「一番かわいいのは私!」元気印の三毛猫と女子力100万点の長毛猫が、“仁義なき女の戦い”に突入! 5年もの争いの果ては
猫の多頭飼育は、猫同士の相性が難しい。そんなことはヨソの家の出来事だと、長崎県で暮らすC家のお父さんは考えていました。家にいる4匹の猫たちは優しい性格で、ケンカをすることなんてなかったからです。
2014年8月11日に月齢3カ月ほどの子猫が家に迎えられた時も、猫たちの優しさは発揮されました。乳母日傘でお世話をし、子猫はすくすくと成長します。その子猫こそ、今もC家の元気印と評判のマルコちゃんです。
■網戸に張り付いた子猫
マルコちゃんはC家から500メートル離れた、ドラッグストアにいました。母猫とはぐれたのか1匹だったのだそう。それを近所の小学生男児が、夏休みの間、自分たちで育てようと住宅地に連れてきたのです。1週間ほど、ご飯をあげたり遊んだり。
ところが台風が来るというのに、何の準備もしていません。強い風と雨が小さなマルコちゃんの体を打ち付けます。マルコちゃんは何とか、風と雨をよけられる場所を探しました。
ようやく見つけたのはC家。掃き出し窓の網戸にしがみついて、必死に叫びます。
「ここをあけてー!」
お父さんもお母さんもびっくりです。網戸に子猫がくっついているんですから。すぐ窓を開け、マルコちゃんを家に入れます。この時はまだ、どこの猫か分かりません。台風が過ぎたあと調べると、小学生が世話をしていたと判明。
お父さんは小学生たちに伝えます。
「この子はうちでお世話をするから、会いたくなったらおいで」
夏休み期間中、小学生はかわるがわるマルコちゃんに会いに来ていました。
■優しいお兄ちゃんお姉ちゃんとの別れ
さて、マルコちゃんはというと隔離期間を終え、リビングデビューを果たします。4匹の猫、ぽこちゃん・ロッシくん・ヘイデンくん(通称・デンデン)・うめちゃんがお出迎え。皆、マルコちゃんを猫かわいがり。
マルコちゃんは今までの不安な生活が一変し、優しいお兄ちゃんお姉ちゃんに囲まれ、何不自由なく過ごします。中でもロッシくんは、まるで我が子のようにマルコちゃんを可愛がってくれたんです。
しかし、2016年初夏にロッシくんが腎臓病で他界。続いてほんわかお姉さんのうめちゃんも、永の別れになってしまいました。優しい2匹が旅立ち、マルコちゃんは胸にぽっかり穴が空いたかのよう。
お父さんはマルコちゃんが寂しくないよう、今まで以上に可愛がるようになりました。毎日、「かわいい」と言って撫で、一緒に遊び寝ます。次第にマルコちゃんは元気を取り戻し始めました。
でも、お母さんがロッシくんとの別れを乗り越えられずにいたんです。まるで天使のような清らかで優しかったロッシくんとまた会いたい…。
■鳴り響くゴング
2016年10月、お父さんとお母さんは島原市を訪れていました。そこで偶然、地域の方がお世話をしている猫が生んだ子猫を目にした時、お母さんは驚きます。ロッシくんの面影があったのです。
生後3カ月ほどの長毛の子猫は、生まれた時期がロッシくんが亡くなった時期とほぼ同じ。毛の色も性別も違うけれど運命的なものを感じ、子猫を譲ってもらうことにしました。その子猫こそ、のちにマルコちゃんのライバルになるふうちゃんです。
C家に迎えられると、マルコちゃんの時と同じくぽこちゃんとデンデンくんは乳母日傘でお世話を焼きます。ぽこちゃんとデンデンくんの愛情を受け、すくすくと大きくなるふうちゃん。
ある時、ふうちゃんは気付きます。ぽこちゃんとデンデンくん、お父さんお母さんは私をチヤホヤしてくれるのに、家の中でただ1匹だけチヤホヤしない存在がいることを。
マルコちゃんも同じ時期に考えていました。今まで家の中で一番可愛いと言われていたのは私なのに、なんであの小娘はデカイ顔をしているのかと。
女の仁義なき戦いの火蓋が切って下ろされました。
■「わたしが一番かわいい!」
とはいっても、殴り合いのケンカはしません。片方がお母さんに可愛がられていると、もう片方が「わたしをかわいがって!」とアピールするだけ。ふうちゃんは潤んだ瞳で上目遣いをしたり、足元でスリスリしたり。一方、マルコちゃんは吠えるように鳴くんです。まるで犬のよう。時々、「ワン」って鳴くこともあるんですよ。
お母さんはニコニコ笑いながら、2匹を平等に可愛がります。お父さんも2匹に取り合いしてもらいたくて、ふうちゃんにアピールするのですがけんもほろろに。どうやら、お父さんはマルコちゃんの付属品だと思われているよう。まとめて「敵」。
そんなんですから、お父さんはいつもマルコちゃんに慰めてもらっています。それなのに、時折、ふうちゃんは女子力100万点でアピールしてくるではありませんか。お父さんは、つい「ふうちゃん、可愛い!」と言ってしまいました。マルコちゃんは激おこです。
デンデンくんは女の戦いが怖く、マルコちゃんとふうちゃんがバチバチに火花を飛ばしていると部屋からそっと出ていくんです。触らぬ神に祟りなし。ぽこちゃんはマイペース。
■戦いの果てに
5年ほど続いたこの戦いの終止符は、ある日突然打たれました。理由は定かではありません。なぜか、マルコちゃんとふうちゃんが一緒にいるようになったのです。お父さんもお母さんもビックリ。でも、2匹とも心の中では、今でも「わたしが一番かわいい」と思っていそう。
お父さんはようやくふうちゃんの「敵認定」も外され、今では少しだけ撫でさせてくれるように。マルコちゃんから向けられる視線は痛いけれど、お父さんは幸せです。
現在は平和になったものの、お父さんから2匹にお願いがあります。それは、穏やかな猫のお手本のようなぽこちゃんを見習ってほしいこと。誰かに1番を決めてもらうんじゃなく、どーんと構えてほしいんです。
でも、そうなってしまったら、マルコちゃんとふうちゃんの良さが消えちゃいそう。やっぱり、ありのままの我がままな姿でいてほしいと願うお父さんでした。
(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)