「まだ家住んでるの?」365日ホテル暮らし ランボルギーニで颯爽と登場…「ネオホームレス」社長の生活と哲学

これまでさまざま経営者たちがメディアに登場し、派手な生活や自身の成功哲学をつまびらかにしてきた。

メディアには出ていないが、一般人には想像できないような生活をしている「勝ち組」の経営者は多くいるという。

その一人に取材することができた。複数社を経営しながらほぼ出社せず、365日ホテル暮らし。同じホテルには2度と泊まらない。あえて言うなら住所は"地球"というcitrus社長・野口昌一路(のぐち・しょういちろう)氏。

「ネオホームレス」と称し、車にグルメに現代アートと贅を尽くした生活を送っているというが、何を考え、どうやって稼ぎ、なぜそんな生活をしているのか。

本人に取材し、令和の成功者の内実を聞いた。

■家っていらないものばかり

取材当日、真夏日の暑さのなか、黒光りするランボルギーニに乗って颯爽と登場したSHOこと野口氏。

このまま海にでも遊びにいきそうなくらいラフな出で立ちとは裏腹に、アパレル・不動産・広告・古物商などなど…数多の事業を手掛ける敏腕経営者だ。

家はないのに車はあるんだ…と伺ってみると、「10台くらい持ってる」とのこと。

しかし半分近くは1度も乗らずに放置しているそう…。

出会い頭から、強烈な右ストレートの衝撃が安月給記者の脳を揺さぶる。

まずはホテル暮らしのワケを聞いた。

--早速ですが、どうして365日ホテル暮らしに?

SHO:逆にどうして家に住んでるの?

--……なんで家に住んでるんでしょう?

SHO:ちょっと毎日家のなかで使うもの思い浮かべてみて。何個ある?

--ベッド、歯ブラシ、タオル、トイレットペーパー……10個くらいですかね。

SHO:だよね。毎日家のなかで使うものって10個くらいで、そのほとんどはホテルにある。ってことは持たなくてもいい。

家自体がそもそも固定概念。家っていらないものがたくさんあるじゃん。家から抜け出すことで、固定概念から解き放たれてリミッターを1つカットできる。自由になりたいんですってみんな言うけど、家にいるじゃん?

別に家をなくせって話じゃなくて、自由になるには本当に大切なものだけを残して、他は捨てるとか断るってことが必要だって思うね。

--では、SHOさんは固定概念を捨てるために毎日違うホテルに泊まっていると?

SHO:俺は直感力が大事だと思っている。たとえば今、水を飲もうかなーとか、コーヒーに変えようかなとか、人は意識的・無意識的に関わらず常に1秒1秒、選択と決断をしている。

でもこれって1つ1つ熟考はしてないでしょ? ほとんど直感で選んでいる。これってもしその都度いい決断ができたら、人生ってすごく変わっていく。だから直感力を鍛えれば鍛えるほど、よりよい人生になる。

だけどそのためには感性を磨かないといけない。俺は美意識とも呼んでるんだけどね。

世の中にある価値観ってけっこうバラバラだけど、美意識って世界中でどこか共通している部分がある。直感の根底には美意識や感性があって、それを鍛えていくことは直感力を高めることにも繋がる。

--美意識を鍛えるって、いまいちイメージが湧きませんね。

SHO:そのために必要なのが経験と言語化。

俺はフランス人には肩こりがないって例をよく使う。フランス語には肩こりって言葉がないんだけど、これはフランス人の肩が凝らないってわけじゃない。実は肩が重いなとは思っているけど、言葉がないからそれを「肩こり」として認知できないってこと。

言語化することで認知できるようになって、経験が自分のなかに蓄積されていく。それによって感性が磨かれ、直感力が鍛えられ、最終的には本質に到達して全ての物事が見られるようになりたいと思ってる。

そのために言語化と経験を重視しながら3Sミッションを遂行していくことを、俺は大事にしているんだよね。

--3Sミッション?

SHO:死ぬまでに 知らないことを 少なくする

--めっちゃ日本語だった(笑)

SHO:こういうのは分かりやすいほうがいいからね。

■ネオホームレスとして困ったことは…?

--ネオホームレスをやっていて、困ったことってないんですか?

SHO:ないね。強いて言えば、社員が「なんだこいつ」って思うことかな。

最初はけっこうそういうのもあって、それで結構辞めていった。今はもう「あいつヤベーからしょうがない」ってなってるね。強引に突き抜けて乗り切った。

--辞めていかれたらけっこう困ったんじゃないですか?

