更年期のダイエットは老化のもと? ベストセラー作家が提唱 50歳を分岐にした「思秋期」の過ごし方
第二次ベビーブーム世代と呼ばれる1971~1974生まれの世代がアラフィフとなりました。これに伴ってか、50代の人たちに向けた健康、ライフスタイル、セカンドキャリア、お金の本が数多く出版されています。
購入させようと、老後の不安をあおるものもありますが、今回見つけた『差がつく「思秋期」の過ごし方 50歳の分岐点』(和田秀樹・著、大和書房)は、こういった「老後恐怖系本」とは真逆。鋭い指摘が多いものの、それらは全て不安を持つ50代の気持ちに寄り添い、そして解放してくれるコラム集でした。
和田秀樹さんは『80歳の壁』で知られるベストセラー作家ですが、本業は精神科医。これまた50代の多くが不安に感じる「健康面での正しい知識」もたくさん得られるという超画期的な一冊でした。
■10代の頃の「思春期」、40~60代に訪れる「思秋期」
まず、気になるのがタイトルにもある「思秋期」という時期。本書によれば、人間には体と心のありようが大きく変化する時期が2回あると言い、そのひとつが10代の頃の「思春期」。そして、もうひとつが40~60歳あたりに訪れる「思秋期」だと紹介しています。
「思秋期」とは大人から老人へと変わっていく時期で、いわゆる「更年期」のことを指します。しかし、本書ではさらに広い視点で「思秋期」を捉え、特に精神面での変化への対策について多くの事例(成功モデルも、そうでないモデル)をもとに、50歳を分岐として、どんな心持ちでいるべきか、老けないために何をすべきかなどをコラムで解説しています。
思春期を経て、人間は子どもから大人の男や女になる。大人になるとともに自分の性を獲得する。そしてそれは、思秋期で大人から老人になる際、ほうっておくと自分の性を失ってしまうということでもあるのだ。重要なのは、この時期を無為に過ごしてしまうと、自分の性を早く失ってしまう性的な意味だけでなく、早く老いてしまいかねないということである。(本書より)
■ダイエットをすることで人は老ける!?
「思秋期」に起こりがちな話とその対策が数多く紹介されているわけですが、特に興味深いのが「50歳になり、一気に老ける人と、若々しい人の差」について。本書にはこう書かれています。
男性が男性らしさを保つには男性ホルモンが必要で、女性が女性らしさを保つには女性ホルモンが必要である。つまり、若さを保っている人は、自分の性のホルモンをきちんと保全して、枯れさせないのである。<中略>もし私たちが、なるべく長い期間、老いを遠ざけておきたいと思ったら、思秋期のころに始まるホルモンバランスの変化を遅らせる必要があるわけだ。昔に比べてホルモンが枯れる時期が遅くなったとはいえ、何も意識せずに年を重ねていれば、そこには当然、個人差が大きく現れる。そこで、とくに注意したいのが、思秋期からのダイエットなのだ(本書より)
ダイエットと言えば、アンチエイジング術の筆頭のように感じていましたが、本書によれば、むしろその真逆であり、「ダイエットするとかえって老ける」と解説されています。
若さを保つためには体内で性ホルモンが分泌される状態をキープしなければならないのだ。なのに、その原料となるタンパク質やコレステロールの摂取を減らしてしまえば、自ら老いへと足を踏み入れているようなものであろう。また、タンパク質が不足すれば、髪の毛も抜けやすくなるし、肌もザラザラになっていく。美容のうえでも好ましくない。じつのところ、日本人の食卓が欧米化してきたとはいうが、まだまだ欧米人よりも肉の摂取量は少ないのが実態だ。(本書より)
このように、食事の量を減らすことは、必要な栄養素まで不足してしまうことにつながるとし、タンパク質の例で言えば、日本人は1日120~150gくらいまで肉の摂取量を増やすべきとも書かれています。
そのため、体形を気にしすぎて、思秋期からダイエットをおこなえば、生活の質(QOL)を下げることになるだけでなく、老化を促進してしまうことに……。場合によっては寿命まで縮めてしまうことになりかねないため、注意が必要だと本書では提唱しています。
■「足りない」ことは「余っている」ことよりも悪い
また、筆者が共感したという、アンチエイジングの第一人者・ショーシャ博士の理論も紹介されています。
「『食べすぎ』より『食べない』という害」
ビタミンは代謝に関わって体の調子をよくするし、タンパク質は臓器や筋肉、皮膚をつくる材料だ。コレステロールはホルモンや細胞膜の材料になるし、ブドウ糖が足りなくなれば脳がうまく働くことができない。人間が「美味しい」と感じるのは、甘み、うま味(アミノ酸 タンパク質)だが、よくしたもので、これらはすべて人間に必要な栄養である。つまり、「食べたい」という欲求があるものを体が欲しているともいえるわけで、私などはそう考えて、食べたいものを食べるようにしている。それに、いろいろなものを食べたほうが、微量栄養素の偏りもなくなって不足がないというものだ。じつは、人間の体にとって、「足りない」ことは「余っている」ことよりも悪いのだ。(本書より)
■「我慢しないで、思うままに生きる」を応援してくれる一冊
ここまでの紹介は本書のごく一部に過ぎませんが、これだけでもなかなか衝撃の話ですが、他にも、これまで「老後に向けてこうあるべきだ!」と脅迫的に考えられてきた話とは一線を画したコラムが続きます。結果的に50代の多くの読者が持つ不安を優しく解放してくれること、そしてその深く鋭い解説ばかりであることで、何度でも読み返したくなる一冊だと思いました。
最後に、本書刊行に至った話を、担当編集者に聞きました。
「ホルモンが減るといわれる時期である50歳前後。体も心も、男性も女性もそれぞれ、大きな影響を受けると、著者の和田先生から以前うかがいました。では、それを迎えるにあたり、『どのような対策がとれるのか』『そもそもそれは具体的にどういうことなのか』『詳しく知りたい人は多いのではないか』と思い、本にしたいと考えました。 和田先生は『80歳の壁』で今大変話題の著者ですが、実はずっと『思秋期が大事だ』と言ってきています。中国ではその考えが一気に広まったともうかがいました。50歳前後はまだ人生半分なのです。今すぐ意識して始められることがたくさんあります。日常習慣、食事、脳活など、本書を参考に、ぜひ一つでも実践してみていただければ幸いです」(担当編集者)
本書を読めば「50代からの人生の後半戦は我慢しないで、思うままに生きていいんだ!」と思えてくるはずです。ぜひ一度手にとってみてください。
(まいどなニュース特約・松田 義人)