「偽善かもしれないけど…」大雨被害の秋田で飲食店がおにぎり、うどんを無償提供 SNSでの告知に温かい声援が送られる

秋田県秋田市では、7月14日から降り続いた雨の影響で、道路の冠水や床上浸水などが相次いで発生。多くの市民が被災しました。秋田市防災安全対策課によると、19日朝の時点で避難している世帯は66世帯89人、被災家屋は約3万世帯に上ります。混乱のため、まだ調査にも入れていないそうです。

そんな中、奇跡的に店舗が無事だったうどん屋の「讃岐うどん2代目WATARO」(@2Wataro)さんは、店を開店。被災した人のためにおにぎりやうどんを無償で提供しました。中には「代金を払いたい」という人もいたので、自由会計にしたそうです。

「もし、WATAROまで来やすくてお腹が空いて困ってる方がいたらどうぞ、偽善かどうかかなり悩んだんですが、うどんもありますので。終了時間は未定です。」と16日にツイートしたところ、900回以上リツイートされるなど話題になりました。

リプ欄には、

「私も調理の仕事に携わっております。こんな時にこそ(特に食に関しては)人の本質を見るものだと、震災の時に学びました。本当に素晴らしい事だと思います。きっと皆さんも元気を分けていただいたことでしょう。お疲れ様です。私も頑張ります。」

「このような心温まる活動、本当に頭が下がります。復旧したら必ず食べに伺わせていただきます」

「沢山の方が救われていると思います。WATAROさんも連日本当にお疲れ様です。休める時に休んでどうか無理なさらず。一刻も早く大変な思いをしている方々に日常が戻るよう願っています。いつか秋田に遊びに行った時は、うどんを食べに行かせてください」

といった反響が相次ぎました。

現地は一体どんな様子だったのでしょうか。讃岐うどん2代目WATAROさんにお話を伺いました。

ーー被災地の状況を教えてください。

「正確には把握できていないのですが、秋田県の日本海側に大雨が降り続きました。秋田市では初めに太平川という川が氾濫し、秋田駅の東側が次々と冠水してしまいました。そのため、秋田駅周辺の道路、お店、家などが浸水し、車を運転する事も困難な状況で、道も水により閉ざされてしまいました。秋田県の他の地域でも被害があるようですが、秋田市では建物の中に汚水が入り、水が引いた今、汚れてしまった家具や家電、家の掃除、車のレッカーなどが大変そうです。うちは高台にあるので被災しなかったのですが、店舗は浸水していると思っていました」

ーー店は無事でしたか。

「氾濫の恐れがあった旭川から1分のところに店があるので、浸水するだろうし、しばらくの間営業出来ないだろうなぁと思っていましたが、朝見に行ったら奇跡的に何も被害がありませんでした。むしろ、川から遠い所の被害が大きかったようです」

ーーなぜおにぎりとうどんを提供しようと思われたのですか。

「朝、店が無事であったことが本当に有り難かったです。駅の近くにある沢山の飲食店が浸水していることを知り、店を開けられる感謝の気持ちが先に湧きました。店を休んで被害にあったお店や友人宅を助けに行くことも考えましたが、目の前に衛生が守られた厨房があり、雨で中止になったイベント用に沢山の食材を仕入れていたので、私の仕事はご飯を作ることだな、と思ったのです」

「浸水した仲間が逆の立場なら同じことをしたような気がしたので、こうした方法を選びました。讃岐うどんの店なので、うどんと、気持ちが滅入っていても食べられるおにぎりを作り、パッと渡せる準備をしました。」

ーーみなさん食べに来てくれますか。

「ツイッターを見た方がおにぎりをもらいに来て下さいました。夢中で3升分のお米を握って、何個だったのか数えていませんが、全部お渡しできました。ツイッターを見た農家さんがお米を差し入れてくれたので、隣の大通りの浸水したお店にも持って行くことができました。」

ーーこの試みをして良かったと思われますか。

「目の前にある自分が今できることをしただけなので、おせっかいなんだろうか? 偽善なんだろうか? と考えると少し勇気が要りました。無料で良いのに、県民性なのか、『支払わせて下さい』とお代をお支払い下さる方もいらしたので、払った方が気持ちよく食べれるならと、『自由会計』として、払っても払わなくても良いことにしました。そのこともTwitterで広がり、『うどんは支払います、おにぎりはいただきます』という方が沢山来られて、こちらの心が洗われました。実際被害に遭っていなくても、心が暗くなってしまった方もいます。おにぎりを渡して笑顔になっていただけて、県外の方にまでツイッターで『ありがとう』と沢山お声をかけていただけました」

ーー困っている方に伝えたいことはありますか。

「浸水や土砂災害、ライフラインの確保、まだまだたくさんの支援が必要だと思います。道路が寸断されて、被害のあった場所に迅速にお届けに行けなかったのですが、同じように炊き出ししている飲食店があれば、そのご飯を食べられる人がいます。その人が、また誰か困っている方に手を差し伸べられるかもしれません。すると、ありがとうが連鎖するような気がします。私のおにぎりと元気でよければ、いつでもWATAROにいらしてください」

おにぎりはイレギュラーメニューですが、塩むすび、仙台味噌とチーズの炙りむすび、白胡麻明太子、梅、おかかから選べます。うどんは5色ぶっかけうどんというのが1番人気。ガリの天ぷらが乗っているそうです。「ありがとう」の輪の中にあなたも入ってみませんか。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス