生後2カ月で保護 スタッフと5年ぶりに再会した保護犬 長い年月をかけて成長、そして幸せをつかんだ

2017年、広島県の動物愛護センターに、生後約2カ月ほどの真っ白のオスのワンコが収容されました。名前はジエゴ。保護犬の中には、人間におびえるあまり威嚇したり、隠れてしまったりするワンコが少なくないのですが、ジエゴは当初より比較的穏やかで、真っ直ぐな瞳で人間を見つめていました。

■ジエゴが過ごした犬舎にいたチーフスタッフ

そんなジエゴを引き出すことにしたのが、保護団体ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ。ジエゴの性格の良さからスタッフは「それほど時間がかからずに人間に馴れるだろうし、里親募集をかければすぐに本当の家族とのマッチングができる」と考えていました。

引き出されてすぐのジエゴはピースワンコの検疫犬舎に入り、健康状態をチェックするため約1カ月ほどこの施設で暮らしました。このときジエゴと一緒に施設で過ごしていたのが、スタッフの立崎さん。東京の専門学校でドッグトレーナーについて学び、ピースワンコに入った後は災害補助犬のトレーナーに。その後、立崎さんは検疫犬舎のチーフスタッフとなり、ここでジエゴと同じ時間を過ごすことになりました。

■ジエゴのトレーニング実施が遅れた事情

ただし、ジエゴを引き出した2017年頃のピースワンコは、毎月100頭以上のワンコを広島県の動物愛護センターから引き出している状態。ピースワンコは活動当初から「殺処分ゼロ」を掲げ、今も活動を続けていますが、当時は殺処分予定のワンコの命を救うことが最優先。まだ幼く、性格も穏やかなジエゴは、本格的な人馴れトレーニングを待ってもらわざるを得ませんでした。

ようやくジエゴに本格的な人馴れトレーニングを実施できるようになったのは、引き出しから5年後の2022年のこと。しかし、ジエゴは散歩などもすぐにこなし、あっという間に上達していきました。

この間、前述の立崎さんは、保護犬の譲渡活動を生涯の仕事とするために「自分に足りないものは何か」と考え、2019年にピースワンコを離れました。東京の動物病院で看護補佐として病気について学んだり、譲渡に必要なコミュニケーション力を高めるために接客業の仕事に従事したり、様々な経験を積みました。すべては、ワンコのための選択でしたが、2022年秋、ピースワンコの世田谷譲渡センターの責任者として同団体に復活することになりました。

■ジエゴ、スタッフの5年ぶりの再会!

ジエゴ、立崎さん双方にとっては、この5年間がともに成長するためにあったようにも感じますが、ここで偶然の再会が起こります。それは立崎さんが店長を務めるピースワンコの世田谷譲渡センターに、ジエゴがやってきたのです。

ピースワンコでは、各施設で保護犬のサポートをするスタッフ、譲渡センターで新しい里親さんとのマッチングを行うスタッフが分けられています。そして、譲渡センターにくるワンコも「自然豊かな環境に向いたワンコか」「都心部の環境に向いたワンコか」など、様々な条件から「その地域に会うワンコ」が新しい里親さんとのマッチングを目指しやってくるわけですが、このときのジエゴと立崎さんは意図しない偶然の再会でした。

すっかり成長したジエゴと再び一緒に生活できることを、立崎さんはおおいに喜ぶとともに、「新しい里親さんを見つけて、絶対に幸せな生活へと結んであげるからね」と誓いました。

■信頼するスタッフのもと、再び心を開いてくれた

世田谷譲渡センターに引っ越してきたばかりのジエゴは、環境の変化によるストレスのせいで食欲不振になったり、音におびえて動けなくなったり、人を怖がるようになっていました。そのため、なかなかトレーニングが上手くいきませんでしたが、そこはやっぱり立崎さん。これまでの経験を最大限に活かし、ジエゴに少しでも早く環境に慣れてもらって本当の家族にめぐり合えるように、毎日トレーニングを行いながら、改めてジエゴとの仲を深めていきました。

その結果、ジエゴは少しずつ環境に慣れ、再び散歩が上手にできるようになり、本来の性格である「人が大好きな」な様子を見せてくれるようになりました。

■6年越しでジエゴは幸せをゲット!

立崎さんは世田谷譲渡センターで、里親希望者さんを待つだけでなく、積極的にジエゴを譲渡会に参加させました。しかし、なかなか良い縁が見つかりませんでした。このことから、ピースワンコでは、ジエゴのためを思い世田谷譲渡センターを離れさせ、あきる野の譲渡センターへと再び引越ししてもらうことにしました。

ジエゴと立崎さんは再び別れることになったわけですが、2023年春、ついに「ジエゴを家族として迎え入れたい」という里親希望者さんが現れました。

最初に、ジエゴと立崎さんが検疫犬舎で過ごした2017年から6年。ジエゴはついに幸せをつかむことができました。立崎さんも朗報に小躍りし、ジエゴの第2の犬生の旅立ちを心から祝福しました。

現在、ジエゴは優しい飼い主さん、そして先住犬と一緒に幸せに暮らしているそうです。立崎さんはこれからも1頭でも多くのワンコを幸せへと繋いでいけるよう改めて心に誓いました。

ピースワンコ・ジャパン

https://peace-wanko.jp/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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