カウンタック、ミウラ、フェラーリ365GT4 憧れの名車に会いに姫路・トリノミュージアムへ
1970年代後半、スーパーカーブームがありました。箱型のセダンが当たり前だったその頃、イタリアからやってきた宇宙船のような形をしたクルマに当時の子どもたちはハートをわしづかみにされたのです。
■スーパーカーブームとは
ブームに火をつけたのは、1975年から週刊少年ジャンプで連載された、池沢さとしさんの漫画「サーキットの狼」だったとされています。その頃の日本は高度成長期の出口付近でしたが、誰もがなんとなく未来は明るいと感じていて、それまで見たことのない乗り物に未来を感じていたのかもしれません。筆者は小学校高学年のころ、このブームの洗礼を受けた世代です。
そんな筆者にとって、一度は訪れなければならない場所が姫路にあります。それはトリノミュージアム、クルマ好きのオーナーが個人で開いた自動車博物館です。
■自走式立体駐車場を利用した展示施設に夢のスーパーカーが
もとは7階建てのタワーパーキングだった建物の、4階から6階の部分を閉鎖してそのまま展示スペースにしています。なので、ミュージアムのエントランスは、7階でエレベーターを降りて併設のレストランの奥、6階にあります。
自走式立体駐車場を歩いて下りながら見学していくスタイルです。まず最初はフェラーリのエリア。
スーパーカー世代の神々、黄色い365GT4/BBに白いディーノ、最初の1年しか製造されなかったグラスファイバーボディの308GTB Vetroresinaといった方々がずらっと並んで居られます。そして振り返ると、日本に1台しかない288GTO。ワンオーナーで実走2000kmなんだそうです。これは貴いです。
次のエリアには4シーターのフェラーリがずらっと並んでいます。中でも365GT/4 2+2。この個体の元のオーナーは北イタリアの貴族だったそうですが、なんとエンツォ・フェラーリが自ら運転して届けたと伝わる、いとやんごとなき歴史を経てきたものです。そう思って改めて拝見すると、神々しいような気がしてきます。
フェラーリにライバル心を燃やしたのがランボルギーニ。元はトラクターなどを作っていた会社で…といううんちくはスーパーカー世代にとっては有名ですが、ではそのトラクターっていったいどんなものだったのかと聞かれると答えに詰まってしまう方も多いのではないでしょうか。
実は筆者、ここで初めてその「ランボルギーニのトラクター」を拝見しました。これは、なんというか、ただものではないオーラを感じます。こういうものも含めてコレクションされているって、本当にすごいと思います。
その先にミウラが居ました。前後のフードを全開にして展示されてるのは珍しいです。
V型12気筒エンジンをミッドシップに横置きした、まるでレーシングカーのようなレイアウト。「実はこのエンジン、ホンダF1を参考に開発されたと言われています」と中村オーナーが教えてくれました。実際、ランボルギーニはその頃に来日して、ホンダを訪れていたようです。エンジン横置きのレイアウトもまた、ホンダF1からインスパイアされたものかもしれません。
ルームミラーを見ると、バルクヘッド直後の巨大な12気筒エンジン、そして林立する12のファンネルが視界に入る。その眺め、いったいどんな気分になるんだろうなんて考えながらミウラを見ていると、時間が経つのを忘れてしまいます。
ミウラの隣には、スーパーカーの帝王カウンタックがいらっしゃいました。本当はクンターシとかクンタッチとかそういう発音なんだそうですが、スーパーカーブーム世代にとってはやはりカウンタックです。これはもう6輪のあれがティレルじゃなくてタイレルなのと同じで、そうなんだからしかたがありません。
■オーナーだからわかる貴重なお話も
ずっと下っていくと、トヨタ2000GTとフェアレディZ432、ジャガーEタイプが並んでいました。
「この三台、なんとなく似てませんか?」と中村オーナー。言われてみると確かに、たたずまいが少し似ています。「この中では2000GTが一番良くできてると感じます。ものすごく高性能、ってことでもないのですけど、とにかくバランスが良いんですよ、2000GTは」。
あまりに雲の上の存在過ぎて、実際に乗るとどんな感じのクルマなのか。実際の2000GTってほとんど知る機会がないので、オーナーの言葉はとても貴重です。
若い頃からクルマが大好きで、増えたコレクションを展示するためにこのミュージアムを作られた中村オーナー。展示されているクルマは全て、走れる状態にメンテナンスされているのだそうです。まさに貴重な文化遺産です。また、最初は新たなクルマを購入するために所有するクルマを売却もしたそうですが、今となっては「あれ全部、売らなければ良かった」と後悔しているそうです。
世の中にこんなにクルマが好きな方がいて、貴重なクルマたちが素晴らしいコンディションできちんと保管されているということ。そして公開されているということ。同じクルマ好きとして、というとおこがましいですが、筆者は今回の取材で何か心が温かくなりました。
Torino MUSEUM(トリノミュージアム)
兵庫県姫路市福中町51番地 ヘルメスビル7F(旧メガパーク)
電話番号 079-224-2220
営業時間 10:00~17:00
サイトはこちら→https://www.torino-museum.com/
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)