全身のイボに苦しむトイプードルの保護犬 スタッフを愛情を一身に受けていたのに 病院から悲報「心臓が止まりました」
主に埼玉・茨城の動物愛護センターから、行き場を失ったワンコを引き出し、新しい里親さんへと繋ぐ活動をする犬保護団体・restartdog LIEN(以下、リアン)。2023年冬の日、同団体に引き取られた小さなトイプードルのワンコがいました。ゆめちゃんというメスのシニア犬で、スタッフの顔を見ておびえていました。そして、その体にはかなりの数のイボもあり、ゆめちゃんが保護以前に過ごした環境が劣悪だったことを感じさせました。
■イボの治療で全身絆創膏につき写真を断念
ゆめちゃんは、リアンのスタッフ・サキママさんの家に預けられることになしましたが、やはりおびえている様子。しかし、優しいサキママさんは「大丈夫だよ、ゆめちゃん。怖くないからね」と声をかけました。そして、まずはこのイボを早くなんとかしてあげたく、すぐに病院へと連れて治療を行なってもらうことにました。
イボはすぐに取ることができましたが、全身絆創膏状態となり、さらに頭の毛には段差もできてしまいました。
このことから、完全に良くなるまでは、里親募集やSNSなどに載せるための写真撮影はさほどしませんでした。サキママさんはゆめちゃんに「完全に良くなって、毛が生えたら綺麗にトリミングをしてもらい、かわいい写真をたくさん撮り、新しい家族を探すようにしようね」と言いました。
■「ゆめちゃんのお腹の中に虫がいる」
ゆめちゃんのイボの治療が進み、少しずつ体がきれいになってきたため、いよいよトリミングに行く計画を立て始めたサキママさん。「これから今まで以上にかわいくなってね!」とゆめちゃんに言いましたが、そんな中で異変が起きました。
ゆめちゃんがご飯をおやつを突然食べなくなってしまったのです。さらに、下痢や嘔吐の症状もあったため、すぐに病院に連れて行くことにました。
診てもらったお医者さんによると「ゆめちゃんのお腹の中に虫がいる」とのこと。さっそく吐き気止め・下痢止めの注射を打ち、薬も処方してもらいましたが、さらに翌日、ゆめちゃんはやっぱりご飯を食べてくれません。そればかりか、グッタリとし始め、口からは血の混じったヨダレを垂らしています。「これはおかしい」と、再度病院に連れていき、昨日以上の精密な検査をしてもらうことにしました。そこでわかったことは、多臓器不全というもの。胆嚢、腎臓、膵臓、肝臓の全ての数値が通常の何百倍も悪く、さらには腹水も溜まっている状態でした。
ゆめちゃんの体調は、想像以上に悪かったことから、サキママさんはすぐに入院させることを決意。何かあった際には、すぐ駆けつけられるよう家で待機することにしました。
■最後の触れ合いとなった「がんばってね」
病院でサキママさんはゆめちゃんの頭をなでながらこう言いました。
「ゆめちゃん、また明日来るからね。今はとても辛いと思うけど、どうかがんばってね」
ゆめちゃんは過去のバックボーンが影響しているのか保護当初から抱っこを嫌がっていました。手を差し伸べても逃げてしまいました。
サキママさんは「いつか絶対に心を開いてくれるはず」とゆめちゃんが嫌がらない程度に、よく頭をなでていました。そして、いつの日か「この人は敵じゃない。味方なんだ」とゆめちゃんが思ってくれ、いつかは「なでて」とゆめちゃんが甘えてくることを信じていました。
■「ゆめちゃんの呼吸と心臓が止まりました」
入院当日の晩は、病院からの連絡はありませんでした。そして、翌日の朝一番にサキママさんが病院に連絡を入れたところ、「昨日より元気がない」とのことでした。そのため、この日の夕方にサキママさんは面会に行くつもりでしたが、午前10時45分頃に、病院から電話がありました。サキママさんはドキッとしましたが、病院から言われた言葉はこうでした。
「ゆめちゃんの呼吸が止まりました。今心臓も止まりました」
サキママさんは肩を落とし言葉を失ってしまいました。
他のどのワンコよりもおとなしく、おびえながらもサキママさんの背中をじっと見つめていたゆめちゃん。イボの治療があったためかわいい写真を撮ってあげられず、そして新しい家族を見つけてあげられなかったことをとても悔やみました。
しかし、ゆめちゃんとわずかではあったけれど、一緒に過ごせたこと、そしてご飯もおやつも食べてくれ、散歩もしてくれたことは感謝しかないとも思いました。
小さな体で病と闘いながら希望を与えてくれたゆめちゃん。虹の橋を渡ることになってしまいましたが、これからはきっと天国からサキママさんを始めとした、リアンのスタッフたち、そして仲間のワンコたちを見守ってくれることでしょう。
(まいどなニュース特約・松田 義人)