下校中の娘さんに着いてきた生後1カ月半の子猫 ひとりぼっちで鳴いていたキジトラが「家族の一員」になるまで
甘えん坊なツンデレボーイのきなこくんは、元野良猫。飼い主であるkiji_kinakoさんの娘さんとの出会いによって、ニャン生が大きく変わりました。
■鳴き声を耳にしてから3日目…ようやく眼の前に
2021年の6月下旬、きなこくんは国道沿いにある、とある家の敷地内で鳴き叫び、助けを求めていました。娘さんと娘さんの友達は数日前から様子が気になっていましたが、きなこくんは車の下に隠れ、なかなか姿を見せてくれず。
ようやく目の前に現れてくれたのは、娘さんたちが鳴き声を耳にしてから3日目のこと。娘さんは友達と様子を見に行った際、きなこくんと出会うことができたのです。
きなこくんの目には、子どもたちが救世主に見えたよう。下校中の娘さんに着いてきて、飼い主さん宅の近くまでやってきました。
「動物が好きな娘は飼いたいと言い、生き物が苦手な同居中の祖父に電話で交渉。OKをもらい、抱っこして連れ帰ってきました」
突然の新入り家族に驚いたものの、飼い主さん自身も動物が大好きで、野良猫との出会いは運命だと思ったため、きなこくんを歓迎。仕事帰りに慌てて、ご飯や猫トイレなどを購入し、お迎えの準備を整えました。
■寄生虫駆除やストレス性の脱毛を乗り越えて
当時、きなこくんは生後1カ月半ほど。体はノミだらけで、鳴き続けていたからか、声は枯れていました。
水も満足に飲めていないほどの空腹状態だったため、フードを差し出すとガツガツと食べ、水分もしっかりと取ってくれたそう。
保護翌日、飼い主さんは動物病院へ行き、ノミ・ダニ駆除をしてもらうことに。幸いにも猫風邪などは患っておらず、健康状態は良好でしたが、後に回虫という寄生虫に感染していることが判明し、駆虫薬を飲むことになりました。
「翌日は冷たい大雨でしたので、保護できて本当によかった。きなこという名前は娘と娘の友人が、出会った時に毛色からつけたようです」
お外での生活で心細かったのか、きなこくんは人懐っこく、保護当日から家族にくっつき、スヤスヤ。
リラックスするきなこくんを見て、飼い主さんはコード類にカバーをつけたり、誤食しそうなものを片づけたりと、安全な環境を整えました。
それでも、きなこくんは環境が変化したストレスは感じていたよう。お迎えから半年後、右足の内側が脱毛してしまいました。
「薬を服用し、徐々に毎日のルーティンができてくると治っていきましたが、よく食べて元気そうに見える子猫もストレスの影響を受けているんだと感じた出来事でした」
■家族みんなを丸くしてくれた愛猫に感謝
そんな日々を乗り越え、すっかり家族の一員となったきなこくんは自分の気持ちをしっかりと表現する、アクティブな猫ちゃんに成長。
何か要望があると、家族の目を見てニャア。自分の言葉が通じることを、ちゃんと理解しています。
「冷蔵庫の上に乗りたいけれど、自分で乗る勇気がないので『乗せてくれ』と訴えてきます。その時だけは、苦手な抱っこをすんなり受け入れてくれるんです(笑)」
家族の仲間入りをするきっかけをくれた娘さんとは、今でも大の仲良し。ノートを開けば上に寝そべり、お風呂に入れば出待ち。
「いつも隣にいて、部屋に入る時は着いて行きます。楽しい時も泣いている時も一緒です」
きなこくんがやってきたことで、家族仲はより温かいものに。飼い主さんは思春期に入った娘さんとの会話が格段に増えたことを嬉しく思っています。
「癒されるのか、みんなが穏やか。きなこを中心に、家族が丸くなった気がします。また、生き物が得意ではない祖父が猫のかわいさに薄々気づいてきたようで、時々挨拶しています」
もう、きなこがいない生活は考えられない。そう話す飼い主さん宅で、今日もきなこくんはのびのびと過ごしながら、家族との交流を楽しんでいます。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)