日大薬物事件、夜回り先生が問う「大学側の責任」罪を償った学生を切り捨てず、再度教育するゆとりを

 日本大学アメリカンフットボール部の寮で覚醒剤と大麻を所持したとして部員が逮捕された事件で、警視庁薬物銃器対策課がさらに関与の疑いがある別の部員4人を任意聴取し、22日に都内の寮を再捜索しており裏付けを進めている。この事件を受け、「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏が自身の見解をつづった。

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 日本大学の体育系部活の寮内で大麻などの違法薬物を所持していたことで部員が逮捕されました。日本大学は、その部員に対して厳正な処分を行うとしています。

 そんな中で、この逮捕された部員からの供述で、他の部員も大麻を使用していた疑いがあるということで、再度、部員の寮が家宅捜索されました。

 そもそも大麻は、ほとんどの場合、個人使用する薬物ではありません。パーティードラッグとも呼ばれ、複数の中で使用する薬物です。私は、この報道が出てきた時から、まずは相当数の部員の使用を疑っていました。あるグループの中で、一人が薬物を乱用すれば、その回りに広がっていく。かつての関東学院大学の事件や東京農業大学の例を見ても明らかです。薬物乱用、特に大麻乱用は、ある意味で感染症なのです。これから、次から次と疑いある部員の名前が挙がり、警察から事情聴取されていくでしょう。

 この問題と、大学の対応を見ていくにつれ、日本大学、多分、他の大学の薬物問題に対する知識のなさにあきれます。薬物は、その乱用者の命にかかわる、また、それからの人生の破壊に繋がる危険なものです。どうして、その乱用を予防することができなかったのか。日々、学生たちにどのような指導が為(な)されてきたのか。疑問しか浮かびません。

  ここから私のお願いを書きます。

 薬物、今回の場合、大麻の使用は,そして、所持は確かに犯罪です。使用、所持した学生は、法に背いたわけですから、その罪を償わなくてはなりません。これから裁かれることになるでしょう。

 ただ、この学生たちを二度罰しないでほしいのです。この問題が起きたことは、その薬物を使用、所持した学生の個人的な犯罪なのでしょうか。それを防ぐためにきちんとした教育をしなかった大学には責任はないのでしょうか。この学生たちを退学や除籍の処分で抹殺することは簡単です。でも、その切られた学生たちに明日はあるのでしょうか。このような状態で大学を辞めさせてしまうことは、正しいのでしょうか。一度でも預かった学生に対して、大学はきちんと責任を持つべきです。

 法的な罪を償った学生に対して、再度、新たに教育を与えるゆとりを持ってほしい。罪を償った学生を再度、復学させ、その学生たちの新たな明日を作る機会を与えてほしい。私は、それを日本大学に求めます。

 それとともに、このような問題を予防できなかった理事長や学長、関係職員にもきちんと責任を取ってほしいと望みます。子どもが罪を犯したら、まずは親がきちんと責任を取ることから始めるべきです。私は、そう生きてきました。 

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