SHO:そうでもなかったね。俺には事業以外の資産やキャッシュマシーンが常にあって、飛行機のリースとか不動産とか、放っておいても確実にお金が入ってくるものを持ってるから。

それに基本、事業にはノータッチ。俺はジョブ型・プロジェクト型・コミュニティ型って呼んでるんだけど、その業界それぞれのプロフェッショナルを集めて、その人たちに仕事とか自分の苦手なことを任せていくっていうかたちでやってる。

今までみたいな社員を雇う感じじゃなく、全てのプロを集めてパートナーとしてコミュニティを作っていく。イメージは全ての業種・分野で共同経営をしてる感じ。

だからそれぞれの事業がいまどういう仕組みとか予定で動いてるかとかも全然知らない。俺は最後に結果がどうなったかを見るだけ。

--コミュニティ型のビジネスモデルをしていく上で、参考にしたものはありますか?

SHO:あんまりないね。1番は、社員を抱えて組織を大きくしなきゃいけないってことに違和感を感じて、それって固定概念なんじゃねえのって思ったから。

俺は違和感を見つけるのすげー得意なのよ。それに「直感は外れるけど違和感は裏切らない」から。

それなのに違和感って固定概念で潰される。だから見つけたら徹底的に掘らないといけない。本当なのかなとか、何がどう違和感だと思ったのか、言語化していく。その結果、辿り着いた答えにしたがって行動する。違和感を掘った先は本質に近づいているはずだから。

--お金を稼いで何がどう変わりましたか?

SHO:お金自体はどうでもいい。やりたいことをやるためにお金があったほうがいいってだけ。

それに現代は資本主義だから、自信にもなるし、周りの見え方も変わっていいコミュニティを作れたりもするし。

お金はあくまで人間が本質的によりよく生きるためのツールとか1つの手段でしかないよ。

--お金はあくまで手段なんですね。

SHO:俺はなるべく早めにあらゆる物事をやっていきたい。そのためにはお金が必要なんだよ。

昨日、「全ては目減り論」っていうのを作ったんだけどさ、俺はあらゆるものは減価償却だと思ってる。

たとえば20歳のときに手に入れる100万円と、50歳のときの100万円って同じ100万円でも価値や重みが違う。

経験も一緒。若いうちに経験すれば、それだけその経験を活かせる時間が長くなる。仮に100歳まで生きるとして、80歳で世界一周旅行に行ったっていうより、20歳で行ったほうが世界一周したっていう経験を活かせる時間が長いでしょ?

あらゆるものは早く手に入れたほうが使える期間が長くなるし、その分だけ価値が高くなる。

だから俺は急いでいて、短いタームで飛ばしてる。なるべく早めに少しでも多くのことを経験して物事の本質を見極められるようになりたい。

--経験を積んで、感性を磨き続けていった先に得た直感で、最終的に家が欲しくなる可能性もありますか?

SHO:全然ある。だからこそ俺は今を尖らせまくってる。自由を追及した結果、家が必要だよねってなるのであれば、早くそこに行きつきたい。自由の先の景色を見たくて追及してるから。

今の俺が持ってる価値観は変わると思ってるし、変わっていきたいね。

   ◇

正直、どんなパリピなのかと思っていたが、整理し研ぎ澄ませた思考を丁寧に話してくれる姿は人生に真摯に向き合っているある種の「求道者」という印象も受けた。

もちろん数億なんてカネはイメージできないし、ホテル暮らしなど不可能な人のほうが圧倒的多数だろう。

ただ、現代を生きていく上で私たちの生活にも通ずる部分はあるのかもしれない。要は、動き続けられるか。コスパ・タイパの考えも徹底していた。そして、「違和感を見つける」ことを非常に重要視している点が印象に残った。誰でも生活の中で「違和感」を抱く。それを流さずに繰り返し考えることで、野口氏は現在のような独自の生活にたどり着いた。派手な生活ぶりよりも、そうした自分を尖らせる態度を「ネオホームレス」から学ぶべきだろう。

   ◇   ◇

【ネオホームレス・SHO/野口昌一路(のぐち・しょういちろう)】

2005年、成城大学経済学部を卒業後、大手コンサル会社に入社。2010年、独立しシトラスを創業。飲食業界に特化したコンサルティングサービスのほか、飲食店経営、不動産、デザイン、発送代行など多くの事業を手掛ける。過去にはアパレル、出版、電気、アクセサリー販売事業などにも参入しており、売却した経験を持つ。2021年に現在のホテル暮らしを開始し、リュック1つで世界中を旅し続ける。モットーは3Sミッション「死ぬまでに知らないことを少なくする」。大人の尖った趣味のメディア「ケムール」にて、初の連載「ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-」が公開中。

(まいどなニュース・BROCKメディア/ケムール)

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