下町ロケットならぬ下町メンズ化粧品 町工場の長女が男性用UVカットクリームを開発 コロナ禍で苦境の父助けたい!

■これまでの日焼け止めクリームを裏切るクリーム

光にかざすと渋く光る、高級感のあるパープルの箱。中から出てきたのは、同じ色調の円筒形の容器だ。

日焼け止めクリームには「ベタつく」「白浮きする」「毛穴がふさがれる感じがする」などのネガティブな印象を持つ人も少なくない。そうした欠点を無くした男性用日焼け止めクリーム『BLANC HOMME(ブラン・オム)』が、今年6月に発売された。

美容成分たっぷりで肌に優しいノンケミカル処方。ワンプッシュで顔全体に塗れば、一日のスキンケアは終了だ。「SPF50+」「PA+++」の効き目でオールインワンという手軽さ。これを作ったのは、大阪市内にある町工場の経理担当、藤原円香(まどか)さんだ。

「私がイメージする健康肌は、ツヤのある肌。自然にきれいに見える男性の肌を実現したかった」。それを踏まえ、男性が使いやすい化粧品とは何かを考えた。「多くの男性はシンプルなケアが好み。だから洗顔後にワンステップで済むよう、オールインワンタイプにしました」

藤原さんの勤める会社は、アメリカやメキシコ、東南アジアなど紫外線の強い国への出張が多いという。そこで実際に出張する社員に現地で試してもらい、効果を検証した。

「男性用ですが、女性や子どもの肌にも付けられます。パッケージの色を紫にしたのも、男性も女性も躊躇なく手に取れるユニセックス感を出したかったから」

夏の時期のスキンケアは諦めている筆者も試してみた。まず日焼け止めクリーム特有の匂いがないこと。また汗をかいてもほとんど化粧崩れせず、肌のしっとり感が続くことに驚いた。

■なぜ日焼け止めクリームだったのか

ところで、なぜ日焼け止めクリームだったのだろうか。

「見た目に影響するシミ、シワ、たるみなど、肌の老化の一番の原因は紫外線によるダメージと言われています。逆に紫外線さえしっかり防げば、肌はかなり良い状態を保てるのです」

今でこそ肌の美しい藤原さんだが、10代の頃はニキビだらけのクレーター肌に悩んだという。そこで当時、美容クリニックに勤める叔母に相談して5年ほどかけて改善した。

「コンプレックスが消えて嬉しかったけれど、驚いたのは、急に周囲から『若くなった』と言われたことでした」

肌の状態は人をポジティブにするだけでなく、見た目の印象を大きく変えることを確信した藤原さんは、肌の美しさを根本から支える日焼け止めクリームに着目。さらに、美容クリニックのスタッフの嘆きもヒントになった。

「最近はシミの除去をする若い男性が増えたけど、ケアまではできていない。除去した肌は弱っているので、その後の日焼け止めクリームは必須なのに…」

■カナモリのもう一本の柱に

実は藤原さんが勤める従業員10名ほどの会社「カナモリ」の社長、金盛清さんは藤原さんの父だ。カナモリは高い専門性を武器に、自動車メーカーなどの大手と仕事をしている。創業と同じ時期に生まれ、会社の成長と共に育った藤原さんの、家業に対する思いはひとしおだ。

藤原さんは大学卒業後、機械メーカーの輸出入を担当する部署に3年勤め、結婚退職。しかしあるきっかけで知り合った女性社長と、つけ置き用洗濯洗剤「リネンナ」の開発に携わる。そこで結婚後も社会で思い切り活躍する女性を間近に見ながら、消費者が求める妥協のないものづくりのやり方や考えを学んだ。

カナモリがコロナ禍で苦境に陥ったとき、家業を支えたい一心から、藤原さんはある行動に出た。本業が難しくなった企業が新たな事業を始める際の補助金制度「事業再構築補助金」に申し込んだのだ。その新規事業こそ、日焼け止めクリーム『BLANC HOMME』。約1年半の試行錯誤の末に開発から製造、販売にまでこぎつけた。

カナモリは、これまでもリーマンショックやコロナ禍などに振り回されてきた。社長の清さんは「景気が悪くなれば買い控えが起こる本業に対し、化粧品はそこまで景気に左右されない。もう一本柱を作り、カナモリを二本柱で支えられたら。娘を応援しています」と目を細めた。

現在『BLANC HOMME』は、自社ECサイトと通販サイトの楽天、一部美容クリニックで販売中。

■BLANC HOMME Webサイトhttps://blanchomme.jp/

(まいどなニュース特約・國松 珠実)

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