鰻の良し悪しは大きさでは決まらない? 「美味しい鰻」を見抜くコツ、専門店に聞いた
今年の夏は、全国的に平均より暑いと言われています。7月下旬から8月初旬にかけてが特に暑さが厳しくなるとの予報もあり、熱中症対策などを十分にしておくことが必要です。そしてこの時期に食べたくなるのが鰻。日本では古くから、土用という季節の変わり目の体調を崩しやすい時期に、精をつけるものとして食べられてきました。
スーパーマーケットなどでも販売されていますが、しかし、1本千円前後のものから数千円にも及ぶものまで様々。鰻の激戦区とも言われる群馬エリアにオープンした鰻専門店『鰻まいもん 焼き一生』を展開するエムアンドケイの取締役、木下隆介さんに美味しい鰻の選び方などを解説してもらいました。
■鰻の美味しさは「大きさ」で決められるものではない
スーパーマーケットなどで鰻を買う場合、産地もさることながら大きさで選ぶ人が多いと思います。が、それは正しい選択ではないそうです。
「鰻は、専門店はもちろん、スーパーマーケットなどで流通しているものも全てそうだと思いますが、一度蒸してから焼く方法、そのまま焼く方法などがあります。好みにもよりますが、私たちの考えでは、いずれの工程においても、鰻の身が適度にシマって焼き上がったものが美味しいと考えています。しかし、こういった鰻は必ずしも身が大きいとは限りません。適度に身をシメ凝縮させる、ということは本来の身よりも小さくなることもあります」(木下さん)
■小売の鰻はベルトコンベアで焼かれるものが多い?
産地については。一般に海外から輸入された鰻は比較的安価で、対して国内の特に福岡県、愛知県、静岡県といった名産地のものは高額になる傾向があります。
「一概には言えません。『名産地のものだから必ず美味しい』とは限りません。各業者さんがどんな養殖を行なっているか、その際に鰻に与える餌はなんなのかなどもしっかり把握しないと、事前に『美味しいかどうか』を判断することは難しいと思います。ただし、名産地の養殖業者さんの中でも、本当に美味しい鰻ばかりを生産する業者さんの鰻はまた別です」(木下さん)
木下さんによると、スーパーマーケットなどで流通している鰻の大半は、ベルトコンベア方式で焼かれて、最後にタレが塗られて商品になるものが多いそうです。一定の味は担保されているはずですが、どの鰻が美味しいかについては、食べてみるまでわからないのが実際のところです。
■実はブレが出やすい「継ぎ足しのタレ」
木下さんが運営する『鰻まいもん 焼き一生』では、鰻のタレでよく聞く「継ぎ足何十年」といったものを使わないそうです。
「これも食べる人の好みによると思いますが、当店で出している鰻は愛知県の三河産の、厳選した養殖業者さんのものです。生の状態から蒸し焼きにする直前で職人がさばいた後、さきほど言ったような適度に身をシメ凝縮させるように丁寧に焼き上げています。炭化するかしないかのギリギリのところで焼き上げてご提供しますので、継ぎ足しの濃いめのタレというのは合わないんですね。また、継ぎ足しのタレは、何回も何回も継ぎ足していくわけですから、どうしてもブレが出ますのでこれも良くない。そのため、当店では全窒素量が2.0%以上という、地元・群馬の良質な醤油を採用し、その日ごとの使い切りのタレを作っています」(木下さん)
■鰻はラーメンと同じで実は様々な味がある
さまざまな工夫の末、美味しい鰻が仕上がるわけですが、あくまでも「味は好みだ」とも木下さんは言います。
「ラーメンと同じで、鰻と言っても、生産地・調理法はもちろん味の仕上がりも実は様々です。そんな中で当店は、鰻の素材本来の味を引き出しながら、仮に鰻が苦手な人であっても美味しくいただけるよう仕上げています。現に、私の知り合いで40年以上『鰻を苦手』とし、食べてこなかった人が当店の鰻を食べて『これは美味しい』と言ってくれた人もいました」(木下さん)
結局のところ、鰻の味の良し悪しは食べてみないとわからないようです。流通品よりも専門店で、さばきたて、焼きたてをいただくほうがよさそうです。専門店の鰻は高額ですが、夏を乗り切るためにもちょっと奮発して食べてみてはいかがでしょうか。
鰻まいもん 焼き一生
https://yakiissyo.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)