その一方で、抱っこをおねだりする甘えん坊な時もある。

また、ちょっぴりドジな一面もあり、階段を踏み外したり、飛び上がり損なったりすることがあるのがアールグレイくんのかわいさだ。

対して、ココアちゃんは、あざとかわいい女の子。カメラのポージングや、おやつをねだる時の表情が巧みなのだそう。

「あと、寒がりなので、布団の中にそっと潜ってしまい、探しても見当たらなくて焦ったことが何度かあります」

活発で俊敏なココアちゃんは、何事にも機敏に反応。そのため、いつも、アールグレイくんより先にご飯をゲットしているのだとか。

性格は違うものの、2匹は大の仲良し。暑い時でも、一緒にスヤスヤと眠っている。

「ただ、アールグレイが寝ているところにココアが近寄った時は怒らないけれど、ココアにがいるところにアールグレイが近づくと嫌がることがあります(笑)」

2匹と暮らす中では、斑猫さん自身にもたくさんの変化が起きた。まずは、スマホのフォトフォルダーが猫にジャックされたこと。

「写真の8割以上が猫になりました。最初は中井さんへの報告も兼ねて、猫たちの写真をアルバムにしていましたね」

また、愛猫に健康でいてもらうために、自身の生活を整えるようにもなったそう。

「私だけだとズボラですが、猫たちがいることで生活にリズムが生まれました。夜更かししようとすると、猫たちに寝るよう、催促されます。面倒を見てもらっているのは、私のほうなのかもしれません(笑)」

「猫は呼んでも来ない」という概念も変えてくれた2匹はいつも、斑猫さんを交代制で見守っていてくれるそう。先代猫の死という心に空いた大きな穴は、2匹への愛で埋まったようだ。

なお、斑猫さんと中井さんには今でも交流があり、時々、連絡を交わすことも。縁を紡いだ中井さんは今、近所で暮らす家野良状態の猫たちを見て、責任を持って生き物の命を迎えることの大切さを痛感しているという。

「家野良状態の猫たちは、この半年で4匹が事故死しました。それでもまた子猫が産まれ、一定数は生きています。エサをやっている人物は、猫が死んだことを知りません。行政で何かできないかと思うばかりです」(中井さん)

救われる保護猫の裏には、ひっそり命を落とす猫が数多くいるという事実を、私たちは真剣に考え、小さな命と向き合っていく必要がある。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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