傘やコーンで応援!「ツバメに優しい」ショッピングモールから今年もヒナ巣立つ 日本野鳥の会から2年連続感謝状も

■ショッピングモールで大人気のツバメたち

梅雨も明け、各地の軒先に巣を作っていたツバメたちもほとんどが巣立っていきました。

今年、大阪の「せんちゅうパル」というショッピングモールのツバメの様子をuchikoさん(@uchiko04097551)がTwitterに投稿し、注目されました。

「近所の駅直結モール、毎年ツバメに優しくて大好きなんだけど、(至る所に巣があって『優しく見守ってね』とガードしてある)巣立ち間際?の雛がいて、むっちゃ可愛くて皆に大人気でした。元気に巣立ってまた来年戻ってきてね~」

リプ欄には、

「赤に水玉の傘、ツバメさんによく似合って。素敵なアイディアですね~」

「野生の生き物達も子を守り育てて行くのに必死。私達人間と子を思う気持ちは一緒のはずです。

優しく見守る心をもつ人が増えますように」

「ツバメに優しいモール、最高ですね。エサをもらうときに羽をバタバタさせる雛がかわいすぎます」

など、心温まるリプライがたくさん寄せられ、「いいね」は5.8万件にもなりました。

ツバメが巣立った後には、傘に「無事、ヒナが旅立ちました。皆様、温かく見守ってくださり、ありがとうございました」というメッセージが張り付けてあったそうです。

ずっとツバメの成長を見守ってきたuchikoさんにお話を聞きました。

ーー傘はモールの方が設置してくれたのですか。

「傘は私が写真を撮ったところ以外にもあります。いつからかは分かりませんが、ここ数年は確実にあります。この傘も商店街のお店の横ですので、お店の人も了承していると思います。傘の下には『優しく見守ってね』と張り紙をしたコーンが置いてあるんですよ!高所にできている巣には、どうやってつけられたかは分かりませんが、ダンボールの糞よけが設置されていました」

ーー傘に留まっているツバメもいるのですね。

「傘の上方にダクトがあり、そこに巣があります。私が初めて見た日は、1羽だけ傘の上に降りてきていました。傘は巣から少し離れているので、傘に落ちて巣に戻れなくなったのでは…と心配しましたが、ある程度飛べるように成長したので、傘まで降りてこられたようです。ちなみに傘に降りている雛は初めて見ました。珍しいからか、ギャラリーの人数がすごかったです」

ーー風物詩のようになっているのでしょうか。

「毎年のことなので、地元の人なら知っていると思います。ヒナの声が聞こえるので、『あ、ひながいるね!』と立ち止まる人も多いです。巣は多少見にくい所にあるのですが、この日は傘のところまで降りてきていたのもあり、みんな足を止めて見入ったり、写真を撮ったり動画を撮ったりしていました。餌を食べる時には歓声も上がっていました」

「みんな笑顔だったのが印象的です。老若男女立ち止まって見ていましたから、みんなの癒しになっていたのではないでしょうか」

■日本野鳥の会が感謝状を贈呈

ここを通りかかる人たちが見守ってきたツバメですが、せんちゅうパルの関係者も傘を取り付けたり、コーンを設置したりして、ツバメを応援してきました。日本野鳥の会では、ツバメを見守っている団体や企業に、毎年感謝状を贈呈しているのですが、せんちゅうパルもそのひとつ。2022年から2年連続で表彰されたそうです。

日本野鳥の会の普及室でツバメの子育て応援事業を担当している井上さんにもお話を聞きました。

ーー傘を逆向きに差しかけるのには意味があるのですか。

「傘をかける理由は、主にふたつあると思われます。ひとつは、フン受けとしての役割です。ツバメのフンを巣の下に落とすため、どうしても掃除や、ツバメに注意する呼びかけが必要になってきます。傘を設置することで、利用するお客様にフンがかかる心配も減り、子育てが終わり次第、傘を撤去すればよいので掃除も楽になります。もう一つは、ツバメの巣の保護です。ツバメの主な天敵にカラスがいます。カラスは下から蹴り上げるようにしてツバメの巣を襲うため、巣の下に傘を設置することでカラスから巣を守ることができます」

ーー近年はツバメが減少しているそうですね。

「理由はふたつ。まずひとつは、里山の自然や農耕地の減少です。身近だった里山の自然が宅地化などで減り、農業の衰退により水田や耕作地が減少し、ツバメのエサとなる虫が少なくなっていることが考えられます。エサの減少は、子育ての成功率にも影響します。また、西洋風家屋の増加も影響しています。ツバメは民家の軒先などに巣を作りますが、最近の西洋風家屋では軒のないものや、壁面が加工されて巣が作りにくいものもあるようです。巣を作る環境が減ってしまい、その結果、繁殖が困難になりました」

ーー私たちにできることはありますか。

「ツバメは天敵から身を守るために、あえて人の近くを選んで子育てを行っています。しかし、フン害や衛生面を理由に、巣が撤去されてしまう事例も報告されています。傘の設置のように、少し工夫することでツバメと人が共生することができます。ツバメも、営巣場所探しやエサ不足など、さまざまな困難の中で子育てを行っていますので、ツバメの巣を見つけた際には、温かく見守っていただければと思います」

今年は、14道県27の団体が日本野鳥の会から表彰されたそうです。環境省の調査では、フン問題で悩む商店も多いそうですが、来年、ツバメが飛来してきたら、ぜひ傘を差しかけてあげてください。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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