地震、台風など高まる自然災害リスク…約3割の自治体が「災害発生時の”初動対応への対策”が不十分」

関東大震災から100年という節目の年を迎えた2023年。南海トラフや首都直下型地震に加え、気候変動による豪雨なども増加し、自然災害によるリスクが高まるなか、自治体でも柔軟に対応できる防災対策が求められています。

こうしたなか、災害発生時の初動対応について、3割近くの自治体で「災害発生時の”初動対応への対策”は不十分」と回答していることが株式会社Spectee(東京都千代田区)の調査で明らかとなりました。

調査は、自治体で防災・災害対応に関連する業務従事者1012人を対象に、「2023年度版 自治体の防災対応での課題に関する調査」と題して2023年5月にインターネットで実施されました。

まず、日本全国を「北海道地方」「東北地方」「関東地方」「中部地方」「近畿地方」「中国・四国地方」「九州地方」の7エリアに分けたうえで、「現在、重点的に対策をしている災害」を複数回答で答えてもらったところ、いずれのエリアも「地震対策」が7割前後で優先的に実施されていることが分かりました。そのほかでは近年増加している「台風対策」「水害対策」を重視する傾向が見て取れました。

続いて、「災害発生時に直面する課題」について複数回答で答えてもらったところ、「初動対応が迅速にできない」(43.5%)、「刻一刻と変化する状況を把握することが難しい」(42.1%)、「住民へいかに迅速に情報を伝達するか」(36.0%)などに回答が集まったほか、「人手不足」(33.6%)や「避難所の運営や環境の改善」(12.9%)などを挙げた担当者も見られました。

さらに、「直面する課題に対しての対策(検討含む)」についても同様に答えてもらったところ、「関係各所との連携を含めた訓練」(45.9%)、「インターネットのウェブサイトを通じた情報収集」(35.9%)、「職員間のコミュニケーションツールの導入」(33.9%)などが挙げられています。

また、「災害発生時の”初動対応への対策”」については、28.7%の担当者が「できていない」(あまりできていない:26.8%・全くできていない:1.9%)と回答し、2020年の38.6%から改善傾向ではあるものの、まだ課題を抱える自治体は多いことが明らかとなりました。なお、それぞれの回答について回答者からは以下のようなコメントが寄せられています。

【できていない】

▽確実に連絡を取れる方法が確立できていない(山口県)

▽通信機器、特にネット環境がダウンした際の対策が不十分(福島県)

▽人員不足に加えて、デジタル技術を理解し使いこなせる人が少ない(岡山県)

【できている】

▽初動対応の職員が決まっており、定期的に研修や訓練を行っている(宮城県)

▽避難が困難な方との速やかな連絡方法を模索中(島根県)

▽場所の確保や最低限の必要なものは揃っているが、避難者が増えると対応ができない(京都府)

次に、「大規模災害においてデジタルを活用した対策」について聞いたところ、89.3%の担当者が「必要だと思う」(必要だと思う:49.2%・どちらかといえば必要だと思う:40.1%)と回答。

さらに、「デジタルを活用することで期待する成果・効果」を複数回答で答えてもらったところ、「迅速な情報収集」(53.2%)、「災害リスクの予測」(45.5%)、「情報伝達手段の構築・最適化」(43.3%)などに回答が集まり、デジタル技術の活用によって、迅速な情報収集が可能になることを期待する自治体が多く見られました。

あわせて「デジタルを活用した防災対策に取り組み」の実施状況について聞いたところ、「取り組めていない」と答えた割合は、全体では28.1%に。「初動対応への対策が不十分」と答えた290人に限ってみると、57.9%と2倍以上の割合に上ることが分かりました。

最後に、「デジタルを活用した防災対策においての課題」を複数回答で答えてもらったところ、「予算がない」(42.5%)、「デジタルを活用できる人材がいない」(41.5%)、「個人情報・プライバシー等の取り扱いの懸念」(36.2%)などが上位に挙げられ、自治体で防災DXを促進するためには、予算や人材の確保といった基盤を作ることが重要であることがうかがえました。

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