愛猫を腎不全で亡くした飼い主が食器開発 水飲む量、一目で 「もっと早く変調気づいてあげられたら…」後悔を胸に凝らした工夫
飼い猫が毎日、どれくらい水を飲んでいるかを手軽に把握できる波佐見焼の猫用食器「ウォーターボウル」が発売され、猫好きの間で話題になっている。食器を製作したのは「303CATLAB」(長崎県佐世保市)の代表・田口健司さん(51)。可愛がっていた猫の病気に気づけなかったことが開発のきっかけだったという。
10年前まで、田口さんはミックスの愛猫「れお」(オス、14歳で没)を飼っていた。生後約1ヶ月のころ、田口さんが自販機でコーヒーを買おうとしていたところ、鳴き声がするので見ると、自販機のかげでうずくまっている子猫を見つけた。そのまま放っておいたら死んでしまうかもしれないと保護。おとなしい性格で、先住猫ともすぐ仲良しに。長年、病気もせず、家族の一員として可愛がってきた。
れおが14歳になったある日のこと。「元気がなくなり、いつもと様子が違うので病院へ連れていったところ、腎不全と診断されました。病気はすでに進行していて、延命処置しかできないとのことでした。自宅で1日おきに点滴を打つなどして介抱していましたが、しばらくして虹の橋を渡りました。もっと早く気づいてあげられていたら…。もう10年も前になりますが、反省と後悔の念がずっと心のどこかにありました」
あるとき、「猫が毎日どれくらい水を飲んでいるか。多飲多尿になっていないか。日々の水分摂取量は健康のバロメーターの一つになる」との獣医師の話を聞いて、「それなら毎日飲んだ水の量がわかる食器があれば、と思いついたんです」
2022年2月、勤めていた仕事を退職したのを機に、田口さんは猫用食器の試作に取り組んだ。地元の波佐見焼の窯元を知人に紹介してもらい、皿と土台が分離するオリジナルの食器を作ってもらうことに。飲みやすさやデザインにもこだわり、佐世保市内にある動物病院の監修のもと、約10ヶ月かけて「ウォーターボウル」を完成させた。
高さは8センチ。皿と土台が分かれるのが特長だ。皿の内側には150mlから400mlまで25ml刻みの目盛が2箇所、外側には0から11までの数字(時間)が描かれており、水を入れた時間と土台の印を合わせる。たとえば朝7時に400mlの水をセットし、翌朝7時に200mlだった場合、1日で200ml飲んでいることがわかる。皿に水を入れた時間を忘れず、飲んだ水の量も一目でわかるのがミソだ。アナログだが手軽に毎日続けられ、コストもかからない。
「獣医師さんによれば、毎日、猫が水をどれくらい飲んでいるかを把握している飼い主さんって意外と少ないんだそうです。猫によって1日に飲む量には差があると思いますが、毎日チェックしていると、うちの猫はだいたい毎日これくらい飲むなという数値がわかってきます。トイレの回数、尿や便のチェックなどとともに、水分摂取量も意識すれば、体調の変化にいち早く気づくことができます。病気の早期発見ができれば治療の選択肢もいろいろあるでしょうし、病気が治る可能性も高まると思います。この食器を使っていただくことで、少しでも飼い主さんと猫ちゃんが幸せになってくれたら嬉しいです」と田口さんは話している。
(まいどなニュース特約・西松 宏)