「VIVANT」の別班、自衛隊に実在 10年前に新聞報道「商社社員になりすまし情報収集」 ドラマの参考文献に 別班の正式名称とは
俳優の堺雅人さんが主演を務めるTBS日曜劇場「VIVANT(ヴィヴァン)」(TBS系、毎週日曜21時)。8月13日に第5話が放送され、堺雅人さんが演じる商社マン乃木憂助が、民間人に紛れて諜報活動を行う特殊部隊“別班”だったことが明らかになったが、実はモデルとなる組織が自衛隊に実在することが過去の新聞報道で明らかになっている。
10年前の2013年11月28日、共同通信が記事を配信し、地方紙各紙が1面などで報じた。記事によると、正式名称は陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」。陸上幕僚長経験者らが存在を認めたとしている。
数十人が所属し、「海外に派遣する際は自衛官の籍を抹消し、他省庁の職員に身分を変えることもある」とする。また「現地では日本商社の支店などを装い、社員になりすました別班員が協力者を使って軍事、政治、治安情報を収集する」と記載しており、堺雅人さん演じる商社マン乃木憂助が別班だったというドラマの設定と符合する。
一方、菅義偉官房長官(当時)は記者会見で「別班」の存在について問われ、「陸上自衛隊にこれまでも存在していないし、現在も存在していないと防衛省から聞いている」と報道を否定した。
■「別班の正体」ドラマの参考文献
記事を執筆したのは、石井暁記者。記事配信後の2018年には「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊『別班』の正体(講談社現代新書)」を出版。ドラマの参考文献となっている。
第2話で公安刑事の野崎守(阿部寛さん)が別班について説明した際、医者の柚木薫(二階堂ふみさん)が「それはまずいですよ。日本は民主主義国家ですよ。政府非公認の諜報(ちょうほう)機関ってことは、別班は秘密裏に勝手なことができるってことになりません?」と首をひねる。石井さんの記事でも、首相や防衛相に知らせずに情報活動をしている点について「自衛隊最高指揮官の首相や防衛相の指揮、監督を受けず、国会のチェックもなく武力組織である自衛隊が海外で活動するのは、文民統制(シビリアンコントロール)を逸脱する」と指摘する。
作中では堺さん演じる乃木憂助が「美しきわが国を汚すものは、何人たりとも許さない。それが信条なんでね」と、組織を肯定するようなせりふを述べる。だが、記事で書かれているように「政治のコントロールを受けず、組織の指揮命令系統から外れた部隊の独走は、国の外交や安全保障を損なう恐れがあり、極めて危うい」という視点も持ちながら鑑賞すると、より深く、ドラマを堪能できそうだ。
(まいどなニュース/神戸新聞・堀内 達成)